「デサント」が生み出した、猛暑でも快適な新素材
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2019年7月5日

「デサント」が生み出した、猛暑でも快適な新素材

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DESCENTE|デサント

Coolist D-Tecが日本の夏を変える

いよいよ来年に控えた東京2020を前に、デサントが最新のクーリング素材Coolist D-Tec(クーリストDテック、以下「クーリスト」))を発表した。猛暑の中で行われる様々なスポーツに求められる、かつてない吸汗・速乾・放熱機能を実現した機能性素材である。トップアスリートはもちろん、一般的なスポーツファンにとっても注目すべきこの革新的素材について、R&Dセンター部長、坪内氏に話を伺った。

Photographs by MIYASAKA Noriyo | Text by KAWASE takuro

新開発のクーリストが、最初に商品に採用されたのはゴルフ部門。『ルコックスポルティフ』のポロシャツ、『デサント』のゴルフ競技用ウェアでこの新素材を体験できる。19年春夏シーズンでは7ブランド来年はさらに多くのブランド、アイテムにもクーリストDテックが使用されていくそうだ。
―衣服の着用によって暑さを和らげる手法として、どのようなものがあるのでしょうか?
坪内「暑さ対策として有効なのは、大きく分けて二つのアプローチが考えられます。日傘と同じように、熱線を遮るという方法。弊社が2011年に開発・販売を開始した“サンスクリーン”という夏向けの素材がありますが、こちらはその“遮熱”する機能を持たせたものです。次に有効なのは、身体と衣服の間にある空間の温度を下げること。衣服内にこもった熱を“放熱”することで暑さを和らげる方法です」
―暑さ対策には、遮熱と放熱という2つが有効だということですね?
坪内「そうです。例えば、炎天下で長時間過ごす場合は遮熱の方が有効ですし、運動でたくさん汗をかく場合は放熱の方が有効となります。今回ご説明するクーリストは、放熱に特化した素材です。こちらは気化熱を利用することで、涼しさをもたらす素材です。打ち水をイメージしていただければお分かりになるかと思いますが、水が蒸発するときに道路表面の温度を奪って涼しくなることと同じ原理です」
デサント R&Dセンター機能開発部部長 坪内敬治氏。1964年生まれ、大阪府出身。1992年デサントに入社。以後、様々な部門を渡り歩き、現職。
―汗が蒸発するときに、衣服内の温度が下がるのですね?
坪内「そもそも人間が汗をかくのは、かいた汗が蒸発する際に生じる気化熱によって皮膚表面の温度を下げるためです。これを有効発汗と呼びます。一方で、蒸発せずにだらだらと流れ落ちる汗にはその効果がありません。これは無効発汗と呼ばれるものです。クーリストは流れ落ちる大量の汗を吸い上げ、素早く拡散させて、蒸発させることができるのが特徴です」
―体感温度でどれくらいの効果が得られるのでしょうか?
坪内「水分の蒸発によって奪われる熱量は決まっているので、計算することは可能ですが、使用する環境によって大きく左右されます。ですから、スペック的に何度下がるとは明言できませんが、衣服内の温度が実際に下がることを測定試験にて実証できています」
左:一般的な綿素材のポロシャツ、右:クーリストのポロシャツ
―クーリストは、どういった競技に効果的なのでしょうか?
坪内「一般にはスポーツにおいて使用されるウェアについては、機能性が求められる競技用と日常生活も含めたユニフォーム用の2つのカテゴリーがあります。競技によっては、100m走のように短時間で終わってしまうものもありますので、冷却機能が不要な場合もあります。クーリストが有効なのは、長時間にわたる低・中強度の種目です。そこでまず、最初に採用したのがゴルフウェアです」
―どんな繊維組織で、どんな糸を使用しているのでしょうか?
坪内「日本の素材メーカーに開発していただいた、特殊な構造のポリエステル糸からクーリストが生まれました。この糸は様々な繊維組織で使える特性があり、弊社の技術と組み合わせることで、素早く汗を吸って、拡散・蒸発させることが可能になりました。速乾素材の試験方法では多くが、50分から1時間で乾くのに対して、クーリストは倍のスピードで乾くのです。ですから、汗をかいても肌にベタつかない、サラサラした着用感が持続する、といった快適性についても大きな効果をもたらしてくれるのです」
―アスリートにとって、汗によるストレスは集中の妨げになってしまうので、クーリストは非常に効果的ですね。
坪内「競技前のコンセントレーション、競技後のリラックス、こうしたストレスフリーが求められる局面において、クーリストが優れた効果をもたらします。多くのアスリートに、“このウェアで良かった”と思ってもらえることが我々の使命ですし、すべてのスポーツファンに体感していただきたいですね。クーリストウエアを着用している社内の人間の間でも、評判がいいので期待しています」
