渡辺真史が見た、BROOKSのラグジュアリーな世界(後編)|BROOKS
FASHION / FEATURES
2020年12月4日

渡辺真史が見た、BROOKSのラグジュアリーな世界(後編)|BROOKS

BROOKS|ブルックス

渡辺真史が見た、BROOKSのラグジュアリーな世界(後編)|BROOKS

BROOKS(ブルックス)の中枢を担う「ゴースト」は、世界で最も多くのランナーに愛されているシューズの一つだ。創業100年の歴史が生み出してきた、数々のスタンダード。誠実なものつくりの結晶は、人々がランニングシューズに求める理想に対して、明確な回答になっている。そして今、BROOKSの次なるステージはライフスタイルやファッションマーケットへの参入にある。そのために私たちは、もっとブランドの哲学を知る必要があるようだ。東京カルチャーの重鎮である渡辺真史は、実直なBROOKSの「ゴースト」をどうみたか。

Interview & Text by OZAWA Masayuki|Photographs by MAEDA Akira

足のことを第一に考えた”最高の標準”

ゴーストの値段は1万3000円前後。このランニングシューズにおける平均的な価格帯に求められるのは標準的であることだ。
クッション性にプライオリティを掲げ、誰にとっても好まれる履き心地とデザインを両立しなければならない。とくにミッドソールのクッショニングは最重要課題だが、これには他のどのメーカーよりもBROOKSに一日の長がある。

かつてヴィンテージ市場を賑わせた「ヴィラノバ」は、「膝に負担のかからないシューズ」の開発を中距離ランナーの花形であったマーティ・リクオリがBROOKSに提言したことで生まれたシューズだった。アスリートが真に求める快適性と安全性を追求し、多くのテクノロジーを開発してきた矜恃が、簡単そうでもっとも難しい”最高の標準”を作り上げている。
渡辺「BROOKSがとても売れている、と聞いて僕は正直、少し驚きました。もっとランナー以外にも”そりゃそうだよね”と納得できる情報を届けて欲しい。僕がシューズを評価する基準はファッションやカルチャー。でもBROOKSの持つコンセプトや企業の姿勢は素晴らしいと思います。

だからまずは、どんどん「ゴースト」を履いているランナーが増えて欲しい。今、自分の中に大きくなっているスニーカー観の一つが、同じモデルをいつどこでも履くこと。毎日違う靴を履いていた時期もありましたが、小学生のときみたいに、一足をボロボロに汚れるまで履き潰したい気分になっています。」

成功者が追求する、ランニングの先にあるもの

同じことを日々繰り返すと、外的な刺激に対する感覚が研ぎ澄まされ、思考がミニマリストになっていく。すると身につける服やシューズが持つ特徴や個性が、その人のアイデンティティとなり、代弁者となる。

BROOKSを選ぶ人は、見た目の華やかさよりも実用性や本質を好む人間性を映し出す。今の時代は、自分のユニフォームを持っている成功者に憧れる傾向がある。スティーブ・ジョブズが公然の場にグレーのニューバランスで現れ続けたように、スケーターでもある渡辺がどこにでも手に入るバンズのオーセンティックをボロボロになるまで履き続けているように。
ランニングにかかる負荷は人それぞれだが、基本的に舗装されたコンクリートを足で叩き続けるシリアスなスポーツだ。そういった過酷な世界で勝ち抜くメンタリティをファッションにまで持ち込んでいるメーカー多い中、BROOKSは、20年前からすべての人に走る喜びを、という「ランハッピー」をスローガンに掲げ続けている。
ランニングを民主的に捉え、競争心を煽ることなく、楽しく走るための投資を欠かさない。

多くのスポーツメーカーが直営店に注力して世界観を固めるこのご時世に、BROOKSは直営店を一切もたないスタンスを貫き通している。
商品を卸している各リージョンの専門店から広がるコミュニティを受け入れ、ランナーとの繋がりを大切にし、ソーシャルメディアや口コミといった外的なフィードバックを自社の技術力と結びつけているのだ。

CEOのジム・ウェーバーは前出のインタビューで、自分たちを「優れたエンジニアを持つ一方で、走る楽しみを伝えているフォルクスワーゲンのようなブランド」と分析していたのが印象深い。
最近では、モノとコトとヒトを包括的に捉えるブランドの姿勢に文化的価値を感じて、ランニングシーン以外にもBROOKSを愛用するニューヨークの金融マンやシリコンバレーのIT長者が増えているという。

