田名網敬一は最初にアンディ・ウォーホルのなんたるかを理解した日本人アーティスト|MEDICOM TOY
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2019年8月24日

田名網敬一は最初にアンディ・ウォーホルのなんたるかを理解した日本人アーティスト|MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

ギャラリー「NANZUKA」オーナー南塚真史氏インタビュー(2)

アートディレクターとも違う、グラフィックデザインをベースにしたアーティスト

──田名網先生の原動力はどこにあるんでしょう?

南塚 田名網先生は夢日記を付けています。朝起きると自分が寝ている間に見た夢を書き留めるんです。過去に、それをやり過ぎて不眠症になりドクターストップがかかったため、最近はたまに面白い夢があったときしかやらないと言っていますが、その記録は作品の重要なソースとなっています。

また、田名網先生は、幼少期に戦争を体験しています。空襲から逃げ回る人々、防空壕での記憶、空襲後に見た悲惨な光景など、一見陽気に見える田名網の作品の中には、こうしたモチーフが描かれています。田名網先生の作品は、トラウマ体験や夢の記憶、そして現実の体験などが複雑に混ざり合って構成されています。その深淵は、他の誰か覗いてみても、決して全貌を把握することはできません。

田名網先生は、表現者として自分の蓄積をすべて吐き出して作品を制作しています。そのストイックな姿勢は、少なくとも僕が知る限り、他の誰も真似はできない領域に達していると思います。まさに巨人です。
──ものすごいパワーだと思います。近年の活動の中でも特に今春のアディダスのファッションライン、アディダス オリジナルス(adidas Originals)」とのコラボレーション「adicolor by Tanaami」は若者を中心に話題になりました。これも「NANZUKA」が主導されたそうですね。

南塚 アディダスのPRを担当している加瀬くんという友人がいまして、「田名網先生と何かやろうよ」みたいな感じの投げかけは、5〜6年前からしていました。

adidasも、今ではカニエ・ウェストやファレルとのコラボレーションが大きな成功を産んでいますが、以前は企業もアーティストとの協業には、あまり価値を見い出せていなかったと思うんです。ただ、ソーシャルメディアの拡散によって、逆に社会がどんどん保守的になり、弱者の攻撃的な意見が取り上げられやすい環境の中、聖域的にアーティストのクリエイティブが、自由を象徴するものとして評価されているのだと思います。さすがに、ビッグブランドはそうした時代の流れに敏感で、今回のadidasとTANAAMIのコラボも、こうした文脈に即したものだと思います。

このプロジェクトのボスに中濱淳星さんという日本人リーダーがいまして、淳星さんは本国のアディダス本社の6人いる副社長の1人なんです。今回のプロジェクトは淳星さんが「日本に田名網敬一という素晴らしいアーティストがいる。この人とコラボレーションするべきだ、責任は持つから」と稟議を通してくれた、と聞いています。プロジェクトトップの愛があったところからスタートしたので、田名網先生も快く進めることができました。アディダスとのコラボレーションは第2弾も控えているので、ぜひご期待ください。

──楽しみにしております。そしていよいよ本題です。MEDICOM TOYから8月に発売される「BE@RBRICK 田名網敬一」の製作背景についてお聞かせください。

南塚 実は、これでもかなりおとなしめになったんです(笑)。当初、田名網先生はもっとすごいデザインをあげていて、色数ももっと多く、ディテールの描き込みも非常に細密でした。しかし、印刷技術的に難しいという問題があり、それでもMEDICOM TOYさんがものすごく頑張って、ここまでもってきてくださった。たぶんここまで色数を使っているBE@RBRICKは、あまり他にないと思うんです。ものすごい版の数なので。
──テーマは決めていらしたんですか?

南塚 テーマというよりは田名網先生が日常的に描いているキャラクターを、BE@RBRICKに落とし込んでいきました。このニワトリや金魚、目の表現など、田名網作品の典型とも言えるものです。実は田名網先生、おもちゃがとても好きなんです。
──それは意外でした。

南塚 昔から自身のコレクションや、過去に作ったものをアーカイブ的にスタジオに飾って置いています。先生は、ずらっと一堂に会して並べるのが好きなんです。ちょうど、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催した展覧会(2019年7月5日(金)~8月21日(水)「田名網敬一の観光 Keiichi Tanaami Great Journey」では、こうしたスタジオのコレクションを大量に並べた展示をしていました。
──田名網さんは2005年に開催されたBE@RBRICK WORLD WIDE TOUR(世界中のアーティストが1000%サイズのBE@RBRICKをキャンバスにした作品展覧会)にも参加されています。南塚さんからご覧になってBE@RBRICKとはアートピースとしてどういう存在だと思われますか?

