モノは「所有」と「シェア」の時代に!?
アラサー・アラフォーの女性を中心に広がる借り暮らし志向
“「所有」と「シェア」をバランスよく”があたらしい!
「お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」。漫画『ドラえもん』のなかでジャイアンが発した、あまりにも有名な(そして印象的な)セリフだ。人のモノまで自分のモノにしてしまうジャイアンは特殊な例としても、モノの「所有」をはっきりさせる社会では、こうしたモノへの“線引き”が重要な役割をになう。だが近年、こうした線引きをせずに、モノを借りたり、シェアしたりしながら、うまく生活に取り入れている人が増えている――リサーチ・アンド・ディベロプメントが発表した調査結果で明らかになった。
Text by TANAKA Junko (OPENERS)Photographs by Hituji Real Estate (taken at YOGA ULUKA)Data courtesy of Research and Development, Inc
モノを持たないライフスタイル=“借り暮らし”って?
リサーチ・アンド・ディベロプメントは2011年10月、首都圏に住む18才~74才の一般生活者3000人を対象に「レンタルやシェアにかんする意識調査」を実施した。この意識調査は、生活者の意識・行動の変化を観測するため、同社が1982年から毎年実施している生活総合調査「CORE」の一環としておこなわれたもの。
今回の意識調査では、モノを所有するか借りるか、その「どちらが得か比較して決める」という意見が全体の6割にのぼるなど、必ずしもモノを「所有」することにはこだわらない生活者の姿が浮き彫りとなった。こうした考えは男性より女性に多く、特に30~40代の “アラサー・アラフォー世代”の女性では、じつに3人に2人以上が「必要なときに必要なモノを借りて使う生活」を好意的に受け止めている。モノを持たないライフスタイル、いわゆる“借り暮らし”に対してポジティブなイメージが広がっているようだ。
調査結果を詳しく見ていくと、必要なときに借りて使いたいモノとして1位にあがったのは「音楽CDやビデオ」。そのあとにキャンプ用品などの「レジャー用品」がつづく。女性に限っていえば、「介護用品」やベビーカーなどの「子供用品」といった、一時的に必要なものをあげる人が多く、合理的で無駄のない生活への志向が高まっている様子をうかがい知ることができる。
この調査結果から見えてくるのは、ともすると「貧乏くさい」とか「お金がないから仕方がない」といったマイナスのイメージでとらえられがちだった、“モノを借りて使う生活”に対する生活者の意識の変化だ。
なぜいま、人びとの心が“モノを持たない生活”に向かっているのか。ビジネス・コンサルタントのレイチェル・ボッツマンと、起業家のルー・ロジャースは、著書「シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」(2010年12月16日発売、日本放送出版協会)のなかで、これからは「なにを持っているかではなく、なにに『アクセス』できるのか、どう『シェア』するかが、あなたを定義する時代になる」と高らかに宣言した。以下、著書のなかから一部を抜粋して紹介する。
「私たちはこの50年ほど続いた消費の『トランス』状態から今ようやく目覚めつつある。この変化の根底にあるのは、相互に結び付いた二つの現象だ。ひとつは価値観の転換。経済成長は頭打ちなのに、リソースは無限であるかのように消費しつづけていてはうまくいくはずがないという消費者意識の広がりだ。だからこそ、人々は『買ったもの』をより有効に活用し、さらに重要なことに、『買わないもの』からも何かを得ようとしている。(中略)今、私たちは『自分にどんな得があるか』を追い求めることから『みんなにとってどんな得になるか』を考えようとするその大きな転換点にいる」
今回の調査結果は、まさにこうした意識の変化が、ここ日本でも少しずつ起きはじめていることを示している。「所有」と「シェア」のどちらか、という二者択一ではなく、自分で「所有」したいモノ、そして「シェア」したいモノ、それぞれについての自分の考えや気持ちを整理して、選択していく。そんな「所有」と「シェア」をバランスよく組み合わせたライフスタイルがもうはじまっているのだ。
「レンタルやシェアにかんする意識調査」
調査方法|訪問留置調査
調査地域|首都圏40km圏
調査期間|2011年10月1日~31日
有効回答者数|3000人
回答の属性|18~29才(21.0%)、30~39才(22.3%)、40~49才(16.6%)、50~59才(18.2%)、60~69才(16.0%)、70~74才(5.9%)
男性(50.9%)、女性(49.1%)
リサーチ・アンド・ディベロプメント
Tel. 03-5642-7711(代表)