インテリアスタイリスト茂木雅代が案内する、新生リビング・モティーフの楽しみ方|LIVING MOTIF
DESIGN / FEATURES
2015年4月13日

インテリアスタイリスト茂木雅代が案内する、新生リビング・モティーフの楽しみ方|LIVING MOTIF

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

案内人はインテリアスタイリストの茂木雅代さん

新生リビング・モティーフの楽しみ方(1)

「本物の集まる空間、本物と出会う時間」をコンセプトに3月19日にリモデルオープンした六本木のインテリアショップ「LIVING MOTIF(リビング・モティーフ)」。今回、同店1階イベントスペースで展示中のポール・ケアホルム「dialogue with materials -素材との対話-」のスタイリングを手がけたインテリアスタイリストの茂木雅代さんに、あらたに生まれかわったリビング・モティーフの見どころを案内していただいた。

Photographs by JAMANDFIXText by KAJII Makoto (OPENERS)

1階のイベントスペースを見て歩く

「どのインテリアショップにも主役は多いのですが、いつも脇役が少ない印象がありました。しかし、リビング・モティーフは主役と脇役がバランス良く揃っていて、ワンランク上のライフスタイルの提案をしっかり感じますね」。インテリアスタイリストの茂木雅代さんは、去る3月19日にリモデルオープンした「リビング・モティーフ」の印象について、そう語る。

今回のリモデルでは、1階ファサード面に光が入る開放的なイベントスペースが新設され、これまで地下にあった洋書・デザイン書籍を扱うインショップ「BIBLIOPHILE(ビブリオファイル)」は2階へと移動。代わって家具、照明、ファブリックは地下1階に集められた。それぞれのフロアの個性がより鮮明になり、あたらしい商品との出会いがさらに楽しめるようになったのが最大の特徴である。

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

「リビング・モティーフの約30年の歴史のなかでも、私も3分の2ほどはさまざまな形でこのショップに携わってきました」と笑みを浮かべる茂木さん。今回リモデルオープニング記念で開催された『ポール・ケアホルム展』のスタイリングも、ご自身によるものだ。

まずは、その会場となった1階フロアを見て歩く。フリッツ・ハンセン社が手がけるポール・ケアホルムの代表作のPK22イージーチェアや、PK80のデイベッド、PK31ソファなどがズラリと並ぶ光景はまさに圧巻で、茂木さんは「名作と呼ばれる家具と、人々はどのように生活を共に過ごしていくのか。その行動を想像して、考える時間が楽しかったですね」と、その制作過程を振り返る。

「このイベントスペースは、店の正面だけでなく横からも見渡すことができるので、ディスプレイに立体感が出るのと同時に、フロア全体との調和も取りやすい。歩きながら鑑賞できるスペースになっているのも魅力ですね」とも語り、このリモデルオープンに十分な手応えを感じたようだ。

ポール・ケアホルムのデザインとは

イベントスペースでとくに好きなコーナーを尋ねると、「じつは私、狭いところが好きなんですよ」と、窓際にエッグチェアやドットスツールがならんでいる場所を指名。「あの場所は不思議な空間ですよね。フリッツ・ハンセンの商品がこんな狭い空間に納まっている。もう、それだけで楽しいとはおもいませんか」と茂木さん。

「ポール・ケアホルムの家具は、あえて重心を低く作っていて、空間を邪魔することはありませんが、それでいてアート作品のように主張するのが魅力。彼の家具を愛するひとは、そのミニマムなデザインをしっかり理解して空間のなかに上手に取り込んでいます。美しい家具を使いこなせる生活は憧れますが、リビング・モティーフに置いてある製品とならきれいにコーディネートできるはずです」

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

インテリアは“時代性を差し込む楽しみ方”を

リモデル全体の印象を聞くと、「お店は時代や流行とともに成長していく、言わば“生きもの”のような存在ですが、今回はウィンドウ側の天井が高くなり、落ち着きある配色で、開放感のある軽やかな雰囲気になりましたね」と茂木さん。1階フロアでは、ボタニカルキャンドルがあるフレグランスコーナーや、「整然とした壁面ディスプレイが素敵」というバスグッズコーナーなどがお薦めだそう。

茂木さんに現在のインテリアシーンのトレンドを尋ねると、「いまの時代、情報はインターネットであふれるほど手に入れることができます。しかし個人はそのなかから選択できる術をもっていなければ楽しくありません。それに必要なのは、やはり足を運んで探すことです。情報をふるいにかけて選択していく時代ですから、一日のなかで選択しなければいけないことはたくさんあります。

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

私がいま一番興味があることは、これほどスピードを求められる時代にもかかわらず、時間を必要とする活動をつづけるデザイナーやクリエーター、そして職人と、この情報社会から生まれるあたらしい動きです。トレンドについては、ファッションで語れる部分も多分にあるとおもいますが、インテリアは“時代性を差し込む楽しみ方”を実践すればいい。たとえば、愛用しているソファに、クッションなどでそのときの気分や流行の色や柄を差し込んでいく。インテリアもファッションとおなじくセレクトできる目を養いたいですね」と語る。

