BOUUN|望雲
Design
2015年4月22日

BOUUN|望雲

BOUUN|望雲
人、もの、文化といったさまざま角度からのアプローチ

日々の暮らしを彩る、さまざまな器や道具、ときを経て深みをます人の暮らしの知恵。丁寧な暮らしのなかから生まれたモノたちには、機能というものがもつ美しさが備わっています。今回は福岡からそんな暮らしのなかにある豊かさを教えてくれるショップを紹介。

文=加藤孝司

望雲という価値基準によってふるいにかけられたモノたち

昔ながらの親しい友人の家を訪れるときのように、玄関のたたきで靴を脱ぐお店のスタイル。少しやけた畳の風合いと、やわらいひかりが射し込む窓辺の景色。その空間全体にながれているのは、ゆっくりとそして丁寧に日々を生きていたい、という静かな暮らしのたたずまいだ。

7年ほどまえに、古いものやオリジナルのモノを、そのときどきで空間を移動しつつ展示するという、ユニークな「移動ギャラリー」というスタイルではじまった望雲。そのお店自体のありかたや扱うものをふくめ、既成のギャラリーや古道具屋とはおもむきのことなる望雲のスタイルは、そんな活動のなかではぐくまれてきたものだろう。

そこは自由な空気の流れるユニークな人びとやものが集まる空間であり、日々のなにげない生活の奥の深さを感じることのできる出会いの場所としても機能する。生活そのものにスタイルがあると、それ自体がひとつの機能となり「形」をなし、意味をもつようになる。

いまにも言葉を語りだしそうなやきものや古道具、しつらいや日々の礼節のなかから生まれてきたオリジナルの雑貨たち。望雲という価値基準によってふるいにかけられ、その空間に並べられたモノたちからは、不思議なバランスを保ちながら日常に色をそえる、慎ましやかな主張を感じることができるだろう。

萩焼の作家・濱中史朗さんのやきもの、その濱中さんが現在代表を務める大屋窯の器。濱中さんの妹さんで彫金作家である濱中孝子さんがつくるシルバーアクセサリー。たびたび個展も開催しといる濱中史朗さんのやきものは望雲がもっともリコメンドするものだ。濱中さんがつくる高温でやかれる磁器というやきものには、静けさのなかに生命の躍動をたたえた力強さがある。

砂糖の一種である「和三盆」でつくったオリジナルのお菓子、そんな和菓子をのせたり、ふところに入れてお手ふきとしても使えるお懐紙や懐紙袋、古いらくがんの型を使用してつくるやきものや、染めの味わい深い麻布、錆をいかしたオブジェなど。

月一回開催の同じ九州の大牟田にあるカフェ「nei」による移動喫茶といった、人と人とのあたたかいつながりを感じる望雲らしいオリジナルの企画。ギャラリーというスタイルを保ちながら5年前から現在の場所に居を定め、通常はショップとして機能しつつ、さまざまな人とものとの出会いのなかから企画展を開催。

東京の落語家、古今亭菊之丞師匠の落語会を催すなど、人、もの、文化といったさまざま角度からのアプローチはますます深みを増している。そこから首尾一貫して伝わってくるのは、心地よい空間ともてなしのあたたかいこころづかいだ。

性別や年齢を問わない人と人とのかかわりが織りなす、いきいきとした望雲のなにげない日常のいとなみは、物の豊かにそろった東京から見ても、じつにうらやましい店に思えた。

BOUUN|望雲<br><br>人、もの、文化といったさまざま角度からのアプローチ

BOUUN|望雲
福岡県福岡市中央区渡辺通2-3-27 待鳥ビル507
Tel. 092-733-1135
営業時間|13:00~19:00
定休日|火・水曜
http://bouun.com
http://blog.goo.ne.jp/bouun/(日記)

           
Photo Gallery