URUSHI│さまざまなシーンで使っていただける漆の器をめざして
DESIGN / FEATURES
2015年4月13日

URUSHI│さまざまなシーンで使っていただける漆の器をめざして

「ISETAN LIVING×HIROCOLEDGE」
URUSHI│さまざまなシーンで使っていただける漆の器をめざして

「ISETAN LIVING × HIROCOLEDGE」の特集第11回は、伊勢丹リビングのバイヤーの八田浩志さんが、山田平安堂とともに取り組んだ漆のシリーズを紹介する。

文=伊勢丹 リビング営業部 特選和洋食器 八田浩志人物写真=川本史織

今回のオンリー・アイのテーマ「Love・Long Lasting」

重箱は現在、お正月のお節を入れる器として使われていますが、古くから「我が家の自慢の器」として、お正月だけでなくお花見や、行楽時のお弁当箱として、またひとの集まるシーンで欠かせない器です。
今回の企画は、そんなさまざまなシーンや、普段にも使っていただけることを意識した、今までにない重箱を理子さんとつくってみたいと思いました。

この取り組みにあたって理子さんと話したことは、「本物で永く使ってもらえるもの」。今回のオンリー・アイ「Love・Long Lasting」のテーマにそったものづくりです。
このテーマを実現させるためにモダンな漆器づくりで定評があり、デザイナーとのコラボレーションも多く手がけている山田平安堂さんと取り組みをさせていただきました。

平安堂のオリジナルで人気の高い、重箱と、同形のプレートを理子さんと選びました。
素材は木製で、色はオリジナルの朱から黒に変更し、漆の手塗りで仕上げてあります。
形は存在感があり、器をいくつ並べても楽しめる正六角形となっています。

理子さんのデザインは、丸と直線で描かれた華やかな図案を、重箱の内側に配するというものでした。漆黒の重箱を開けると、蓋の裏側にある飴色に輝やく図案がパッと目に飛び込んできます。

白檀塗りという蒔絵技法を用い、理子さんの特徴的な図案をしっとりと表現しています。この技法は長くお使いいただくうちに、輝きが増していくのが特徴です。料理をいただきながら、底に見えてくる図柄もお楽しみいただけます。
職人さんの技術や製法の特徴を熟知したうえでデザインをする理子さんらしく、重の内側やプレートは、蒔絵職人の刷毛を動かせる範囲に限界があるということまでを考慮し、その制約のなかでデザインしてくださいました。

プレートは、重箱とスタッキングができるように機能面も考慮。
重箱とプレートを組み合わせて食卓に並べたときに、理子さんの図案がテーブルにちりばめられるようなイメージです。現代的なおもてなしのスタイルが楽しめる漆のシリーズに仕上がったと思います。奇抜ではないけれど、これまでにない重箱が完成しました。

お客さまの声に耳を傾けながら我々の手でつくっていくことが一番の近道

──高橋理子さんの作品についてどんな印象をおもちですか?

理子さんのデザインは、日本的でありながらグローバルな表情も兼ね備えていると今回のプロジェクトを通して痛感しました。
世界から日本の文化や食が注目されているなかで、このシリーズは日本のみならず欧米の市場でも評価されるのではないかと思っています。

八田浩志さん

──今回の「ISETAN LIVING × HIROCOLEDGE」プロジェクトについて

伊勢丹リビングが発信する、ファッション性やデザイン性のこだわりを表現していくには、お客さまの声に耳を傾けながら我われの手でつくっていくことが一番の近道だと思っています。
もちろん今までにもアイテムごとにデザイナーとのコラボレーション企画はありましたが、カテゴリーを横断して企画、製品化が実現できたことは、私たちバイヤー、伊勢丹リビングからお客さまへの強いメッセージになると確信しています。そしてなによりも理子さんのデザインへのこだわり、産地の特徴や製造工程をきちんと理解したいという強い信念と、その魅力的な人間性に惹かれ、途中に起こるさまざまな問題にも、楽しく前向きに取り組むことができました。
今回の企画は自分にとっても貴重な経験で、今後の伊勢丹リビングにとっても、大変意義深いものになると思っています。

──3月4日(水)からいよいよ販売です

お客さまに喜んでいただけるよう、それぞれのアイテムを最高のものに仕上げるべく、最終的な準備をしています。
会期中はHIROCOLEDGEファンだけではなく、衣食住すべてにわたって関心の高い多くのお客さまに、それぞれのバイヤーと理子さんがこだわってつくった伊勢丹リビング×HIROCOLEDGEの世界観を体感していただきたいと思っております。ぜひ伊勢丹本館5階においでください。

八田バイヤーとのURUSHIについて(高橋理子)

八田バイヤーとのURUSHIについて(高橋理子)

八田バイヤーから、アイテムや表現技法についてのご提案がありましたので、私は朱か黒の色選択と柄のデザインをさせていただきました。

私も漆を扱った経験があり、何事もなくスムーズに制作していただけると考えていたのですが、思いもよらない問題が起こり、完成までにとても時間がかかりました。

本漆塗りであるだけでも時間のかかるものですが、柄の配置や大きさが技法の限界を超えていたようで、途中でデザインを変更しました。

道具が進化することで技術レベルも上がり、早くきれいに仕上がる時代となっても、そこに表現される柄が未経験のものであれば、どんなに経験値の高い職人の方でも予測できない問題が出てきます。
これは漆塗りに限らず、私のものづくりでは、しばしば起こります。
単純な丸と直線だけの柄ですが、シンプルな要素だからこそ、ごまかしがきかず、職人の腕の見せどころとなる。

この漆のお重にも、職人技が生きています。内から輝く白檀塗りの奥ゆかしい輝きをじっくりとご覧ください。

特集│伊勢丹と高橋理子が取り組む、2009年春の「オンリー・アイ」は、毎週金曜日公開更新!
           
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