フォード エコスポーツを海外で試乗|Ford
CAR / IMPRESSION
2015年1月14日

フォード エコスポーツを海外で試乗|Ford

Ford EcoSport|フォード エコスポーツ

グローバル戦略のあたらしいコンパクトSUV

フォード エコスポーツを海外で試乗

フォードは「マスタング」や「エクスプローラー」といったアメリカンテイストのモデルを出すいっぽうで、“One Ford”の旗印のもと、世界中で普遍的に生産、販売するための「フォーカス」「クーガ」「フィエスタ」といったグローバル戦略車も積極的に展開している。そんなグローバルカーの4車種めとして日本に導入されるのが、コンパクトSUV「エコスポーツ」。フォーカスをSUVに仕立てたクーガとおなじように、フィエスタをベースにクロスオーバーSUVとしたモデルだ。4月24日の国内発表に先駆け、金子浩久氏が工場のあるタイで試乗した。

Text by KANEKO Hirohisa

激戦区“コンパクトSUV”市場にに参戦するあらたな一台

今年は、コンパクトなSUVの当たり年になりそうだ。

すでに発表されているホンダ「ヴェゼル」やプジョー「2008」、ルノー「キャプチャー」、夏に日本仕様の発表が予定されているメルセデス・ベンツGLAクラス」、5月に日本導入のフォード「エコスポーツ」などのことだ。

SUVといってもオフロードタイプのものではなく、乗用車をベースにして(ヴェゼルは「フィット」、GLAは「Aクラス」)、前輪もしくは4輪を駆動する。

想定されている使いみちはシティユースが中心。でも、ベースとなった乗用車より少し最低地上高を上げて路面の凸凹や雪道などに備え、さらにGLAなどはスロットルとトランスミッションとブレーキなどの電子制御をオフロード用にボタンひとつで設定変更できて、かなり荒れたオフロードでも走ることができる実力をそなえていて驚いた。

そして今回はそのひとつ、フォード エコスポーツにタイのホアヒンで乗ってきた。国際的にはBセグメントと区分されるサイズに属するSUVで、フォード自身は“スマート アーバンSUV”と呼んでいる。

エコスポーツは、1.5リッター4気筒エンジンで前輪を駆動する。SUVだけれども、4輪駆動の設定はブラジル市場でしか用意されていない。

ちなみに、エコスポーツはブラジル、中国、タイ、インドの4カ所のフォード工場で製造される。開発もブラジル フォードが中心となって進められた。日本には輸入されなかったが、じつはエコスポーツは2代目で、ブラジルでは2003年の初代発表いらい、同国を中心にして70万台も販売されたヒット作だった。それを、ブラジル以外の3つの生産拠点からも世界100カ国以上の国々で販売していこうと販路が拡大されたのが今度の2代目だ。

「急成長中のアセアン、インド、ブラジルマーケットやヨーロッパなどを含む、世界のマーケットでBセグメントの規模は成長途中にあり、なかでもSUVは今後さらに伸びる」フォード・アジアパシフィックのヴィークルライン ディレクターのグラハム・ピアソン氏は説明していた。

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タイヤを背負うことをメリットに

エコスポーツに対面して最初に目に付いたのは、テールゲイトにマウントしたスペアタイヤだ。スペアタイヤをこのように車体の外側に取り付けてあるのは最近では珍しくなった。ほとんどのクルマがトランクルームの床下に収納している。そのタイヤもスペースセイバーと呼ばれる暫定的な細いタイヤだったりする。クルマによっては、パンク修理キットという修理道具だけでスペアタイヤを省いてしまっているものもある。その場合の多くは、ランフラットタイヤというパンクしても数10kmから100km近くまで走れるタイヤが装着されている。

つまり、昔のように道路に落ちていた釘や鋭い金属片をタイヤが拾ってパンクすること自体が減り、さらにはパンクしてもタイヤショップや修理工場ぐらいまでなら走って辿り着けるランフラットタイヤなるものが開発されたという時代の変化がある。

ただし、そうした便利なオペレーションを可能にしているのはまだ先進国に限られている。発展途上国や中進国と呼ばれる国々では、その限りではない。だから、フルサイズのスペアタイヤを装着していなければクルマを道端に置いて帰ってこなければならない。

日本で暮らしているとパンクなんて過去のことのようだけれども、世界は広い。

フォードの開発陣は、その点を逆手に取ったのだろう。エコスポーツにフルサイズのスペアタイヤを背負わせることで、トランクスペースを広く使えるというメリットを最大限に活用しようとしている。

