最新レンジローバーでスノーロードを駆ける|Range Rover
Land Rover Range Rover Vogue|ランドローバー レンジローバー ヴォーグ
Land Rover Range Rover Autobiography
ランドローバー レンジローバー オートバイオグラフィー
最新レンジローバーで高原の雪道を駆ける
ラグジュアリーSUVの老舗といえば、言わずと知れた「レンジローバー」。その並外れた悪路走破性と世界観を確認するべく、雪に覆われたスキーリゾートを目指したジャーナリストの塩見智氏がリポートする。今回はストレッチ仕様を試す機会にも恵まれた。
Text by SHIOMI SatoshiPhotographs by SAKURAI Atsuo
スノーリゾートで知るレンジローバーの実力
長野、志賀高原の雪上をレンジローバーで駆けずり回ってきた。志賀高原といえば、週末は多くのスキー客で賑わう本格的なスノーリゾートだ。我々が向かった焼額山(やけびたいやま)は、長野オリンピックの回転競技が開かれた日本有数のスキー場でもある。自社製品の並外れた悪路走破性をアピールするには絶好のシチュエーションだと考えたジャガー・ランドローバー・ジャパンが、その地で試乗会を開催した。
新幹線を長野駅で降り、バスで目的地のホテルへ。標高を増すにつれ、だんだん道路に残る雪の量が増えていき、目的地周辺は完全なる圧雪路。今シーズンは早めにじゅうぶんな降雪があったおかげで、この辺りのほとんどのゲレンデは人工降雪機を稼働させる必要がないという。
まずは現行レンジローバーのラインナップについて。先代まではシンプルなグレード構成だったレンジローバーだが、現行モデルは「ヴォーグ」と「オートバイオグラフィー」の2グレードがあり、ヴォーグは3リッターV6スーパーチャージド エンジンと、5リッターV8スーパーチャージド エンジンを選べ、オートバイオグラフィーは5リッターV8スーパーチャージドのみとなる。
また、ヴォーグの3リッターV6スーパーチャージドと、オートバイオグラフィーは、SWB(スタンダードホイールベース)のほかにLWB(ロングホイールベース)を選ぶことができる。さらに、頂点として「オートバイオグラフィー ブラック」(LWBのみ)という最もラグジュアリーなグレードを選ぶことができる。
レンジローバー ヴォーグ 5.0 V8 SC SWB
最初に乗ったのは、SWBのレンジローバー ヴォーグ 5.0 V8 SC(1,553万円)。2012年に発表され、翌年日本に導入された現行レンジローバーには、これまでに何度も試乗したが、相変わらず、乗り込んだ瞬間からドライバーを豊かな気分にさせてくれる。
理路整然としたインテリア デザインなのだが、ドイツ車とも日本車ともアメリカ車ともことなる、あたたかみのある英国車特有のあの雰囲気はどこからくるのだろうか。きっとレザーやウッドの使い方に秘伝のレシピがあるのだろう。
圧雪された一般道を行く。いくら走っても何事も起こらない。いつも通りドライブに入れてステアリングとアクセル&ブレーキ操作をするだけで、クルマはジェントルに、快適に走ってくれる。せっかく雪道試乗にきたのだから、たまにはズルっと滑って、おっとっとという場面にも出くわしたかったくらいだ――などとのんきな感想を抱くことこそ、レンジローバーの技術力の高さを物語っている。
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最新レンジローバーで高原の雪道を駆ける(2)
モーグルも恐れない優秀な秘書
2トンを大幅に上回る車重のクルマが雪上できちんと加速して曲がって止まるというのは、それだけでかなりの技術力の証明だ。新世代のテレイン レスポンスはオートモードに入れておきさえすれば、クルマが自動的に路面状況を判断して最適なセッティングにしてくれるのだが、これが縁の下の力持ちとして活躍している。
すなわち、常に前後トルク配分を最適に保ち、必要な車輪のみにブレーキをかけてオーバーステア/アンダーステアを軽減し、必要なら車高もコントロールしてくれているのだ。いかにレンジローバーといえどもオーバースピードはいかんともしがたいが、その点さえ気をつけていれば、乗用車としては最高レベルの雪道走破性能を発揮してくれる。
一般道だけでレンジローバーの実力を垣間見るのは難しいということをインポーターもよくわかっているので、広いスペースに、高さ数メートルの雪山やモーグルなどを特設したコースを用意していた。
