ORGAN|オルガン
Design
2015年4月22日

ORGAN|オルガン

ORGAN|オルガン
「ENOUGHな暮らし」を考えるオーナーの気持ち

ちまたにあふれるさまざまなモノやデザイン。その本質について考えたり、背景に思いをはせることはデザインををより深く知るための楽しみのひとつだろう。今回は福岡で暮らしのなかからそんなデザインとの関わり方を提案するショップを紹介。

写真と文=加藤 孝司

オルガンという、音楽のようにデザインを奏でる店

福岡市内から少し離れた街の駅前にある、おもむきのある一棟のビル。建物のエントランスになるガラス扉には小さな字で「organ」という文字が描いてある。ショップがある3階までの階段をゆっくりとのぼり、その途中にふと思った。初めて訪れるお店に一歩足を踏み入れる瞬間は、どの街にあるどんなお店をたずねても少しばかりの緊張を感じる。あたらしい出会いと新鮮な驚き。だからというわけではないが、そのドアの向こうがわにあるモノや人にはいつも敬意に似た気持ちをいだいている。

いまでは北欧やアメリカのヴィンテージ家具や雑貨を扱うお店として知られるオルガンは、それらのモノを扱いながらもじつは人の生活そのものを扱う、自由な空気の流れるお店だ。

さまざまな国でうまれた異なるかたちを守備範囲広く取り扱っていながら、そこに共通しているのはデザインという配慮が行き渡った、美しくも使い勝手がよいものを、ということに集約しているような気がした。

人が使う道具である器や椅子のあり方の本来のありようは、人間が必要に応じてつくってきた道具の歴史のあらわれでもある。その人なりの生き方とその人なりの自由のあり方。そこには「ENOUGHな暮らし」を考えるオルガンのオーナーの気持ちのあらわれがあるような気がしてならない。

2008年4月に発表された、築30年経つマンションの一室からスタートしたオルガンの新しいプロジェクト「ENOUGH -土足で暮らす」は、めまぐるしく変化するインテリアスタイルや情報に左右されない、ありのままの暮らしのあり方をありのままに見せる、オルガンからのひとつのライフスタイルの提案だった。

なにも土足だといってそれはかたくなに靴を脱ぐな、ということではない。ひとつの固有のスタイルを主張しそれに固執することは、それ自体自由なスタイルの提案ではなく、ある概念に縛られる不自由さにつながる。だから靴をはく=土足とは、靴のまま生活をする、裸足で暮らす、室内履きで暮らす、という多様な暮らし方の提案という解釈にもつながる。それは流行や、日々変化するキブンとも少しちがう、一本すじの通った清いこころざしのようなものを感じることができる暮らし方プロジェクトでもある。

デザインはかたちへの憧れにはじまって、機能に集約するものだ。それは使う人の心もちに立った丁寧な配慮のようなものだろう。オルガンというお店にある、さまざまなデザインをみながら、デザインというものの、そんな根源に触れることができる。

<br /><br /><h1>ORGAN|オルガン<br><br>「ENOUGHな暮らし」を考えるオーナーの気持ち</h1><br /><p>

ORGAN|オルガン
福岡市南区大橋1-14-5 Take1ビル4F
Tel. 092-512-5967
営業時間|13:00~19:00
定休日|月・火曜
http://organ-online.com/

           
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