―デサントの研究開発は、どのように行われるのでしょう?
坪内「我々には大阪・茨木にDISC(=DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)と呼ばれる、2万平方メートルの研究開発拠点があります。そこで様々なアスリートに試験や測定に協力してもらい、そこで得られたデータが研究に活かされています。陸上競技やサッカー、ゴルフなど、様々な競技の測定がDISCで行えるように、広大な敷地が必要だったのです。弊社の技術者以外にも、大学の研究機関をはじめとする外部のエキスパートを招き入れ、自分たちの技術を客観視しながら、研究開発に当っています」
―第一のDISCは大阪の茨木で、第二のDISCは韓国の釜山に設立しましたが、こうした立地にはどのような理由があるのでしょう?
坪内「スポーツアパレルの研究開発拠点であるDISC大阪の近辺には、日本の主要な素材メーカーの開発研究所などが多くあり、協業で研究開発を行うことができることが大きな理由です。同様にスポーツシューズの開発を担うDISC釜山の周辺には、シューズに関する会社と工場が多く、より効率的に研究開発から製品化までの一連の流れを完結することができるからです」
―建築としてもDISCは斬新なデザインで、その中にはまさにSF映画に出てくるような最先端の実験室がたくさんあるのですね
坪内「弊社の大阪、東京のオフィスは白が基調となっていますが、DISCは黒にしています。ここに来ると気持ちが切り替わり、モノ創りだけに集中できるように、と考えたからです。DISC内はフリーアドレス制で、デスクは毎日変わり、部署の垣根をなくし、DISCメンバー全員が情報共有し、柔軟な発想を持てるような仕組みづくりをしています。開発にあたっては、専門知識を持つ研究者や技術者はもちろん、デザイナー、マーケティング、さらには経理といった様々な職歴を持った社員が、プロジェクト単位で集められます。課題に対するアプローチや考え方が、全く異なるメンバーがアイデアを出し合うことで、“その手があったか!”というユニークな発見があるのです」
―トップアスリートが認める機能的ウェアを、一般的なスポーツファンやファッション好きにまで理解してもらうためにも、今後デザインは大きな要素になってきますよね?
坪内「見た目はもちろんですが、我々にとってのデザインとは、機能と技術の組み合わせを指す言葉でもあるのです。単に異なる技術を組み合わせて機能性を発揮させようとするだけでは、上手くいかないことがほとんどで、お客様に価値を感じていただけなくなってしまいがちです。お客様に最適な機能性を考え、それを弊社の技術力を活かして最終的に製品にしたとき、結果的に機能が見た目にも表れてきて製品デザインになるというのが、本来の姿だと考えているからです。『デサント』ブランドのオルテラインカテゴリーを例にすると、防水性を高めるために、糸による縫製ではなく圧着縫製をするーという技術がデザインに直結して“水沢ダウン”という商品が生まれました」
―サスティナビリティ、エシカルといった、これからのアパレルに求められている取り組みについて、デサントが取り組んでいることとは?
坪内「水を極力使わない染色技術や、ボイラーを使わない工程を増やすなど、環境負荷を減らす取り組みは、ブランドごとに随所で行なっています。全社的に取り組んでいるのは環境負荷の軽いはっ水剤の採用です。C8と呼ばれるはっ水剤があるのですが、このはっ水剤は高いはっ水機能の耐久性がある一方で、自然に分解することができず環境負担が大きいです。そのため全社的に環境負荷の低いC6というはっ水剤に転換しています。ただし、世界的にはカーボンフリーのはっ水剤使用に移行してきており、デサントとしてのサスティナビリティの取り組みは、まだまだ発展途上であると認識しています」
―先ほど話に上がったデサント オルテラインや水沢ダウンなど、近年はファッション好きにも、ブランドとして広く認知されるようになりました。今後のデサントの研究開発はどのようになるのでしょう?
坪内「“水沢ダウン”は生産現場で培ってきた技術の積み重ねの結果として、生み出されたシームレスダウンです。これは熱圧着の技術だけで、実現できるものではないのです。たまたま見つけた技術を拾い上げて製品化するのではなく、オリジナリティのある研究開発から、ストーリーのある物作りをしていくこと。それが結果として、他社に真似できないユニークな製品へとつながると考えています」
繊維製品品質管理士の資格を有する、スポーツテキスタイルのプロフェッショナルである坪内氏。大阪本社とDISC大阪、東京を忙しく移動しながら、最新の研究開発に取り組んでいる。
                      
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