南塚 以前、赤司社長がBE@RBRICKは、Tシャツのオモチャ版として開発した、とおっしゃっていました。どんなグラフィックも落とし込める可動式のオモチャというコンセプトですね。Tシャツも気軽に着れるアートピースとよく言いますが、BE@RBRICKもその可変性が大きな魅力だと思います。同じ形でも全然違うイメージになる。身近にクリエイティブを楽しむアイテムとして非常によくできていると思います。ヒット商品だというのもよくわかります。

実は、BE@RBRICKが作った土台は、現在のアートシーンに非常に大きい影響力をもっています。KAWSがあれほど大きな存在となった背景には、MEDICOM TOYさんとのコラボレーションがあることは言うまでもありません。

いまアートを買っている世界中のヤングリッチたちは最初おもちゃのコレクションから入った人が非常に多い。限定品を買い集めているうちに、オリジナルの1点ものの作品が欲しくなる──その段階を踏んでアートのコレクターになる人がとても多い。その意味で、BE@RBRICKの功績は非常に大きいと思いますし、間接的かもしれませんが僕も恩恵を受けている感があります。
──ありがとうございます。最後に今後、NANZUKAでは田名網作品をどのように展開されるご予定でしょうか。

南塚 9月にニューヨークのジェフリー・ダイチという伝説的なギャラリーで新作による個展があります。ペインティングは一番大きいもので4×2メートルという大作を含めて7点。それからキャンバスのコラージュ作品が6点、あとは立体作品とドローイング作品という感じで、結構なボリュームになると思います。

ジェフリー・ダイチはまさに僕がやっている「NANZUKA」の先駆者的なギャラリーで、オーナーのジェフリー・ダイチはストリートをハイエンドに昇華して、アートの文脈に置き換えたギャラリストなんです。

90年代以降、バスキアやウォーホルなど、アメリカのストリートアートとポップアートを複合的に再解釈し、2000年代初めにはNYを代表するギャラリーになりました。2010年に、経営危機にあったLAのMOCA(ロサンゼルス現代美術館)の館長を務め、その任期が終わった今、自分のギャラリーを復活させて新たなプログラムを組んでいます。

ジェフリーが手掛けた一番伝説的な展覧会が、2000年にNYで開催された「ストリート・マーケット」ですね。バリー・マッギースティーブ・パワーズトッド・ジェームスの3人がグラフィティに溢れるNYの裏路地を再現した壮大なインスタレーションです。いま、KAWSがアメリカを代表するポップストリートのアーティストとして評価されていますが、その根底にあるのはジェフリーがつくった「アメリカのアートはポップであり、ストリートだ」という文脈に基づいた部分です。
──由緒あるポップアート、ストリートアートの本拠地で展示されるわけですね。

南塚 まさにベストマッチングだと思い、展覧会の話を持ちかけました。あとは既に発表されていますが、いまEXILEの若手グループのGENERATIONS from EXILE TRIBEドームツアーのアートワークをやっています。
──田名網さんがGENERATIONSのアートワークを? それはすごい!

南塚 GENERATIONS from EXILE TRIBEのホームページに、田名網先生の手掛けたロゴタイトルが出ていますので、ご覧になってみてください。HIROさんからは『少年ジャンプ』のようなイメージのグラフィックデザインがほしいというお題がありまして、それに対する田名網先生の一発回答に、デザイナーとしての強度の高さが分かるかと思います。田名網先生の恐ろしいところは、どんな球が来ても打ち返す変幻自在性と、完成したイメージが必ず田名網作品になっていることです。ここが普通のデザイナーとはレベルがまるで違う。アートディレクターとも違う、まさにグラフィックデザインをベースにすることで辿り着いた、現代の究極のアーティスト像だと思います。

「BE@RBRICK 田名網敬一 100% & 400%」は赤と黒の2種展開。メディコム・トイ直営各店舗及びオンラインストア各店、他一部店舗にて2019年8月発売予定・各1万4000円(税別)。
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問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

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