急な下り坂は雪道の運転で最もコントロールが難しい場面だが、ブレーキ操作をクルマが担うヒル ディセント コントロールを使えばだれでも安全に坂を下ることができる。これだけなら他の多くのクルマにも備わっているが、レンジローバーの場合、グラディエント リリース コントロールという機能が付いている。
これは、ドライバーがブレーキペダルから足を離した際にブレーキがゆっくりと解除されるもので、モーグルや岩場など、急がつく操作を避けたいときに役立つ。
さらに、エアサスに、片方が縮むともう片方が伸びた状態を保つクロスリンク機能が付いているので、左右両方のタイヤが沈み込んで車体を路面に当ててしまう独立懸架サスの弱点を補っている。レンジローバーにはこうした大小の工夫が数えきれないほど備わっているのだが、カタログなどではいちいち全部を紹介していない。
目立たずいろいろな準備をし、ボスを「俺はデキる人間だ」とおもわせるのが有能な秘書というものだろうが、その点ではレンジローバーは有能な秘書と言える。ボスであるドライバーは快適にドライブするだけでよいのだ。ただし、この秘書は多少大食いなので、燃料だけはこまめに補給してやる必要がある。
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最新レンジローバーで高原の雪道を駆ける(3)
レンジローバー オートバイオグラフィー 5.0 V8 SC LWB
志賀高原界隈での取材を終え、レンジローバー 「オートバイオグラフィー 5.0 V8 SC」(1,830万円)で東京を目指した。「オートバイオグラフィー」はフラッグシップたるレンジローバーの最上級グレードで、なおかつ、このモデルはただでさえ大きなボディによってじゅうぶんな居住空間が確保されているレンジローバーのホイールベースを、200mmストレッチしたLWB。さらに、オプションでリアエグゼクティブクラスシートが備わっている(定員4人)。左右独立の立派なリアシートが備え付けられており、シート間に設置されたセンターコンソールのスイッチでサンルーフ、オーディオ、リクライニングなどを操作することができる。
ストレッチされたサルーンはよくあるが、SUVのストレッチ版は新鮮だ。真横から見ると巨大なダックスフントのように見えなくもないが、全体としてはかなりうまくまとまっているのではないだろうか。LWBが追加された明確な経緯は聞くことができなかったが、最高の悪路走破性と最高の豪華さの両方を1台に求めるわけだから、もしかすると頭にクーフィーヤ(ターバンみたいなやつ)を載せたアラブの王族あたりのリクエストによって生まれたのかもしれない。
本心では、編集スタッフに全区間運転してもらい、自分はじっくりと目を閉じて、まるで眠っているかのごとく静かにエグゼクティブクラスシートのチェックにいそしみたかったのだが、それじゃ原稿が書けないので、お楽しみは後半の高速道路区間にとっておいて、前半の圧雪されたスノーワインディングロードを自分でドライブすることにした。
ドライバーズシートから眺める景色、それに各種操作系などはSWBとなんら変わらない。ルームミラーに映るリアシートがいくぶん遠くにあるなと感じる程度。走らせても、5リッター、V8スーパーチャージド エンジンのパワフルさもエアサスがもたらす快適な乗り心地も、レンジローバーそのもの。
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最新レンジローバーで高原の雪道を駆ける(4)
エグゼクティブクラスシートの醸す感覚とは
さすがにこのディメンションだと、ハンドリングは多少もっさりしているのかなと想像しながら山道区間へ。するとダックスフント ルックのくせにスタンダード版と変わらぬ軽快で正確なハンドリングを維持しているではないか。
車検証で確認すると、前後の重量配分はほとんど50対50とバランスよく配分されている。3メートルを超えるホイールベースのわりに軽快な身のこなしをみせる理由はこのあたりにあるのかもしれない。ただし前1,320kg、後1,300kgの計2,620kgと、絶対値はかなりの重量級なのだが。なお雪上での実力もじゅうぶんで、SWBで走った特設コースを問題なく走ってのけた。
上信越道のサービスエリアで念願のドライバー交代。リアシートに腰を落ち着け、背もたれを倒し、左肘をセンターコンソールに、右肘をドア側のアームレスに置いて両足を投げ出し、「やってくれたまえ」と発車を指示する。背高リムジンのリアシートの居心地はすこぶる快適。アイポイントの高さも新鮮だ。
