ヴェイロンの後継は最高出力1500ps!|Bugatti
Bugatti Chiron |ブガッティ シロン
ヴェイロンの後継は最高出力1500ps!
ブガッティは、生産が終了した「ヴェイロン」の後継モデルとなる「シロン」を、ジュネーブ モーターショーの前夜に行なわれたフォルクスワーゲン グループのイベントでワールドプレミアし、続くジュネーブ ショーの会場で一般公開した。注目のパワーユニットは最高出力1,500psを発生するW16クワッドターボ。0-100km/hは2.5秒、最高速度は420km/hに達する史上最強のロードカーである。
Text by SAKURAI Kenichi
価格も生産台数もヴェイロンの2倍
全体のシルエットや、フロントグリル、ヘッドライト、テールライト、そしてインテリアなどのモチーフは、昨年のフランクフルト モーターショーで発表されたコンセプトカー「ビジョン グランツーリスモ コンセプト」がルーツであることは明らかだ。
もちろんそのビジュアルキーは、元を正せば先代モデルとなる(正しくは別車種だが)ヴェイロンの流れを汲むものでもある。「ビジョン グランツーリスモ コンセプト」はプレイステーション用のソフト「グランツーリスモ6」に登場するヴァーチェルマシンであり、発表された車両はそれを元に造られた原寸サイズの単なるコンセプトカーではなく、この「シロン」のためのプレビューだったのだ。
シロンというネーミングは、かつてブガッティで活躍したレーシングドライバー、ルイ・シロンに由来するものだ。モナコ生まれというルイ・シロンは、1928年から1933年までのあいだにブガッティの「タイプ35」や「タイプ51」で合計10回のグランプリ優勝を果たしたと記録にはある。新生ブガッティの立ち上げ直後、ジウジアーロがデザインした同名の「EB18/3シロン」を発表したが、両車に直接のつながりはない。
この伝説のドライバーの名前を車名に用いるというのは、先代のヴェイロンも同様であった。ちなみに“ヴェイロン”は、1939年のル・マン24時間レースを制したドライバー、ピエール・ヴェイロンから命名されたものである。超弩級1,001psの最高出力を持つオーバー400km/hのハイパフォーマンスマシンとして、数々の記録を塗り替えたヴェイロンは、オープン版の最終モデル「エットーレ・ブガッティ」をもっておよそ10年の歴史に幕を閉じた。総生産台数はクーペ、オープン合わせて450台。
その第2世代モデルともいうべきシロンは、500台の生産を予定している。価格は240万ユーロ(邦貨約2億9,600万円)と発表され、これはヴェイロンの2倍以上のプライスになる。
発表された、クワッドターボの8リッターW16エンジン、カーボンモノコックタブのボディに、こちらも同じカーボン製となるアウタースキンを組み合わせるという基本構成はヴェイロンそのままだが、ボディは(シルエットは似ているのだが)完全に一新されており、前作ヴェイロンから流用されているものは無いに等しいという。
ボディサイズは全長4,544×全幅2,038×全高1,212mm、ホイールベースは2,711mmだ。これは全長4,462×全幅1,998×全高1,204mm、ホイールベースは2,710mmの「ヴェイロン」よりも全セクションで拡大されている。車両重量は1,995kgで、107kg増となった。
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スピードメーターは500km/hスケール
伝統的な馬蹄形のフロントグリル、そこに備わるブガッティのエンブレムは、ひとめでヴェイロンの後継モデルであると示す意匠。これに特徴的な片側4連のLEDヘッドライトやブガッティ「タイプ57」のドアをモチーフにした大きな楕円のサイドエアインテーク、こちらもタイプ57にルーツを持つ丸みを帯びたリアフェンダー、さらにはビジョン グランツーリスモ コンセプトで提案された水平基調のテールライトのデザインなどが加わり、新世代を表現。ヴェイロンに続く、どこからみてもブガッティとしか呼べないアピアランスを形成している。
エンジンは、前述のとおりクワッドターボの8リッターW16ユニット。正確な排気量は7,993ccで、これはヴェイロンと同じである。唯一ヴェイロンからのキャリーオーバーがこのエンジンと7段DSG(デュアルクラッチ)のトランスミッションだが、こちらはシロンへの搭載にあたり大幅な改良を施しているという。ターボチャージャーやインタークーラーは大型化され、カーボン製のインテークマニホールドやチタン製のエキゾーストシステムも新設計された。
