STRESSLESS®|谷尻誠氏が語る、現代のくつろぎ論
DESIGN / FEATURES
2015年1月23日

STRESSLESS®|谷尻誠氏が語る、現代のくつろぎ論

STRESSLESS®|ストレスレス®チェア

“余白”があるものを作りつづけたい、そして使いつづけたい

谷尻誠氏が語る、現代のくつろぎ論

1934年創業のノルウェーの家具メーカー、EKORNES(エコーネス)社の代表作「ストレスレス®チェア」に新作が登場した。本品をさっそく体感した建築家・谷尻誠氏。もともと「常に新しいものを探し続けていくことを考える」という谷尻氏の、本製品の使い心地について語る眼差しから見えてきたのは、現代だからこそのくつろぎの本質ともいえるべきものだった。

Photographs by JAMANDFIX
Text by TAN Miho(OPENERS)

飛行機のビジネスクラスを彷彿とさせる座り心地

1971年の発売からの累計販売台数は、その数800万台以上。今では世界50か国以上で支持されているリクライニングチェアが、エコーネスの「ストレスレス®チェア」だ。長い冬を自宅で過ごすノルウェーの人びとにとって、椅子は親友のようなもの。そんな大切な存在だからこそ、「1日の疲れを忘れてくつろげるチェアを」と約2年の歳月をかけて創業者・イェンス・E・エコーネス氏が開発。背もたれに体重をかけるだけで身体に沿って自動的にリクライニングする人間工学に基づく設計で、アメリカカイロプラクティック協会の推奨商品としても認定されている。

この「ストレスレス®チェア」に本年10月、エコーネス社創立80周年を記念した新商品2モデルがくわわった。初代「ストレスレス®チェア」を現代風にリプロダクトして当時のクラシックかつレトロな趣を備えたメトロと、ノルウェーらしいシンプルで洗練された印象に仕上げたシティーだ。いずれも極上の座り心地はそのままに、背面と座面をぐっとスリムにし北欧モダンにこだわったスチールベースのモデル。この新製品のなかから谷尻誠氏が指名したのは「ストレスレス®メトロ」、カラーはトープだ。

「いいですよね、この座り心地。実は最初に座ったとき寝ちゃったんです。出先から戻ってきて座りながらスタッフとあれこれ話していたんですけどね、気づいたら……。飛行機のことを思い出しました。ビジネスクラスとかに乗って、いつの間にか着いちゃってるっていうことがあるじゃないですか。それを彷彿とさせました」とは谷尻氏。

「メトロのトープを選んだのは、事務所のなかの色とか雰囲気と合うと思ったから。黒も合うと思うんですけど、椅子自体にボリューム感があるので、空間が重くなりすぎないようにとこちらを選びました。椅子を選ぶとき、みなさんわりと椅子だけを見がちなんですけど、それ以外を見るのは大事。たとえばパンツ買うときに、自分が家にもってる上着を想像してパンツ買ってるのと一緒で。周囲を見ることが、ものを見ることにつながっている。それは建築も同じですね」

EKORNES 03

EKORNES 02

根源的なシンプルさのなかに宿るのが、本来のくつろぎ

「ストレスレス®チェア」は、第1号の発売以来40年に渡り、とりわけ機能の向上に力を注いできた。1991年にはさらなる快適性を追求したプラス™システム(注1)を採用。2001年には眠れる姿勢まで背もたれが深く倒せる機能の開発など、どんな姿勢であっても人の身体のいわゆる“S字カーブ”に沿う独自のスプリング構造や常に同じ角度をキープしてくれるヘッドレストの開発・改良を重ね、その包み込むような座り心地を追求してきた。

だがもっとも注目したいのは、その基本的な構造は驚くほどに変わっていないということ。この半世紀近くのあいだ、レバーもストッパーもくわえられてはいない。チェアの方が身体に寄り添うようにして座る人の思うままにリクライニングするという、その使い方はずっとそのままなのだ。

そのシンプルさを「根源的だ」と、谷尻氏は称する。

EKORNES 04

EKORNES 04

「40年以上ものあいだ、シンプルな使い方を貫いているって、根源的だし芯を食っている感じがすごくいいですよね。

結局、人間という生き物はわがままなので、あたらしい利便性を常に求め続ける。でも仮に、不便なものだけれども自分で使いこなしたとしますよね。そうするとだいたいみんな不便自慢するんですよ。壊れる車なんかもそうですけど、『この車よく壊れるんだよ』と言いながらも、『俺しか乗れないぜ』って言ってますよね。それはつまり、愛着をもっているということ。自分のものにしていくというのは、自分で使って、育てたり乗り越えたりするなかで初めて得られる豊かさだと思うんです。利便性だけを追求しすぎてしまうと、本当の愛着が沸きにくくなってしまう。根源的にシンプルなものっていうのは変わらないところにある。だから変にあれこれつけるより、実は十分だったりするんですよ」

さらに、くつろぐということについて、つぎのようにつづけた。

「身体を休めるってこともありますけど、それぞれの人が解放されるというのがくつろぎなんだと思います。その人が純粋に楽しめたり、気持ちのいい状態だったり。その前提には、能動的な意識をもつことが必要になってくる。そんなクリエイティブな発想をもたせてくれる“余白”のあるようなものこそ、作りつづけたいし、自分自身も育てるように使っていきたいと考えています」

(注1)内部スプリングが背骨のラインに沿って動き、腰をサポートする機能。さらに、リクライニングするとヘッドレストが頭を支えるように立ち上がる。目線が前を向くため、楽な姿勢で読書やテレビの視聴ができる。国際特許取得。

株式会社エコーネス
0120-18-1485
ストレスレス®ショールーム東京
0120-11-9269
http://stressless-pr.jp/metro_city/

           
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