マツダ CX-3で北海道の大地を走る|Mazda
CAR / IMPRESSION
2015年8月7日

マツダ CX-3で北海道の大地を走る|Mazda

Mazda CX-3|マツダ CX-3

スタイリッシュなBセグメントSUV

マツダ CX-3で初夏の北海道を走る

マツダ「CX-3」は、2014年11月にロサンゼルス モーターショーでワールドプレミアされたグローバルモデル。先に発売されたBセグメントモデル「デミオ」をベースに開発したSUVで、エンジンは潔くディーゼルターボのみ。マツダがいま、もっとも力を入れているのがディーゼルエンジンであり、国産メーカーではマツダの孤軍奮闘でディーゼルエンジンにスポットが当たっているともいえる。今回は、真夏の北海道をステージに、ロングドライブを敢行。長距離走行から、CX-3の実力を探ることにする。

Text by SAKURAI Kenichi

CX-3の存在感

旭川空港を起点に、目的地である占冠村のリゾナーレトマムまでは約190km。途中には十勝岳のふもとを走るワインディングや北海道ならではのストレートがつづく上富良野の一般道があるルートをCX-3の試乗コースに選んだ。降り立った北の大地は、湿度がなく抜けるような青空が印象的である。北海道では冬場の使い勝手という事情もあろう、雪道やオフロードにも強いSUVが想像以上に多く走っていたが、そんななかにあってもCX-3の存在感はなかなかである。

ひとつの金属の塊から削りだしたようなソリッド感溢れるボディデザイン、SUVらしく力強さをイメージさせる四隅に大きめのタイヤを配置したアピアランスは、素直にスタイリッシュだと思う。前後のオーバーハングが短めに設定され、いかにも「走りそう」と見る者に感じさせるデザインは、コンセプトカー「魂動」からはじまったもので、このデザインテーマが「CX-5」以降登場した現行モデルにすべて活かされている。

もちろん大きく面積を取った盾型のフロントグリルが、マツダ ブランドであることを無言のうちに主張するが、車種によってヘッドライトのデザインがことなり、表情は微妙に造り分けられている。特にこのCX-3では、薄型のシャープなデザインを採用したヘッドライトを搭載しているため、前述のとおり大きなタイヤ&ホイールやボリューム感あるボディラインとともに、りりしくスポーティな印象をもたらす。

ディーゼルエンジンは「うるさい、臭い、遅い」と、3拍子のネガ要素が揃っているといわれていたのは1990年代までの定説。1999年、窒素酸化物の排出が当時の東京都知事により問題視され、2000年代に入り、ディーゼルエンジン搭載乗用車は徐々に市場から姿を消した。

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“日本一美しい街”と言われる美瑛から大自然のトマムまで、トータル300kmをマツダ「CX-3」で走った。

黒い粉が入った500mℓのペットボトルを振る様子は繰り返しニュースで流され、そのインパクトたるやかなりのものだった。当時の試算によれば、その500mℓのペットボトル12万本が、毎日大気中に排出されているという触れ込みだった。

そうした影響もあり、メルセデス・ベンツが欧州発のクリーンディーゼルを日本市場に導入するまで、6-7年我が国では乗用車にディーゼルエンジン不在の時期がつづいたが、この逆風のなか国産メーカーで唯一果敢にディーゼルエンジンにチャレンジしたのがマツダである。

マツダがクリーンディーゼル車を市場に投入してから4年。今年は市場で販売される乗用車用クリーンディーゼルエンジン搭載車の80パーセントがマツダ車になるというデータあるほど、クリーンディーゼルといえば、それはマツダと同義語といえるまでになっている。

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全12機種から選べるCX-3のラインナップ

今回の試乗では、北海道での一般的な交通の流れに乗って、できるだけ長くCX-3に乗ることを目的とした。時には観光スポットにある駐車場に入れ、あるいはもはや日本の道では忘れかけていた一般道での追い越しを体験するなど(これは片側1車線のストレートがつづく北海道でなければなかなかおこなえない)、一般的な使い方からCX-3の美点を探ろうというわけである。