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

リビング・モティーフ
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル B1F, 1F, 2F
Tel. 03-3587-2784
営業時間|11:00~19:00
http://www.livingmotif.com


LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

インテリアスタイリスト茂木雅代が案内

新生リビング・モティーフの楽しみ方(2)

玉手箱のような2階と、秘密めいた地下1階の対比を愉しむ

新生リビング・モティーフの2階フロアは、洋書・デザイン書籍を扱うインショップ「ビブリオファイル」が地下から移設され、印象が一変。「隠れ部屋からライブラリーになりました」と茂木さんが言うように、広く開放感があり、玉手箱のようなフロアだ。「地下にあったときは“ここに住みたい”と思いましたが(笑)、2階に移動して本を手に取りやすくなりましたね」。

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

デザイン、グラフィック、インテリア、建築を中心に、写真、アート、料理など世界中の洋書を幅広く取り揃えるビブリオファイルは、「あたらしい、おもしろい、楽しい洋書が見つかる場所。洋書はつぎにいつ入荷があるかわからないので、気に入ったものがあるとつい購入してしまいます。専任スタッフに尋ねれば必ず教えてくれるし、ハードカバーの本は所有しておきたいし、本自体の重さも楽しむもの。『Vitra』の最新本などあたらしい発見もあります」と語る茂木さん。

2階は、デスク周りなどワークスペースと連動しつつ、ステーショナリーやオーディオなど実用性と趣味性の高いアイテムが充実。「ノートやメモ帳、文房具など、どんなひとが買い付けているのか想像しながら買うのが楽しい」と茂木さんの興味は尽きない。

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

自然光が入らないスペースを上手に演出

ここまで1階、2階フロアと茂木さんに案内していただいたが、つづけて「2階が開放的なのに対比して、秘密めいた感じがする」という地下へ。

「リモデルして自然光が入らない空間を、パーティションを使ってコーナーを設けているのがとても上手。モダンなマクラメ編みハンギングプランターの『llot llov』など、このスペースで見ると魅力が増しますね」

そう印象を語る茂木さんが地下で最初に手に取ったのは、入荷したばかりの『GUBI』のDedalブックシェルフ。ユニークなフォルムで軽量、カラーバリエーションが豊富なシェルフを触りながら、「今度、撮影にぜひ使いたい」とお気に入りのようすだ。

また、ベッドコーナーに配置された『A2』のキャビネットも、「2008年に設立したスウェーデンの若手デザイナー集団が手がける家具ブランドで、スカンジナビア家具の伝統を守りつつ、個性的なデザインが魅力です」と茂木さんお薦めのアイテム。地下1階は、家具をはじめ、照明、ファブリックが充実しており、プライベート空間を個性的にコーディネートすることができる。

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

茂木雅代流、インテリアの楽しみ方とは

「素敵な空間に身を置くことで、見る目を養ってくれます」と茂木さんは、インテリアショップの魅力について話す。「暮らしに必要な衣食住にかんする“TOP OF THE TOP”を知っていると、自ずと選択肢が増えていきます。時代をリードするお店は、自分のなかの引き出しを1個ずつ増やしてくれる場所。好きなものはなんとしても手に入れたいけれど、素敵なものを選ぶのは好みとセンスなので、そうした空間を作り出すことは人生にとって、とても大事」とも。

最後に新生リビング・モティーフのハイライトについてうかがった。「ひとの記憶は、いますぐにではなくても、匂いや音、おなじ季節を迎えたときに突然思い出すことがありますよね。インテリアもおなじで、かつてポール・ケアホルムのPKシリーズを見た記憶が何年後かによみがえって、それが理解につながったりします。素材の質感のちがいや、時間を必要とする作り方をしていること、そして“革は生きている”と感じられるようになることなど。それはとても大切なこと。リビング・モティーフは玉手箱のように中身を楽しみたい店です。長い目でお客さんを育ててくれる店であってほしいし、インテリアもファッションも結論がないからおもしろいんです」

茂木雅代|MOTEGI Masayo
インテリアスタイリスト。日立デザイン研究所のプロダクトデザイナーなどを経て、1992年にスタイリストとして独立。雑誌や広告のインテリアスタイリング、展示会場構成、ショッププランニングなどを手がける。


ポール・ケアホルム
「dialogue with materials -素材との対話-」展示

期間|4月20日(月)まで開催中

LIVING MOTIF|リビング・モティーフ

リビング・モティーフ
東京都港区六本木5-17-1 AXISビル B1F, 1F, 2F
Tel. 03-3587-2784
営業時間|11:00~19:00
http://www.livingmotif.com

           
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