TOMORROWLAND|バイヤー特集|男の服は、愛着がもてる本物しか残らない
TOMORROWLAND|トゥモローランド
トゥモローランド メンズ事業部長 中城大祐氏
愛着がもてる本物しか残らない
いまのキーワードは“地産地消”と“ゴーイング マイ ウェイ”というトゥモローランドの中城大祐氏。「ひとつの大きなトレンドがない現在、洋服とのつきあい方で大切なのがそのふたつのポイントです。その地方でしかつくれない素材や、ここだからこそできる商品は、そこの歴史や文化を反映している本物ということ。そして、デザイナーが自分のクリエイションを発揮する、意思を感じる服に出会うと感動します」と語る。
文=OPENERS写真=原恵美子
“ありそうでない”ものとの出会いと、クリエイションへの昂ぶり
「これだけモノが溢れる時代、イージーなものづくりのものも多いですが、“自分にとってのトレンド”は愛着につうじます。私もバイイングのなかで、「このひとがつくっているものを買いたい」「このひとと仕事をしたい」という思いを大事にしていますが、そうすると、良質なものしか残っていきません。また、マーケティングを意識するのも大切ですが、デザイナーの独創的、独善的なクリエイションに対してリスペクトしながら買うことも多いですね、それはまさに感動する服で、そういう出会いは感度を上げてくれます」と中城氏。
Purchase01
「J.M. Weston」別注スエードサイドゴアブーツ
ありそうでないエレガントな雰囲気
「今春にジェイエムウエストンのローファーを扱いましたが、秋冬は永遠の定番のひとつのサイドゴアブーツ、通称チェルシーブーツを別注しました」
「スムース(表革)の黒のサイドゴアは、世界中で履かれていますが、既視感というか、スタイリングの幅が広がらない感じがして、個人的に苦手です。でもこのデザインは、手を入れる必要がないほど完成されていてすばらしい。
今回は、きれいな茶のスエードに、サイドのゴムの色を変えて、エレガントに見えるコンビネーションを別注しました。ウエストンの傑作ブーツに、ありそうでないエレガントな雰囲気を感じてください」
J.M. Weston 別注スエードサイドゴアブーツ10万7100円(トゥモローランド)
Purchase02
「Belvest」ダブルフェイスコート
軽くて、しなやかで、時代感にマッチしている仕立て
「このダブルフェイスのウールコートは、ベルヴェストが昔つくっていたもので、たまたまベルヴェストのスタッフが着ていたので、“こういうのはもうつくらないの?”とたずねたら、“とにかく手間がかかって、いまはつくれるひとも少なくなっている”と最初は相手にしてくれませんでした」
「さらに“今年絶対につくるべきだ”と私たちが再度リクエストして、エクスクルーシブでリバイバルを果たしたのですが、あまりに出来がよくてベルヴェストが今年のピッティウオモに出したら世界中のバイヤーから問い合わせが殺到し、世界展開を認めましたが、日本ではトゥモローランドのみの販売です。いまは、こういうダブルフェイスが縫えるファクトリーがないんですね。手仕事で、軽くて、しなやかで、時代感にとてもマッチしている。ネイビー、グレー、ベージュの3色です」
Belvest ダブルフェイスコート19万9500円(トゥモローランド)
Purchase03
「PIOMBO」コーデュロイダブルブレストジャケット
やっと出番が来た、すばらしいクリエイション
「ピオンボは、クラシックでもない、モードでもない服の代表のようなブランドで、ずっと注目していて、展示会ではすごいんですが、なかなか商品としてうまくアウトプットできていませんでした。今回、体制が変わって、とても買いやすくなりました」
「デザイナーのマッシモ・ピオンボさんのすごいところは、素材づくりや色づかい、色合わせのクリエイションが天才的で、そのうえにスタイリングもできて、お店(空間)まで想定できる。こだわりも強くて、クラシックな服をつくるひととしてはとても貴重な存在です。このコーデュロイジャケットも、甘いコーデュロイに製品染めで、独特のソフト感を出していて、これも“あるようでない”一着。服づくりのマインドがあってこそ出てくるカラシ色で、クリエイションのすばらしさを感じます。ウォッシュアウトしたデニムにさらっと合わせてください」
PIOMBO ダブルブレストジャケット7万6650円(トゥモローランド)
Purchase04
「ムッシュ ラスネール」ニット
クラシックと遊び感、女性らしさが時代にちょうどいい
「このニットは、ガランス・ブロッカさんという女性が手がける「ムッシュ ラスネール」のもの。ムッシュ・ラスネールは詩人の名前らしく、そのひとの考え方やファッションが好きでつけたそうです」
「フランスのブランドで、トゥモローランドでもファーストシーズンとなりますが、メゾンブランドでニットをずっとつくっていた女性で、服に対する情熱を感じて買い付けました。これはアルパカ100パーセントのショールカーディガン。ペルーのアルパカで、ペルーで編んでいます。まさに地産ですね。手編みのあたたかさが伝わってきて、デザインでは前立てが外せて、首もとにマフラーのように巻ける仕掛けがかわいらしい。クラシックと遊び感があって、女性らしさが時代にちょうどいいと思います」
ムッシュ ラスネール ニット4万9350円(トゥモローランド)
Purchase05
「CHRISTOPHE LEMAIRE」ショールコート
私がいま一番愛してやまないブランド
「ショールコート、いわゆるカフタンです。クリストフ ルメール氏は先日エルメスの仕事で来日していて「お店が見たい」と、渋谷店に来ました。前からルメールは個人的に買っていたのですが、去年の冬に訪れたパリのマレにあるお店がすばらしかった。小さい店ですが、彼が伝えたいことが感じられて、とても居心地のいい店で、商品を見て、いまこれを求めていたと思った服です。ベテランの服ですが、久しぶりに感動しました」
「このショートコートは、日本の着物のように平面的な服ですが、素材のドレープ感が計算されて、平面的だからこそでるシルエットがとてもきれい。まさに、まとうような服で、個人的にはいま一番の気分ですね。ルメール氏は、今回、モンゴルから中国を列車で旅してクリエイションをつくっていますが、カフタンというトラディショナルな服をモードに仕立てて、素材やカッティング、シルエットまで天才的。これをまとうと、自分の内面に向けたご褒美感覚やラグジュアリー感を感じて、ファンになる服です」
CHRISTOPHE LEMAIREショールコート6万8250円(トゥモローランド)
「今日のコーディネイトのトップスは、イタリアのリネンの産地であるベルガモの『ダニエラ・グレジス』という服です。街の空気感や、丁寧にものをつくっている姿勢にオリジナリティがあって、本当に少量生産ですが、ダニエラさんのつくっているマインドや服づくりに共感して愛用しています。現在、トゥモローランドでは残念ながら扱っていません。また、パンツは、ロンドンの『エッグ』というすてきなお店のオリジナルで、定番のシルエットのパンツです。何にでも合わせやすいので、これも愛着を感じてはいています」