主役であるCX-3は、SUVとはいってもオフロード系のそれとはことなり、洗練という言葉が良く似合う都会派のSUVである。FFと4WDの2つの駆動方式をラインナップしているが、全高はともに1,550mmで、街中に多くある一般的な機械式駐車場にも入庫可能なサイズ。これも都市派と言わしめるひとつの要因だ。

ボディサイズは全長4,275mm×全幅1,765mm×全高1,550mmで、ホイールベースはベースとなったデミオとおなじ2,570mm。デミオに比べ全長は215mm伸ばされおり、しかも車高も高いのでひとまわり大きく見えるものの、このホイールベースを根拠に、マツダではBセグメントモデルという位置づけにあるという。

エンジンは前述のとおり1.5リッター直列4気筒のディーゼルターボが唯一の搭載ユニットで、最高出力77kW(105ps)/4,000rpm、最大トルク270Nm(27.5kgm)/1,600-2,500rpm というスペックになっている。トランスミッションは6MTと6ATを用意。グレードによってはステアリングにマニュアル操作可能なシフトスイッチが付く。

全グレードでFFとAWDの駆動方式が用意され、駆動方式にかかわらずすべてのグレードで6段MTと6段ATを選択可能だ。つまりCX-3は、装備のちがいによる3グレードに対してふたつの駆動方式と、さらにふたつのトランスミッションを組み合わせた、全12機種から選べるということである。

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欧州志向といわれる所以

基本的にデミオとパーツを共用するインテリアは、とてもBセグメントのデザインとクオリティとは思えないほど個性的で上質だ。やりたいことがあっても、その操作はほとんどが直感的に行える。これは、どのマツダ車に乗っても感じることで、エクステリアだけでなくインテリアでも見事にマツダの世界観を表現しているといえるだろう。

メルセデスをはじめとするBMWやアウディといった欧州のプレミアムブランドそうであるように、こうしたこだわりは重要だ。マツダが欧州志向といわれる所以でもある。

デミオよりも厚めのクッションでデザインされたフロントシートは、長期路のドライブでも疲れにくく、一気に数百kmを走るといった用途にも向いていると感じた。上下そして前後方向に動くステアリングの恩恵もあり、ドライビングポジションはピタリと決まる。設定に自由度があるので、小柄なドライバーでも良好な視界を確保できそうである。自然に決まるこのポジションによって、走るほどにドライバーはクルマとの一体感を感じることになる。

ただし、リアシートの座面はシート長が短く、膝裏が浮いた姿勢を強要されるので、長距離ドライブでは疲れやすいかもしれない。これは若干狭いリアのドア開口部からも分かることだが、大人ふたり乗車をメインに、子供用またはサブで後席を使うというCX-3のユーザー想定からゆえのもの。通常大人(または年齢の高い子供との)4人での使用を前提にしているパッケージングではない。

十勝岳の麓、美瑛にある観光スポットのひとつ「青い池」に立ち寄り小休憩。

狭いというほどのネガ要素ではないが、大きく見えても物理的なサイズがBセグメントモデルだけに大人4人がゆったりと……とは、やはりいかない。SUVとしても広さを求めるのであれば、ひとクラス上の車種を選んだ方が満足度は高い。このあたりはBセグメントSUVとしての割り切りが必要だ。もちろん、今回は成人男子2名の旅。リアシートは手荷物を置くだけなので、キャビンの快適さや広さに不満が出るはずもない。

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マツダの強いこだわり

国産車では珍しいドイツ車のようなオルガンタイプのアクセルペダルは、適度な踏力を必要とする踏み応えある設定で、これが意外にも長距離走行では疲れない。マツダ車は好んでこのオルガンタイプのアクセルペダルを使用しているが、そうしたペダルデザインや位置、シートやステアリングポジションにもマツダの強いこだわりを感じる部分だ。

ステアリングホイールは少々小ぶりだがインテリアデザインから導き出せば適切な口径といえ、軽い操舵力ながらコーナーでの荷重変化など、タイヤや路面の状況をドライバーに確実に伝えるセッティングである。

