さる山|猿山 修 「私的なプロダクツ」展 開催
時計は再び動きはじめ、今度は私たちが動かされる
「私的なプロダクツ」展 開催
古陶磁をあつかう『さる山』の店主のかたわら、グラフィック、プロダクト、空間など幅広い分野でデザインセンスを発揮する猿山 修氏。コツコツとその響きが心地よい1960年代から80年代の機械式時計を再創作した時計をはじめ、未発表のテープカッター、名刺入れなどの机上グッズがならぶ「私的なプロダクツ」展が、青山の『ギャルリーワッツ』にて開催される。
Text by OPENERS
オトナゴコロくすぐる数々を、ゆっくりと愛でる
今回の「私的なプロダクツ」展には、写真の掛け時計をはじめ、辻野 剛さんのワイングラス、金森正起さんの錫杯、テープカッター、名刺入れ、香立て、濱中史朗さんのティーキャンドル、香炉、シェリー杯、ワイン杯、仁平幸春さん染色の風呂敷をはじめ、自在鉤(じざいかぎ/囲炉裏やかまどの上に吊し、それにかけた鍋などの高さを自由に上げ下げできる道具)や自在式照明器具、さらにCD(ギュメディスク)、CDラック、シャツ(アーバンリサーチ)、食器類などが展示される。
『Gallery Yamamoto』の山本千夏さんの推薦文を紹介しよう。
personal products
その掛け時計には文字盤がない。丸いアルミニウムの盤にほっそりとした針。どちらも素っ気ない銀色。元にもどしたのか、先に進めたのか、手をくわえたというより引いたといったらよいだろうか。必要であると思っていた幾つもの要素は、じつは不要であったと知らされる。振り子の音がここちよい。目に耳に時を刻む。
もとは1960年代から80年代にかけてつくられた機械式柱時計であったらしい。ゼンマイ式のそれは、クオーツ式にとって代わられるまで、日本の一般家庭で当たり前に使われていた。そしていま、アンティークとしての価値が認められることはほとんどない。しかしその軽妙な音を伴って動く機械の精度の高さ、美しさに、猿山 修は惹かれた。そのひとが心動かされ、時計は再び動きはじめ、今度は私たちが動かされることになる。
猿山 修のpersonal productsが魅力的なのは、それが文字どおり“私的なもの”であるからではないだろうか。そのひとが実際にひとに出会い、ものに出会い、そこになにかを見て、なにかをつくること。親密なやりとり。その答え。その背景にはそのひとの暮らしが、偏っているといっても過言ではないそのひとの好みが、色濃く反映されている。私的であることを徹底することは、普遍につうずる数少ない方法のひとつであることをそのひとは知っている。
その時計は淡い一色に塗られた箱に入れられ、ガラスの板で覆われている。時間は過去から未来へ一定方向に流れているようであるが、この箱の中には昔といまが平気な顔で共存している。
「私的なプロダクツ」展
会期|2011年1月31日(月)~2月5日(土)
時間|12:00~19:00(最終日は17:00まで)会期中無休
主催・会場|ギャルリーワッツ
港区南青山5-4-44ラポール南青山103
Tel. 03-3499-2662
http://www.wa2.jp
協力|東屋、東青山、Gallery Yamamoto