伝説の原型師ハマハヤオ氏にインタビュー! 新作ソフビ「K(原作版)」の秘密 | MEDICOM TOY
DESIGN / FEATURES
2021年6月24日

伝説の原型師ハマハヤオ氏にインタビュー! 新作ソフビ「K(原作版)」の秘密 | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

東映レトロソフビコレクションEX K(原作版)発売!

メディコム・トイの東映レトロソフビコレクションEXより発売される「K(原作版)」は、マネキン製作会社勤務からプロの原型師となり、ビリケン商会のソフビキットの歴史を長年支えてきたハマハヤオ氏が原型製作を担当している。現在はチェーンソーカービングの第一人者としても活躍するハマ氏に、当時の思い出や今回「K(原作版)」を手がけるまでのいきさつをうかがった。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

1980年代、原型師を始めた頃の思い出

──立体物の造型に関わるようになったきっかけをお聞かせください。
ハマハヤオ ブリキ玩具やソフビ人形の価値がまだ認められてなかった頃、ブリキ玩具の骨董店「ビリケン商会」(註1)がオープンしまして。コレクターと言うには金が無さ過ぎましたが、フリーター的な雰囲気を醸しながら、時々覗きに行っていたんです。あるとき、オリジナルな商品を出そう考えていたオーナー三原氏から「怪獣造れるか」と聞かれ、「造れます」と。そんなきっかけです。
(註1)1976年に日本初の古い玩具の専門店として南青山の骨董通りにオープン。1983年よりハマ氏が手がけたオリジナルのソフトビニール製組み立てキットを製造販売開始。
──ビリケン商会から1983年に発売された「メタルナミュータント」(註2)で本格的に原型製作を手がけられてまもなく40年になります。1980年代当時のフィギュア製作をとりまく状況、顧客層、リクエストの高かった作品など、印象に残っていることを教えてください。
ハマハヤオ 近くにプラモを売っている店もないような田舎で育ったので、当然プラモ雑誌を読むことも覗くことも無くて。でも、「宇宙船」(註3)が発刊されると、感性に合っていたのか創刊号から続けて購読していました。その中に「メタルナミュータント」(註3)が紹介されていて、世にガレージキットなるものが出てきた。
ビデオはまだ普及されてなくて、私も当然持ってなくて、「宇宙船」の編集者でB級特撮映画の研究者のヒジリさん(註4)の家まで、動く「メタルナミュータント」のビデオを観に行きました。
(註2)映画「宇宙水爆戦」 (1955年 米)に登場するメタルナ星で使役用に昆虫から造られたミュータント。
(註3)朝日ソノラマが1978年に発売した「ファンタスティックTVコレクション 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン ウルトラセブン ウルトラQ」のヒットを受け、前身となる「マンガ少年別冊 すばらしき特撮映像の世界」を経て、1980年に定期刊行物として創刊。2008年よりホビージャパン季刊誌として復刊。
(註4)聖咲奇氏。朝日ソノラマ「ファンタスティックコレクション」「マンガ少年別冊」の編集、「宇宙船」の企画・構成を担当。埋もれた名作洋画の発掘、海外のガレージ・キットや広告、玩具の紹介に尽力し、国内外のアマチュア造形師をプロに育てた中心人物のひとり。
──初期の頃は造型の際、参考にできるものは数枚の写真ぐらいしかなかったのではないかと思われます。今と比べて難しかったこと、大変だったこともあったのではないでしょうか。また、1体製作するのにどれくらい日数がかかったのでしょうか。
ハマハヤオ そもそもリアルなフィギュアキットってまだ無かった気がします。だから「リアルに造らなければ」とは考えてもなかったと思います。写真からして無いので、そこは好きに造って良い!と。
当時、潰れかかったマネキン人形の会社で、仕上げのメイクという仕事をしていて。朝1時間くらいやると後はやることがなかったので、メタルナは日がな会社で造っていました。1ヶ月程で完成したかと。
90年代後半に撮影されたと思われる工房でのハマ氏
──ご自身の手がけられた作品で最も思い入れのあるもの、また反響の大きかった作品を教えてください。
ハマハヤオ レトロなB級米国特撮映画を題材に、この世の片隅で遊ばせてもらっている感覚だったので、国内超メジャーな「ウルトラマン」(註5)で何かしらの流れが変わった気がします。初めて世の中への影響があったというか……。
満足感を感じたのは「バルタン星人」。高山さん(註6)の造形に感動しながら造ったのを覚えています。
(註5)1966年7月から1967年4月までTBS系で全39話が放送されたTBS・円谷プロダクション制作の特撮テレビドラマ。
(註6)初期ウルトラシリーズの怪獣造形で中心的役割を果たした芸術家・高山良策(たかやま りょうさく 1917年3月11日ー1982年7月27日)氏。
彫刻家・成田亨氏の紹介により円谷プロダクション製作の「ウルトラQ」製作第14話(「ペギラが来た!」の冷凍怪獣ペギラ)より参加。成田氏がデザインしたカネゴン、ゴモラ、レッドキング、バルタン星人、メトロン星人など数多くの怪獣・宇宙人の着ぐるみ製作を担当。

