「花器研究所」プロジェクト第一弾、大壺「Eight Kunshi」|MARUWAKAYA
MARUWAKAYA|丸若屋
AMKK(東信、花樹研究所)×丸若屋×有田の名窯・辻精磁社
「花器研究所」プロジェクト第一弾、大壺「Eight Kunshi」発表
花の表現のエキスパートであるAMKK(東信、花樹研究所)と、日本のものづくりに精通する丸若屋により、花と器という二つの側面からさまざまな「花器」に注目する「花器研究所」が発足した。その新プロジェクト第一弾のパートナーは、有田の地で360年の歴史を誇る名窯・辻精磁社。7月4日に佐賀県有田町の泉山磁石場でインスタレーション「BLUE FLOWER REBELLION」がおこなわれた。
Photographs by shiinoki / AMKKText by KAJII Makoto (OPENERS)
花の美しさを活かしも殺しもする花器
花器に現代の感性を付与することで、その本質的な価値を再発見し、世に問うことを目的として発足した「花器研究所」。フラワーアーティスト・東信氏のクリエーションを展開し、芸術的レベルに変換し表現することで花・植物の価値を高める「AMKK」と、日本で育まれてきた多様な伝統・英知・技術を分析、再構築することで研ぎ澄まされたプロダクトアウトをおこなってきた「丸若屋」がタッグを組み、「花器研究所」としてさまざまなプロジェクトを展開する予定だという。
プロジェクトの第一弾として迎えるパートナーは、有田の名窯・辻家。禁裏御用達として、天皇・皇族のための器のみを生産し、“幻の名窯”とうたわれてきた辻家の名品のなかで、今回花器研究所がフィーチャーしたのは、ひと際存在感をはなつ大壷「四君子」だ。
十五代、辻常陸氏による過去と現代の類を見ない融合
春夏秋冬それぞれを代表する4つの植物(春は蘭、夏は竹、秋は菊、冬は梅)が一つの絵に収められたこの大壷に、“現代の四季”をモチーフにした植物(春は洋蘭、夏は時計草、秋はウツボカズラ、冬はスミレ)を4つあらたに絵柄にくわえ、「四君子」ならぬ「八君子」という概念を構築し、表現した。
花の選定でイニシアティブをとった東信氏は、「意味合いにはあえてこだわらず、絵になる植物を選んだ。もしかしたら今回の4つはこの先、またちがう植物に置き換えられるかもしれない。その自由さやしなやかさが“いま”なのではないか。そして複雑化・多様化する現代を生きるためには固定化された四君子だけでは不十分ではないかという思いもある」と語る。
奥ゆかしさを湛えた青い花々が躍動する大壺
古来からの繊細な筆使いで描かれる奥ゆかしさを湛えた青い花々が、ともに器のなかに永遠の命を宿し、躍動する ―― この世にたった一つの究極の花器が、生み出された有田の地で、一夜限り人びとの目の前にあらわれたのは、7月4日の夕刻。
インスタレーションがおこなわれた場所は、400年前、李参平率いる陶工集団が陶石を発見し、日本で最初の磁器焼成に成功した佐賀県有田町の泉山磁石場で、ここの石から磁肌のまろやかな初期伊万里や骨董ファン垂涎の古伊万里などが生まれた。
現在は休鉱中で採掘されていないが、フェンスをへだてて採掘場を見学することができ、泉山の石場神社には、高麗神の碑があり、李参平像もまつられている。
今回、東信氏の創意と十五代の職人技の橋わたし役を務めた丸若裕俊氏は、「現代的なデザインをほどこすのではなく、あくまで辻家の伝統に最大限の敬意を抱きながら、残すこと、変えることを慎重に吟味した結果、有田の未来に繋がるあらたな名品ができあがった」と、完成した八君子「Eight Kunshi」を前に語った。
花器研究所
http://maru-waka.com/