36|サブロ
Design
2015年4月22日

36|サブロ

36|サブロ
地域のひとに親しまれる、町の文房具屋

吉祥寺の裏道にある古い雑居ビル。小ぶりな間口の小さな店がいくつも軒を連ねるその建物の1階に、「36(サブロ)」という文房具屋がある。

文=加藤孝司

古くからある手作業の技術を感じさせる懐かしい文房具

幼いころの思い出はセビア色の記憶とともにいまも心にあたたかい気持ちと、ほろにがく甘ずっぱい気持ちを残している。「36(サブロ)」は吉祥寺に店を構える小さな文房具屋だ。子どものころ、色とりどりの色鉛筆やボールペン、ファンシーなイラストが描かれたノートや雑貨が並べられた文房具屋の棚は、いつみても宝箱のように感じられたものだ。

古くからある手作業の技術を感じさせる懐かしい文房具たち。毎日つかうものだからこそ、いつもそばに置いておきたいあたたかさにみちたものがほしい。日本ではあまりみかけない、発色の鮮やかなカラーグラシン紙を使った包装紙や封筒は、オリジナルブランドでもある「水縞(mizushima)」のもの。水縞とは水玉模様が好きなオーナーの友人であるデザイナーと、縞模様好きのサブロのオーナーが手がける、現在では全国展開もしている素朴ながら味わいぶかい文房具ブランドだ。

ちいさな店内にはところ狭しとかわいくて懐かしく味わいのあるアイテムが並べられている。大人になったいま、それらが新鮮に感じられるのは、単純なノスタルジーではなく、それらが備えたモノとしての偽りのなさが、純粋さといった普遍的なものにつながり、あわただしい日々の暮らしのなかで置き忘れてきてしまった大切ななにかを思い出させてくれるからではないだろうか。

店の名前は文房具屋を営んでいたオーナーのおじいさんの名前に由来する。店内に飾られている額に納められた小さな写真には、家族の大切な思い出がたくさんつまっている。そこにあるのは個人的な家族の思い出であると同時に、町の文房具屋として地域に親しまれ、そこに暮らすすべての人びとの記憶に結びついてきた、忘れてはいけない儚くてかけがえのない特別な思い出だろう。

ある個人的な大切な記憶がこの店を訪れるすべての人の思い出につながり、こころにあたたかな余韻を残す、町の小さな文房具屋だ。

36|サブロ<br><br>地域のひとに親しまれる、町の文房具屋

36(サブロ)

東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3 ジャルダン吉祥寺107
営業時間|12:00~20:00
定休日|火曜
Tel. 0422-21-8118
http://www.sublo.net/

           
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