世界最大の家電見本市 CES 2012 現地レポート
DESIGN / FEATURES
2015年1月8日

世界最大の家電見本市 CES 2012 現地レポート

今年の家電トレンドを占う

世界最大の家電見本市

CES 2012 現地レポート

家電およびITガジェット、ソフトウエア関連の世界最大規模の展示会「International Consumer Electronics Show(CES)」。業界では年始の風物詩となっているこのイベントが、今年も米ラスベガスで開催された。スタートから44年を数える歴史あるイベントのCESだが、今回は3100以上の出展企業、15万3000人の来場者数を達成。史上最大のスケールで1月10日から13日までの4日間、ラスベガスをにぎわせた。

Text & Photos by UEDA Haruto

やはり強い、韓国勢のテレビ

CESを見れば、その年の家電およびIT業界の方向性がわかるというだけあって、各社とも力の入った展示が目白押し。家電で最注目となったのは、世界のテレビ市場を牽引する韓国の2大メーカー、サムスン電子とLGエレクトロニクスの新テレビだ。

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コンテンツの充実度がカギを握る、3Dテレビ市場。

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LGのスマートテレビ。4~5mmという薄さは驚異的だ。

ここ数年は、テレビの大型化、薄型化、映像の微細化技術などが一気に進んできたが、過当競争による低価格化にも歯止めがかからず、テレビメーカーの収益を圧迫してきた。ここに一石を投じたのがサムスンとLGの発表した有機ELテレビである。従来の液晶テレビよりも薄く、消費電力が少なく、映像も美しいという次世代のテレビだ。もちろんディスプレイに有機ELを使った機器はこれまで数多く世に出ている。ただしそれはスマートフォンやタブレット端末など小型機器が中心。有機ELを使った大型機器は製造が難しく、コスト的に現実的でないとされてきた。かつてソニーが20型の有機ELテレビを鳴り物入りで発売しながら、1年ほどでやむなく撤退したのは記憶に新しいところだ。

3Dが伸び悩みながらも、さまざまな側面で着実に進化

2社の発表した有機ELテレビはともに55型。わずか4~5ミリという薄さの本体に、先進の機能が凝縮されている。なかでもユニークなのは、リモコンでなく身振り手振りでテレビを操作できる「ジェスチャーコントロール」機能。音量の上げ下げやチャンネル切り替えといった基本機能だけでなく、ネット閲覧や動画コンテンツの呼び出し、さらにはマイクロソフトのゲーム機「XBOX360」の「キネクト」のようなエンターテイメント機能もくわわるとか。圧倒的な薄さを活かしたデザインもブラッシュアップして、40万円ほどでお目見えする予定だ。早ければ今年後半にも発売するという。

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フルハイビジョンの4倍の解像度を誇る「4K」。

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ソニーの「Crystal LEDディスプレイ」。

一方の日本勢はといえば、東芝やソニーがグラスレス(専用メガネがいらない)3Dテレビの新作や4K(フルハイビジョンの4倍の解像度を表示する)対応テレビを参考展示。こちらも市場投入間近とされており、完成度の高いものに仕上がっていた。ただ、従来のテレビ番組や動画コンテンツを美麗に表示する有機ELテレビに対し、3Dテレビや4Kテレビはその性能の発揮に専用コンテンツが必須という呪縛がつきまとう。鳴り物入りで発売された3Dテレビが、コンテンツ不足で(それ以外の要因もあるが)鳴かず飛ばずな状況なのは周知の通りだ。

このほかソニーが、600万個のLEDを用いて液晶テレビをさらに進化させた「Crystal LEDディスプレイ」を公開した。なお日本勢では唯一、パナソニックがCES会期中に大型有機ELテレビ発売を検討中であることを明言している。ただし発売は韓国勢よりもだいぶ後になりそうだ。

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CES 2012 現地レポート

タブレット端末は、サイズもさまざまに

テレビ以外では、相変わらず堅調に推移するスマートフォン、昨年ブレイクの兆しを見せたタブレット端末、そして米インテルが社運をかけて注力するウルトラブックの展示が数多く見られた。スマートフォンで最大規模の展示がなされていたのはサムスン電子の「Galaxy Note」。5.3型の有機ELディスプレイを備え、手書き入力に対応するモデルだ。スマートフォンとしては大型で、どちらかというとタブレット端末に近い。今後スマートフォンとタブレット端末の垣根がなくなっていくであろう未来のかたちを垣間見させてくれているのかもしれない。

またノキアから、Windows Phone(マイクロソフトのアーキテクチャを使ったスマートフォン)Lumiaシリーズが本格投入されることも発表されたことで、グーグルのアンドロイド端末VSアップルのiPhoneという図式で語られることの多かったスマートフォン市場に、一石を投じる動きも見えてきた。

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サムスン電子の「Galaxy Note」。

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ノキアからは、Windows Phone Lumiaシリーズが本格投入。

そしてタブレット端末は、50を超える新機種がCES会場内でお披露目された。5型台から10型を超える画面サイズのものまで、機種のバリエーションが幅広くなったのがひとつのトピックに。また、タブレット端末もアンドロイドVSアップルのiPadという勢力図に、今年登場のマイクロソフトの次期OS「Windows 8」をベースにした端末がくわわることが明らかになった。スマートフォンもタブレット端末も、マイクロソフトの本格参戦により今年は大きな動きがありそうだ。CESにアップルは出展していないが、iPadの次期モデル「iPad3」は今年前半の登場が噂されている。

「ウルトラブック」がPC市場の起爆剤となるか

スマートフォンとタブレット端末の隆盛により、注目度が一段低くなってしまったパソコン市場だが、今年は「ウルトラブック」という一大ジャンルがそのプレゼンスを示すことになりそう。ウルトラブックとは、昨年からインテルが注力しているノートパソコンの新ジャンルで、「薄型軽量ノート」を再定義したものだ。具体的には厚みが20mm以下、重さが1.4kg以下(13.3型モデル)、内蔵ストレージは64GB以上のSSD、そして価格は1000米ドル以下、というもの。「Windows OS搭載のMacbook Air」と言ったほうがわかりやすいかもしれない。

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サムスン電子のウルトラブック。

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かねてより予告されていたフジフイルムの小型一眼カメラ。

高嶺の花だった薄型軽量ノートパソコンを、スペックは向上させながらも安価に提供するのだ。しかもインテルによれば、スペックの向上と価格の引き下げは継続的に実施していくとのこと。スマートフォン、タブレット端末、そしてウルトラブックと、今年はモバイルライフがさらに充実していくのはまちがいないだろう。

デジタルカメラ関連では、レンズ交換式のミラーレスタイプが引き続き業界の牽引役だ。ソニーやパナソニックはもちろん、カメラ専業メーカーとしては初の参入を果たしたニコン、そしてCES開幕に合わせ新製品「FUJIFILM X-Pro 1」を発表した富士フイルムまで、どのブースにも試用機が用意され、来場者は心ゆくまでテスト撮影にトライしていた。大手メーカーで参入を明言していないのは、キヤノンを残すのみとなった。キヤノンブースの担当者にコメントを求めるもノーコメントで一貫。とはいえ、レンズ交換式デジカメ市場の過半数を占める勢いのミラーレス市場に参入しない手はない。開発自体には着手していると聞く。あとはスペックとタイミングを見計らっているだけなのではないだろうか。

           
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