「HSW」の本田博之さんに聞く(1)
「HSW」の本田博之さんに聞く(1)
とても残念なことですが、エフェクター制作の名手、本田博之さんが主宰する「Honda Sound Works」のブランドとショップは4月末で終了しました。その理由を尋ねると、「これからは音をつくりあげたいアーティストの力になったり、レコーディングなど音をつくるスタッフとして活動を深めたい」とのこと。本田さん作のエフェクターがなくなってしまうのは残念ですが、こうしてこの機会にお話を聞けてとてもうれしかったです。
photo by Jamandfix
興味があるのは出てくる音だけ
望月 唯:こうして本田さんとしっかり話すのは初めてなんですが、本田さんのプロフィールを伺っていいですか。
本田博之:パール楽器というドラムス専門店で働いている頃、ドラムス以外の楽器にも力を入れだして、企画やバイヤーを兼ねるようになってギターと出会いました。仕事で、ピーターソンという英国のギターアンプを輸入したり、G&Lというギターを扱っているうちに、日本や世界のギタリストと会える機会が増えてきて、いろんな音を耳にしながら自然に鍛えられました。
望月:最初はドラムスだったんですか。
本田:その後、神田神保町のESPショップの店長を2年ぐらい務めて、恵比寿ギャングというヴィンテージエフェクターの専門店に移ったんですね。
望月:ヴィンテージブームの火付け役ですね。
本田:名機といわれたヴィンテージエフェクターを修理もしながらいろんな音をじかに聴いて、またヴィンテージギターアンプのメンテナンスをするうちに、いろいろ思ったんですよ。
望月:何を思ったんですか。
本田:ヴィンテージといわれているものは日本ではアフターサービスがまったくされていないから、それをちゃんとしてあげようと。
望月:それがHonda Sound Worksの始まりなんですか!
本田:ぼくは本来はブランドにまったく興味がないんですよ。あるのは、“みんなの音をいい音にしてあげたい”ということだけ。それで、友達のブランドの音をプロデュースしていくなかで、エフェクターを開発して自分のところから発売すればと言われたのがきっかけですね。
望月:人に勧められて始めたわけですか。
本田:ブランドにはまったく興味がないので、「Honda Sound Works」なんですよ(笑)。ヴィンテージのすべての楽器をチェックすると、現代の楽器の持っている特質とものすごくギャップがある。それを自分で埋められたら面白いなというところもあったんです。それと、ぼくが普通の技術者とまったく違うのは、電気回路やパーツには一切興味がなくて‥‥。
望月:え、そうなんですか! 僕はそっちが専門なのかと今まで思っていました。
本田:興味があるのは出てくる音だけですね。ぼくがイメージしたものをつくるだけ。何年頃の何とかというバンドの音がカッコイイなと思ったら、それをずーっと聴いて、この音を出すにはどの回路を使って‥‥というところからの試行錯誤です。それと、昔のパーツではなく、今のパーツでつくることにもこだわっています。今の時代に生きているんだから、今のパーツを使って昔を越えたい。
望月:エフェクターをつくるときはどうやって進めていくんですか。
本田:ぼくはサウンドのプロデュース業なので、製品は信頼できる技術者に作ってもらって、最終的にトーンの調整は自分でやります。でも、コンデンサや線、ジャック周りのグランドの取り方などでトーンは微妙に変わってくるので、試作は大変ですね。
望月:じゃあ、本当に本田さんの耳がつくってるわけですね。
本田:ぼくのテーマは人間。ギターも弾き手が一番の源なので、頼るのは耳だけです。
※店舗はすでに閉店しています