チェーンソーカービングには爽快感がある

──現在、フィギュア造型のお仕事と並行して、チェーンソーを使って彫刻を制作する「チェーンソーカービング」の第一人者としても活躍されています。チェーンソーカービングを始められたきっかけと、その魅力について教えてください。
ハマハヤオ リアルに造ることが強迫観念みたいになってきて、ペースがどんどん遅くなり、細かい作業で体を全く動かさない。一方、チェンソーカービングは1日、あるいは数時間で完成します。爽快感があります。
木 一吉(き・いちきち)という名前で、チェーンソーカーバーとしても活躍するハマハヤオ氏
──フィギュア造型のお仕事と、チェーンソーカービングのお仕事の割合はどのように配分されていますか。
ハマハヤオ 私がやっていた、レトロな怪獣のリアル・フィギュアは売れなくなっています。私の造るペースが遅いので、仕事として成り立たなくなっています。チェンソーカービングは、あまり発信しない様にしてるつもりでもボチボチ注文があり、体力的には辛い面もあるので、随分とお待たせしているのもあります。
配分と言われれば、半々……といったところかと思います。
──今回「K(原作版)」(註7)の造型を手がけられましたが、どういういきさつだったのでしょうか。
ハマハヤオ 私の日本一のファンとして、私を永らくサポートして下さっているオタキック鷲澤氏(註8)から、個人的に「ロボット刑事」を造ってほしいという話をいただきました。
気に入っていただけて、鷲澤氏からメディコム・トイさんに働きかけていただいた、ということです。
(註7)『週刊少年マガジン』1973年1号から同年41号まで連載された石森章太郎(石ノ森章太郎)の漫画、および1973年4月~9月、フジテレビ系で全26話放送された東映製作の特撮テレビ番組。ストーリー内容は異なるが、いずれも捜査用ロボットK(ケー)と犯罪組織の戦いを描く。
(註8)北海道・札幌市の人気玩具ショップ「御宅家本舗 OTAKICK」および「OTAKICK 楽天市場店」「OTAKICK YAHOO!店」を運営する有限会社オタキック代表取締役の鷲澤毅芳氏。
──「ロボット刑事」は1973年に石ノ森章太郎先生の漫画連載、および東映製作のテレビ番組で展開されましたが、当時の思い出はございますか。
ハマハヤオ 残念ながら、私が観た特撮TVは「ウルトラセブン」(註9)までです。オタクでもマニアでも無く、当時としては普通の少年。大人になってからはノスタルジックな物が好きな、なんか造っていたい人です。
(註9)1967年10月から1968年9月までTBS系で全49話が放送されたTBS・円谷プロダクション制作の特撮テレビドラマ。
──「K(原作版)」を造型する際、特にこだわった部分を教えてください。
ハマハヤオ 石ノ森先生の漫画特有のムードを出すことです。
──ハマさんは、以前にもメディコム・トイと「S・A・F・S」の女性パイロットの原型製作でご一緒されています(註10)。メディコム・トイの印象はいかがでしょうか。今後一緒にやってみたいことがございましたら、お聞かせください。
ハマハヤオ 私の知らないマニアックな所で、いっぱい仕事をしているメーカーさんというイメージ。細かいリアルな仕事がどんどん辛くなっているので、漫画版みたいな、自分の解釈を入れる余地のあるモノ、ゆるめに造れるモノなら、是非やらせていただきたいです。
(註10)トイズマッコイ、ビリケン商会とのコラボレーション企画で2009年に発売された「SUPER ARMORED FIGHTING SUIT S・A・F・S」、および2011年に発売された第2弾「SUPER ARMORED FIGHTING SUIT "SNOWMAN"」に登場する女性パイロットの原型を製作。
東映レトロソフビコレクションEX K(原作版)
サイズ|全高約300mm
販売方法|2021年6月24日(木)00:00~7月31日(土)23:59、1/6計画店頭及び、メディコム・トイ運営オンラインストア各店にて受注。
価格|1万6500円 (税込)
発送日| 2021年11月発送予定
©️ 石森プロ・東映
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

                      
Photo Gallery