乗り心地を細かく報告するならば、ウインタータイヤのせいか、それとも個体の問題か、これまでに経験した現行レンジローバーのリアシートの中で最も快適かといえばそんなことはなく、ごくまれに強めの突き上げを感じることがあった。だが、雪道を含む数時間の試乗だったので断定的な評価をくだすのは避けたい。
リアでしばらく過ごすうち、LWBのエグゼクティブクラスシートの住人だけが味わえる特権的な“感覚”があることに気付く。それは、こんなに快適なシートに腰を落ち着けているのに、必要とあればこのまま水深900mmまでの河を渡ることができるし、歩くのもままならないようなロックセクションを走破することもできるのだという絶大なる“安心感”や“信頼感”だ。実際にそういう場面へ足を踏み入れるかどうかは問題ではない。その気になればやれるのだとおもえることが重要なのだ。
まちがいなくLWBのオートバイオグラフィーのリアエグゼクティブクラスシートという仕様は、最もぜいたくなレンジローバーであり、イコール最もぜいたくなSUVと言えるだろう。
Range Rover 5.0 V8 Supercharged Vogue Standard Wheelbase
レンジローバー5.0 V8 スーパーチャージド ヴォーグ スタンダード ホイールベース
ボディサイズ|全長 5,005 × 全幅 1,985 × 全高 1,865 mm
ホイールベース|2,920 mm
トレッド 前 / 後|1,690 / 1,685 mm
最低地上高|220 mm
重量|2,550 kg
エンジン|4,999 cc V型8気筒 DOHC スーパーチャージド
圧縮比|9.5
ボア×ストローク|92.5 × 93.0 mm
最高出力| 375 kW(510 ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|625 Nm(63.8 kgm)/ 2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(コマンドシフト付)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|275/45R21
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
サスペンション 前|電子制御エアサスペンション マクファーソン ストラット
サスペンション 後|電子制御エアサスペンション ダブルウィッシュボーン
燃費(JC08)|7.4 km/ℓ
最小回転半径|6.1 m
乗車定員|5 名
価格|1,553 万円
Land Rover Range Rover 5.0 V8 Supercharged Autobiography Long Wheelbase
レンジローバー 5.0 V8 スーパーチャージド オートバイオグラフィー ロングホイールベース
ボディサイズ|全長 5,205 × 全幅 1,985 × 全高 1,865 mm
ホイールベース|3,120 mm
トレッド 前/後|1,690 / 1,685 mm
最低地上高|220 mm
重量|2,620 kg
エンジン|4,999 cc V型8気筒 DOHC スーパーチャージド
圧縮比|9.5
ボア×ストローク|92.5 × 93.0 mm
最高出力| 375 kW(510 ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|625 Nm(63.8 kgm)/ 2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(コマンドシフト付)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|275/45R21
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
サスペンション 前|電子制御エアサスペンション マクファーソン ストラット
サスペンション 後|電子制御エアサスペンション ダブルウィッシュボーン
燃費(JC08)|7.4 km/ℓ
最小回転半径|6.4 m
乗車定員|4 名
価格|1,830 万円
ランドローバーコール
0120-18-5568(土日祝除く、9:00-18:00)