総じて乗り心地は良好だが、FFと4WDでは少しことなっている。たとえばアンジュレーション(うねり)がつづくような道では、FFはリアのスタビリティが若干不足し、後輪のバタつく感じが否めない。いっぽう4WDではそうした印象がほとんどないので、この差はリアの駆動システムの有無と重量配分によるものだと理解できる。

映画「ぽっぽや」での舞台がそのまま駅舎として残されている幾寅駅にふらり。劇中は幌舞駅として使用された。

マツダのターゲットユーザーどおり、おもにふたり乗車(または単独乗車)がメインというユーザーは、迷わず4WDを選んだほうが乗り心地に対する満足度は高いだろう。

エンジンはディーゼルという先入観を見事に払拭してくれる、高速巡航時も気にならない一定の静かさをキープする。試乗車のエンジンが、ナチュラルサウンドスムーザー(ピストンピンにダンパーを組み込み、振動を打ち消す働きをする)を搭載するユニットであったこともその理由だろう。

車外に立って聞けばディーゼル特有のガラガラ音をかすかに認識できるが、車内にいる、つまり乗車しているかぎりでは、まるでガソリンエンジン車を運転しているようなキャビン環境であり、これを快適と表現することに迷いはない。

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実用燃費の良さに改めて感心する

エンジンはATとのマッチングも良く、ディーゼルエンジンを理由にストレスを感じるシーンはほとんどなかったのもCX-3の美点である。もっともアクセルをほんの少し踏んだ際のレスポンスは、やはりガソリンエンジンの自然吸気には叶わないが、狙った分のトルクがさほどタイムラグを感じることなく引き出せるので、総じて運転が楽に感じる。

車高は高いのだが、ふらつくことなくワインディングでも良く曲がりマニュアル操作可能なステアリングのシフトスイッチを駆使してスポーティに走ることができるので、運転が楽しいという印象をもたらすことになった。

美瑛に広がる満開の菜の花畑

ただ、制限速度である60km/hをキープしたようなシーンでは、不思議なことにトランスミッションが4速で固定され、若干エンジン回転数が高めのまま推移する。エンジン音がうるさいというほど気にはならないのだが、技術関係者にその理由を聞くと「燃焼効率とエミッションの関係でこの速度域では4速を選択するようにプログラムされている」とのこと。大きなお世話かもしれないが、ある程度のアクセル開度でより高いギアを選択できるようになれば、より低燃費が期待できるはずである。

その気になる燃費といえば、2日間でトータル300km以上を走り、オンボードコンピューターのデータではリッターあたり平均17.7kmだった。これは、基本は地元ドライバーと同様にクルマの流れに乗り、時には容赦なく(楽しんで)十勝岳周辺のワインディングを攻め込んだ末にもたらされたものである。

当然、良好な燃費データを出そうなどとは毛ほども思っていない。自由に走っての結果である。JC08モード(国土交通省審査値)の燃費データでは、上級グレードのXD Touring L Packageの6段ATでリッターあたり21.0kmなので、そうした走りを考えれば十分合格点といえる数値だろう。

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Mazda CX-3|マツダ CX-3
ボディサイズ|全長 4,275 × 全幅 1,765 × 全高 1,550 mm
ホイールベース|2,570 mm
トレッド 前/後|1,525 / 1,520 mm
重量|1,260 - 1,340 kg
エンジン|1,498 cc 直列4気筒ターボディーゼル「SKYACTIV-D 1.5」
ボア×ストローク|76.0 × 82.6 mm
最高出力| 77 kW(105 ps)/ 4,000 rpm
最大トルク|270 Nm(27.5 kgm)/ 1,600-2,500 rpm
トランスミッション|6段AT、または6段MT
駆動方式|FF、または4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|トーションビーム
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
燃費(JC08)|21.0km/ℓ-25.0km/ℓ
トランク容量(DIN)|350ℓ
価格|237万6,000円 - 302万4,000円

問い合わせ先

マツダコールセンター

0120-386-919

           
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