テールゲイトを横開きにし、床を下げて荷室自体を直方体に近付けるようにデザインした。数値としては362リットルで、リアシートを前方に畳めば705リットルにまで拡大する。デモンストレーションで、電気洗濯機のパッケージを模した紙箱を易々と収納できることを示していた。

ちなみに、このスペアタイヤは画像のクルマにはボディと同じ色のカバーが装着されているが、日本仕様ではカバーは付けられない。ボディ同色による視覚的な滑らかさよりも、剥き出しのタイヤが醸し出すラギッドな雰囲気を演出するためだそうだ。僕も、その方がエコスポーツを魅力的に見せることになるとおもう。

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華奢な感じはない

エコスポーツは、最近のフォードが力を入れている「エコブースト」エンジンを搭載していない。燃費と性能を両立したエコブーストエンジンは「エクスプローラー」や「フォーカス」「フィエスタ」などに搭載されているが、エコスポーツが積むのはオーソドックスな1.5リッター4気筒エンジンだ。

自動ブレーキやアイドリングストップなども装備されていない。いたってシンプル。それらの装備は日本を含む欧米など先進国マーケットから強く求められるものだけれども、エコスポーツは世界全体を相手にしている。先進国でも販売するけれども、先進国以外の要求がまず第一に組み込まれている。

で、実際に乗ってみたエコスポーツ。これがなかなかに良い具合に仕上がっていました。

まず、SUVだけれども高過ぎない着座姿勢と自然な運転姿勢がフォードらしく、運転しやすい。パワーは110馬力で6段ATと組み合わされて必要じゅうぶん。100km/h前後での巡航でも静粛性は確保されていた。

エンジンパワーが小さなクルマにありがちな華奢な感じがしないので、さまざまな使い途でタフに使えそうだ。車内のあちこちにモノ入れがたくさんあるのも実用的で助かる。

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フォードの価値を体現するBセグメントのSUV

ただし、どうしても解せなかったのがテールゲイトのヒンジの位置。タイは日本と同じ左側通行で、エコスポーツも右ハンドル。テールゲイトのヒンジが向かって左側に付いていて、右側が大きく開く。

これは反対ではないだろうか?

タイや日本仕様では、ヒンジは右側で左側が開くべきではないのか。道路の左側にクルマを寄せて、左側に荷物を運び出すわけだし、だいいち右が開いては脇をクルマやバイクがとおるわけだから危ないではないか?

この問いにたいして「いや、ドライバーが下りてきてゲイトを開けるわけだから、右側の方が近くて便利なのだ」とはピアソン氏。

そうかなぁ? 絶対に右ヒンジで左が開く方が理にかなっているとおもうんだけれども。

20cmの最低地上高と55cmの渡河性能も頼もしく、実際に高いコンクリート段差を乗り越えられた。凸凹の大きな未舗装路や小川や水たまりなどを走らざるを得ないユーザーにも向けられて造られているから、その点ではSUV(スポーツ ユーティリティ ヴィークル)ではなくてUV(ユーティリティ ヴィークル)と呼んでも構わないだろう。

フォードの“ONE FORD”戦略は、ただ一種類のクルマを世界中に送り出して終わりなのではなく、地域毎のニーズに細かく応えながら、複数のモデルで複数の要求にこたえ、結果的にどの地域のどんな人にも同じ満足度を提供しようというものだ。フォーカスやフィエスタ、エクスプローラーなどとおなじように、エコスポーツもまた「実用性が高くて、とてもよく走る」というフォードの価値をBセグメントのSUVとして体現していた。

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Ford ECOSPORT TITANIUM|フォード エコスポーツ タイタニアム(日本仕様)
ボディサイズ│全長 4,195 × 全幅 1,765 × 全高 1,655 mm
ホイールベース│2,520 mm
トレッド前/後│1,520 / 1,525 mm
最小回転半径│5.5 m
最低地上高|180 mm
重量│1,270 kg
エンジン│1,497cc 直列4気筒 DOHC
最高出力│82 kW(111 ps)/6,300 rpm
最大トルク│140 Nm(14.3 kgm)/4,400 rpm
トランスミッション│6段AT(パワーシフト)
駆動方式│FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / ツイストビームトレーリングアーム
ブレーキ 前/後│ベンチレーテッドディスク / ドラム
タイヤ│205/60R16
燃費(JC08モード)|14.5 km/ℓ
ハンドル|右
価格│246 万円

フォードお客様相談室
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