最高出力は1,001ps/6,000rpmのヴェイロンに対して1,500ps/6,750rpmと500psアップ。最大トルクは、163.2kgm/2,000-6,000rpmと、こちらもヴェイロンの127.5kgm/2,200-5,500rpmに対して35.7kgm向上した。パワーウエイトレシオは1.33kg/psと、常識外の数値がスペックシートには並ぶ。
常識外の数値ついでにいえば、0-100km/hは2.5秒、0-200km/hが6.5秒、そして0-300km/hが13.6秒だ。最高速度は2段階に制限され、トップスピードモードでは420km/h、ハンドリングモードでは380km/hになる。ちなみにヴェイロンでは、0-100km/hは2.5秒、0-200km/hが7.3秒、そして0-300km/hが16.7秒、最高速度は407km/hだったから、この数値の差が10年分の進化ということになる。もろん、その比較の際は、車重が107kg増えたことを勘案しなければならない。
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世界最強の市販スーパーカー
ヴェイロンの発展型ともいえる新設計のシャシーは、前後共にダブルウィッシュボーン式のサスペンションを採用。駆動方式は4WDを踏襲した。乗り心地とハンドリングを両立させる足回りには、車高とダンピングスピードを任意に調整可能なアダプティブサスペンションを搭載し、新設計の電動パワーステアリングも採用する。
これらは4WDシステムと統合制御され、リフト/オート/アウトバーン/ハンドリング/トップスピードという5つのモードが設定可能だ。リフトモードでは段差超えや駐車場のスロープなどでアプローチを容易にするために車高が上げられる。オート、アウトバーン、ハンドリングの各モードでは最高速度が380km/hに制限され、トップスピードモードでは420km/hの世界を披露するが、そのためにはヴェイロン同様「スピードキー」が必要になる。
400km/hオーバーのトップスピードを支えるタイヤは、ヴェイロンと同様にミシュラン製。フロントが285/30ZR20、リアが355/25ZR21というサイズだ。ブレーキは、フロントが420mm、リアが400mm径のカーボンセラミックディスクにフロント8ポッド、リア6ポットキャリパーを組み合わせた。100-0km/hが31.3m、200-0km/hが125m、そして300-0km/hが275mというストッピングパフォーマンスをもたらす。
先代のヴェイロンは、標準モデルが407km/hのトップスピードを標榜し、「グランスポール」「スーパースポール」と進化。スーパースポールで更新された最高速度はカタログデータでこそ415km/hだったが、ギネス世界最高速度記録にチャレンジし434.211km/hの記録を樹立した。
いささか気が早いとは思うが、シロンも同様に420km/hのスペックを向上させるハイパフォーマンスバージョンがいずれ登場するだろう。その時はこちらも同様に最高速度記録にチャレンジし、市販車最速の記録を自らの手で塗り替えてくれると期待せずにはいられない。ブガッティのカタログ数値が単なる見せかけでなく、ブガッティこそが世界最強の市販スーパーカーであることは誰もが知る事実なのだから。
Bugatti Chiron|ブガッティ シロン
ボディサイズ|全長 4,544 × 全幅 2,038 × 全高1,212 mm
ホイールベース|2,711 mm
重量|1,995 kg
エンジン|7,993 cc W型16気筒 クワッドターボ
最高出力| 1,103 kW(1,500 ps)/ 6,700 rpm
最大トルク|1,600 Nm/ 2,000-6,000 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(DSG)
駆動方式|4WD
ブレーキ 前|φ420mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|φ400mm ベンチレーテッドディスク
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン式 / ダブルウィッシュボーン式
タイヤ 前/後|285/30R20 / 355/25R21
0-100km/h加速|2.5 秒以下
0-200km/h加速|6.5 秒以下
0-300km/h加速|13.6 秒以下
100-0km/h減速|31.3 メートル
200-0km/h減速|125 メートル
300-0km/h減速|275 メートル
最高速度|420 km/h(トップスピードモード以外は380 km/h)
価格|240万ユーロ(およそ2億9,600万円)