DIGAWEL|ディガウェル
DIGAWEL|ディガウェル
存在そのものが、カルチャーの発信源
日々の当たり前な、なにげない「纏(まと)う」という日常のしぐさは、ときに思いもしなかった新鮮な驚きを与えてくれる。
着る人の心もちに作用する、そんな服の在り方をこえた出会いを提供してくれるショップ「DIGAWEL(ディガウェル)」を紹介する。
文=加藤孝司
ディガウェルという存在が伝えるもの
人間がまとい、寒さや暑さから身を守るための衣服はいつの時代から、虚飾にまみれてしまったのだろうか?
本来衣服はそれに袖を通す者だけのために存在し、それこそが固有のひとつの人格をあらわすパーソナルなものだった。DIGAWEL(ディガウェル)は2006年3月に上目黒にオープンしたオリジナルウェアを中心に扱うショップだ。
それはテーラーなどというものとは少し異なる、もっと身近な、生活のなかにだけある人間くさいものだ。同時にカウンターカルチャーに近い、強力なイデオロギーのにおいを感じさせる刺激的なものでもある。
ディガウェルの白いシャツにはひとつの人格が備わっているように見える。糸が紡がれ、織られて布になり、そしてかたちを整えられて、シャツになる。そんな当たり前の素朴な過程のなかにこそ、ひとが心を込めて大切にしうるなにものかが潜んでいる。それは品格と言い直すことも可能な、それが置かれる環境に対しての慎ましさとみずみずしい感性を兼ね備えた稀有なものだ。
ディガウェルという存在がカルチャーの発信源となりうることは、ディガウェルという存在がそのアイデンティティとともに関わった、オフ・コマーシャルと呼ばれる公開しないことを前提に制作されたCMが証明している。そもそもオンエアを前提としないコマーシャルなんて前代未聞ではないだろうか?
CMディレクターである今村直樹さんが自らが撮りたいものを自発的に撮るというその考えは、60年代後半イタリアを中心に巻き起こったラディカルなデザイン思想を思い起こさせる、ものを生み出す人間にとっての根源的なものに違いない。
そんなコンセプトのもとに撮り上げられたコマーシャルは、そんなことがいまの時代に可能なのか、と思わせると同時に、いまの時代だからこそできたのだ、という確かな実感を伴った人と人とのつながりが感じられる出色のCMとなった。店内にはシャツのほかに、オリジナリティある革アイテムやコットンの靴下なども並ぶ。
60年代後半から70年代にかけてフラワー・ムーブメント世代のミュージシャンを撮影したことで知られるジム・マーシャルが撮影したジム・モリソンの写真、またモダニズムが生んだインダストリアルデザインを代表するメーカー、ドイツのブラウン社の機能美あふれるヴィンテージやアルミニウムの質感がさえるリモアのトランクなど、モノがもつ質感と人の生きざまが感じられるセレクトの良さもディガウェルという店の魅力のひとつだ。
シャツであれ、ステーショナリーであれ、音楽であれ、この場所で表現されるすべてはディガウェルというフィルターを通すことでこの場所での存在価値を有する。だからこそあらゆる既成の枠組みにとらわれることのないディガウェルというショップの存在は自由であるといえる。
「服にまつわる空気をどうデザインに置きかえることができるのか?」というデザイナーとしてのまっすぐな姿勢は、人の気持ちをいかにデザインに結びつけるか、ということにもつながる。ディガウェルはディガウェルのスタンスのままより多くの人にその考えを伝えるために、いまよりもっと先を見据えている。そんなディガウェルという、ものをつくる人間としてのアイデンティティの探求はまだはじまったばかりだ。
DIGAWEL/ディガウェル
東京都目黒区上目黒2-30-7 石崎足立ビル1階
Tel. 03-5722-3392
営業時間|13:00~21:00
定休日|年末年始
http://www.digawel.com/