三原康裕的日本モノづくり「第2回 トモイを訪ねる」(3)
MIHARAYASUHIRO×TOMOI
第2回 トモイを訪ねる(3)
ファッションデザイナー三原康裕さんが、日本の誇る工場や職人を訪ね、日本でしかつくれない新しいモノを生み出す画期的な連載企画「MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO(MMM)」。
奈良県のボタン工場、トモイを訪ねた三原さん。話はいよいよオリジナル制作の核心へ。
写真=溝部 薫(ホークアイ ヴィジュアルワークス)写真=溝部 薫(ホークアイ ヴィジュアルワークス)協力=萩野 宏
創造力と技術力を駆使したコラボレーション
ここで三原さんは、自らデザインのスケッチを描き出した。デザイナーとマニュファクチャーという、異なる立場の人間がアイデアを出し合い、創造力と技術力を駆使してひとつのモノをつくっていく。それは業種を越えた、コラボレーションが生まれた瞬間だった。
伴井 色の重なりを表現するなら、白と黒が二層になった黒蝶貝がありますので、それを使ってみたらどうでしょう?
三原 そうなんですか。それはいいですね。ではその黒蝶貝をベースに使い、トップになる部分にギザギザ模様を入れましょう。
伴井 なるほど。そういったデザインはいままでやったことがありませんが、やってみましょう。
こうして三原さんは、トモイに「MMM=MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO」のボタンをその場でオーダー。とりあえずはサンプルを制作していただくことにした。
初めて工場を見学し、貝ボタンについての見識を深めた三原さんにとって、今回の訪問は自身のクリエイションにもプラスになっただろう。また、それは伴井さんにとっても同じことがいえるようだ。デザイナー自らが工場にまで赴ことはほとんどないそうであり、直接話し合って受けた今回のオーダーは、モノづくりの刺激となったに違いない。そんな伴井さんは、最後にこんな話しをしてくれた。
“付属”を超えた付属品が完成
伴井 衣料にとってボタンはあくまで“付属”であり、ボタンで服を選ぶことはないかもしれません。ですが、貝ボタンは製造の過程で出る削りカスも肥料になるなど、現在問題になっている環境にもほとんど負担をかけず、なにより天然素材ならではの美しさがある。服を選ぶときに、そんなことを少しでも意識してほしいですね。
それから数日後、トモイからボタンのサンプルが届けられた。凹凸をつけて二枚を重ね合わせる精巧な構造や、トップ部分の繊細なギザギザ模様など、ほぼイメージどおりの出来映えに三原さんも大満足だった。厚みの調整を若干加え、こうして「MMM」の特製貝ボタンが完成したのだ。
トップ部分を着け換えることで、服にさまざまな表情とアクセントを加えることができる、日本が誇る工場が生んだ“付属”を超えた付属品といえるだろう。「MMM」ではこの貝ボタンを使ったウェアを現在企画中なので、その登場をぜひとも期待してほしい。