三原康裕的日本モノづくり「第2回 トモイを訪ねる」(2)
MIHARAYASUHIRO×TOMOI
第2回 トモイを訪ねる(2)
ファッションデザイナー三原康裕さんが、日本の誇る工場や職人を訪ね、日本でしか作れない新しいモノを生み出す画期的な連載企画「MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO(MMM)」。
奈良県のボタン工場、トモイを訪ねた三原さんは、その技術から新しい発想を得ようとする。
写真=溝部 薫(ホークアイ ヴィジュアルワークス)写真=溝部 薫(ホークアイ ヴィジュアルワークス)協力=萩野 宏
伝統と革新に裏付けられた高度な技術力
貝ボタンの製造には、原材料の貝からボタンの元となる生地をくり抜く「ぬき」や、ボタンの型に削る「けずり」、「穴あけ」「磨き」など、約10の工程がある。製造が盛んな時代はそれぞれに工場があり分業で行っていたが、現在ではそうした産業構造はない。
トモイでは以前より設備を整え、それらの工程をほぼ自社一貫で行える体制を整えている。そして創業当初から使われている年代物の機材から、最先端のCADやイタリア製レーザー彫刻マシンまでが揃っているのだ。なかでもボタンを削る刃物の金型制作設備があるため、デザインの自由度も高く、追加の注文がきてもまったく同じボタンを生産できる。このような設備を備えている工場は、国内ではほとんどないという。こうした伝統と革新に裏付けられた高度な技術力こそが、同社最大の強みといえるだろう。
三原 検品はひとつひとつ、人の目で行っているんですね。
伴井 そうですね。やはり天然素材なので、どうしても色などがブレてしまうんです。こうした工程が、先ほどお話したような均一性を追求するという点での難しさでもありますね。
その製造工程は、ある程度オートメーション化されているとはいえ、思っていた以上に熟練した人の“手”が不可欠だ。最新のレーザー彫刻マシンでさえ、現在の技術ではボタンの表裏を機械で判別することはできず、スタッフが一点一点セットするという。
また何千個というボタンをチェックし、わずかな色の違いを選り分けるような作業は、相当の熟達が必要だろう。小さなボタンひとつにも、繊細な手仕事と労力を惜しみなく注ぐそのモノづくりは、まさにメイド・イン・ジャパンの真骨頂なのだ。そんなトモイの製造工程を目の当たりにした三原さんは、ここでしかつくれないボタンのアイデアが沸いてきたようだ。
三原 以前から色が重なったボタンをつくりたいと思っていたのですが、たとえば白蝶貝と黒蝶貝を張り合わせることはできませんか?
伴井 それは技術的に難しいですね。寸分違わずピッタリと二枚のボタンを重ねて接着することは、やはり不可能でしょう。
三原 それなら、接着しなくても、二枚を重ねてボタン付けができるような構造はどうでしょうか。
伴井 互いに凹凸をつければ、構造的には可能かもしれない。それは面白いアイデアですね。