「ISETAN LIVING×HIROCOLEDGE」 LIGHT│キャンドルのようなやさしい存在のライト
DESIGN / FEATURES
2015年4月8日

「ISETAN LIVING×HIROCOLEDGE」 LIGHT│キャンドルのようなやさしい存在のライト

「ISETAN LIVING×HIROCOLEDGE」
LIGHT│キャンドルのようなやさしい存在のライト

「ISETAN LIVING×HIROCOLEDGE」の特集第2回は、いよいよ商品作成編。
伊勢丹リビングの照明器具担当バイヤーの相馬英俊さんが、「パチカ」という特殊な紙素材を使用したテーブルライトを紹介する。

人物写真=川本史織文=伊勢丹 リビング営業部 照明器具 相馬英俊

デザインと技術の均衡がいかに大切かを実感

今回のオンリー・アイで、高橋理子さんとともにご提案させていただくのは、「パチカ」という特殊な紙素材を使用したテーブルライトです。
最新のペーパー素材を使用し、照明器具の安全面などの構造的な部分も考慮しながら、お客さまに手にとっていただきやすい価格のなかで、いかに楽しいデザインの商品を具現化するかということがポイントでした。

パチカをシェードに使用した照明は過去に一例があるのみで、今回取り組んだ全面に柄を微細に落とし込む意匠の、加工の難易度の高さは群を抜くものでした。
そのパチカの加工は、東京下町にある箔押し工場で行われました。広範囲に渡る意匠に圧力をかける際に、目には見えないほどの型のゆがみや、紙の厚みの差、機械の調子などが影響してしまいます。
それを、一枚の薄紙を鉄板の下に入れるというごくわずかな調整を繰り返すことで、均一に透過した模様が浮かび上がってくるのです。また、高橋さんのデザインは、繊細で美しいだけではなく、シェードを円筒形に保つべく、一定間隔で柄を配置するなどして、加工後のパチカのゆがみを最小限に抑える工夫がなされています。
デザインと技術の均衡がいかに大切かを実感しました。

台座部分は“へら絞り”という特殊な加工にこだわる

また、今回は光に色を加えるデザインにも取り組んでいただきました。
パチカに印刷加工ができる唯一の工場で、パチカを通して漏れてくる光の色の調整を何度も重ね、ほかのアイテムとのバランスに配慮した、「サクラ」「ピスタチオ」の二色が生まれました。

ライトのスタンド部分は、照明器具としての安定性を考慮したバランスや、安全装置を付けるなど、プロダクトとしても完成度の高い商品に仕上がりました。
一見、機械で簡単につくられているように見える精度の高い台座部分も、大阪の“へら絞り”職人が一つひとつ製作しているというこだわり。安全性を第一にしながら、そのフォルムや、パチカの可能性を引き出す意匠など、このものづくりに関わった方々のプロ意識を高く感じました。

照明器具としての安全性はもちろんのこと、パチカの特性を生かしたデザインを追求しながらも、バイヤーの立場としてこだわったことのひとつに販売価格があります。
お客さまに手にとっていただける価格でありながら、高橋さんのものづくりへのこだわりに対する価値もお伝えしたい。
ものづくりを実際にする方々に対して無理な提案であったかもしれませんが、お客さまに最適な価格のなかで、最大限の品質と最高に楽しいデザインのテーブルライトを生み出すことができました。
そして、高橋さんとだからこそ、今回のプロジェクトでクオリティを突き詰めたものづくりができ、日本のプロダクトを生み出せたのだと思います。

デザイナーとメーカー、バイヤーが一丸となったものづくり

──高橋理子さんの作品についてどんな印象をおもちですか

初めて理子さんのデザインを見たのは、飛騨高山の家具の展示会でした。

伝統的なデザインや和風な要素を取り入れた家具が多いなかで、エンツォ・マーリ氏と取り組んだ家具のシリーズはひときわ異彩を放っていました。

相馬英俊さん

ヨーロッパのデザイナーなのかと思わせるような、北欧的なテイストのなかに日本的なセンスも感じさせるものでした。色のトーンのバランスや、大小の文様のコントラスト、その文様のなかにさらに配された小さな文様とのバランスがすばらしいと感じました。

いろいろ調べていくうちに日本の女性であるということ、それからさまざまな創作活動を行っていること。和服や足袋のデザインもしているということがわかりました。

足袋は足の裏にデザインを施すなど、エスプリの利いた日本人的感覚が、京都の和食器のデザインのようで好きなアイテムの一つです。蓋を開けると裏側に紅葉が現れるとか、食べ終わると底に文字が現れるとかそんな日本的感覚が素敵です。

──今回の「ISETAN LIVING×HIROCOLEDGE」プロジェクトについて

これほどまでに多岐にわたっての取り組みは初めての企画で、デザイナーとメーカー、バイヤーが一丸となってものづくりができたことは、大変に意義のあることだと思いました。
これまでにない取り組みであり、お客さまのもっとも近い位置にいるバイヤー(土日は店頭で販売しております)が、お客さまに納得していただける商品づくりに深く関わったことの意味は大変大きいと感じています。
また今回は「自分の気に入ったものに囲まれて暮らしたい」「良いものを長く使いたい」というテーマにもとづいての取り組みで、すべてのアイテムを全部買ってもらいたいということよりも、『ひとつでも気に入ったものに出会って欲しい』と思っています。

──3月4日(水)からいよいよ販売です

すべてのバイヤーが、考えられるすべてを織り込んでつくった一つ一つの作品です。ぜひ、お客さまにも使っていただいてその品質を感じてもらいたいですね。

相馬バイヤーとの照明器具について(高橋理子)

相馬バイヤーとの照明器具について(高橋理子)

加熱型押しすることで透過し、まるで障子のようにやわらかな光を通すパチカを使用し、キャンドルのような優しい存在のライトを目指しました。

パチカは一枚の紙のなかに、透過した部分とそのままの部分との素材感に大きな差が出るところにも魅力があり、点灯時と消灯時の表情の違いも見所の一つです。

照明器具として、できるだけ光が透過する面積を多くしたいと考えていましたが、銅版で加圧されたパルプの逃げ場が必要なため、加工面積には限界がありました。これほど大きな面積に加工を施した前例がないなかでの挑戦でしたが、デザインと加工技術のバランスをとりながら着地点を探り、実現することができました。

特集│伊勢丹と高橋理子が取り組む、2009年春の「オンリー・アイ」は、毎週金曜日公開更新!
           
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