ちなみにBROOKSのオーナー会社の会長兼CEOは、投資家のウォーレン・バフェットであることも、多くの優秀なビジネスマンが信頼を寄せる理由の一つだ。

エモーショナルな靴の条件を再定義

渡辺「ファッション的な考えでナイキしか、アディダスしか、バンズしか履かないという人は、スニーカーによってその人がキャラクター化してしまう。
でもBROOKSの履き心地をこよなく愛してそれしか履かないって人が出てくると、その人の思想やライフスタイルに憧れてシューズをチョイスするようになるのではないか。それはファッションの先にある、これからの時代の考えかもしれません。

1年、2年、10年でもBROOKSを履き続けたいと思わせるもの作りって、すごくカッコいいと思います。トレンドとは関係しない軸がちゃんとあって、しかもトップアスリートのためだけに属しているわけじゃなく、長い目で堪能できるブランドは、新しいカルチャーを育てやすいのでは。」
日本限定で発売されている「ゴースト13」のオールホワイト。
筆者もインタビュー直前の4日間、「ゴースト」のオールホワイトを履き続けてみた。ただでさえヴィジュアルよりも目にみえない素材に力を入れているシューズ。SNS映えを狙える見た目の派手さはないが、だからこそ視覚、体感ともにランニング以外でも履きたいと思えるファーストインプレッションがあった。

20km走るためのランニングウェアと、ある程度の社会性をもった普段着と、ワンマイルをカバーする休日着に合わせてみたが、どのスタイルにもタッチポイントがあり、違和感を覚えることはなかったように思う。
そして履き続けているうちに、自分の一部になってくるようなシューズだ。近年のマラソンや駅伝の記録ラッシュを支える厚底ブームは、ランニング偏差値をアップしてくれる魔法のようなテクノロジーをもった靴こそが良いシューズであると強調し過ぎてしまったように感じる。

しかし劇的な変化だけがエモーショナルの基準ではない。安心感や履き心地を大切にするBROOKSの開発思想もまた不可欠で、それがランニングシーンを超え、ライフスタイルに溶け込むポテンシャルを秘めているのではないか。
スポーツのパフォーマンスを高め、生活にも寄り添えるユニバーサルデザインは、渡辺氏が言うようにこの先、大きな価値を持つだろう。それが進化したラグジュアリーのかたちであることを、BROOKSのものづくりやコンセプトが作り上げている。
渡辺真史

1971年生まれ、東京都出身。モデルからキャリアを開始し、ロンドンへの留学やストリートブランドで経験を積み、DLXを設立。2004年に自身のブランド、ベドウィン & ザ ハートブレイカーズを立ち上げ、ストリートを席巻。2020年に開業した新商業施設RAYARD MIYASHITA PARK内にセレクトショップ「DAYZ」をオープンさせたばかり。
ハイペリオンテンポ
“より速く、より長く”を全てのランナーに。トップランナーと共に開発した1足。」と題し、軽量性、クッション性、反発性の3つをバランス良く兼ね備える新素材「DNA FLASH」をミッドソールに搭載。様々なランナーのストライド、スピードに反応し、テンポ走やインターバルトレーニングなど様々なスピードトレーニングに対応しつつ、レースにも最適なモデルである。カラーはブラックとホワイトの2色。1万8000円(税別)。
BROOKS(ブルックス)
1914年創業の100年を超える歴史をもつ全米シェアNo.1のランニングシューズブランド。
ランニングシューズ界では今でこそ当たり前となったEVA搭載シューズを1975年に開発し、シューズ界の“スタンダード”を確立するなど、数々の革新的技術を搭載したランニングシューズで、ビギナーからトップアスリートまで、数多くのランナーをサポートするとともに、今もなお革新性に挑み続ける。

“RUN HAPPY”をブランドメッセージに、ランニングがライフスタイルとして根付く米国で最も支持されているブランドであり、製造工程におけるブルーサイン認証の取得や昨今の環境問題にも配慮したミッドソールの開発など、サスティナブルな取り組みも高く評価されている。 
問い合わせ先

BROOKS公式サイト
https://www.brooksrunning.co.jp/

問い合わせ先

アキレスお客様相談室 
Tel.03-5338-8440

                      
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