北京モーターショー現地リポート(1)|Auto China 2014
CAR / FEATURES
2015年1月14日

北京モーターショー現地リポート(1)|Auto China 2014

北京モーターショー2014 現地リポート(1)

もう「コピー車天国」と言わせない

いまや数のうえでは北米につぐ巨大な自動車マーケットとよべるまでに成長し、各ブランドも目を離せない中国市場で開催される、北京国際モーターショー。そんな中国最大の自動車ショーを巡ったのは、日本で自動車雑誌の編集をつとめ、いまはイタリアに在住する大矢アキオ氏。日欧両方の視点をもった彼が、中国で見て、そして感じたものとは──
(後篇はこちら)

Text and Event Photographs by Akio Lorenzo OYA

「一人っ子政策」がもたらす変化

「汽車譲未来更美好(車は、よりよい未来に貢献する)」をテーマに、北京国際モーターショーが2014年4月20-29日に開催された。北京ショー上海ショーと交互に隔年開催されているもので、今年は第13回め。中国国内では最大の自動車ショーである。2013年東京モーターショーの約6倍にあたる約23万平方メートルの会場には1,134台が展示され、うち世界初は118台、コンセプトカーも71台におよんだ。

今年の話題のひとつは、ハイブリッド、EVなど環境対策車への取り組みだ。いうまでもなく、背景には中国各地における大気汚染がある。

欧州に例をとれば、環境対策車は、たとえ車両登録ナンバーの奇数・偶数による市街地流入規制などが施行されても、適用外となる可能性が高い。報道関係者公開日前日の19日には、中国政府が購入補助金の検討に入ったことが新聞で報じられた。そうしたなか、2013年の上海ショー以上に、さまざまな環境対策車が欧州系・国内系メーカーから提案された。

Mercedes-Benz C-Class L

Lexus NX

もうひとつのトピックは、SUVおよびクロスオーバーの新車&コンセプトカー ラッシュである。これまで中国といえば、後席居住性を重視したロングホイールベース(LWB)車が人気であった。実際に、ドイツ系メーカーは合弁工場で、中国マーケット専用のLWB車を生産してきた。

その流れはいまもつづいており、メルセデス・ベンツは昨年の上海でマイナーチェンジした「Eクラス」のLWB版を発表したのにつづき、今年の北京では1月のデトロイトで発表したばかりの「Cクラス」をベースにしたロング版を初公開した。

そうしたLWBセダンのあとのトレンドとすべく、各社が力を注いでいるのがSUV・クロスオーバーだ。

LEXUS中国の植田浩一副社長は筆者にたいし、中心的ユーザー層を「一人っ子政策で誕生した30代初めから30代後半の人たち」と説明。「彼らは精神的余裕があり、もはや従来のセダンでは物足りなくなっている」と分析する。くわえて「とくに3列シートは、両親や祖父母を乗せ、ときにケアするために重視されている」という。中国独自の家族行動とスタイルが、ブームを後押ししてくれることが期待できそうだ。

北京モーターショー2014 現地リポート(1)

もう「コピー車天国」と言わせない (2)

洗練されるデザイン

中国メーカーが造る車のクオリティも着実に上がっている。

6~7年ほど前、欧州のモーターショーに参考出品された中国車の内装は、まだ国際水準からはほど遠かった。スイッチの操作感はぎこちなく、インテリアには安い玩具に似たプラスチック臭が漂っていた。たいして今日、彼らが造る車のインテリアの質感とフィニッシュは驚くほど向上している。その進歩の速さは、かつて韓国車が歩んだペースを上まわっている。目隠しをして乗せられたら、それが中国車と気づかない人が大半であろう。

もうひとつ驚くべきはエクステリア デザインの進歩である。かつて中国ショーといえば、日本車や欧州車のデザインを露骨なまでにコピーしたモデルが話題の中心で、フィアットやBMW、シボレーのように意匠権をめぐり裁判に至ったケースもあった。

いっぽう、今回北京で中国系メーカーが発表したコンセプトカーの多くは、昨年の上海以上にオリジナリティが向上している。

バックにあるのは、外国人デザインダイレクターの積極的な起用だ。奇瑞(チェリー)はかつてシボレー製シティカー、マティスに酷似した「QQ」を生産して問題となった。いっぽう今日彼らは、元オペルのデザイナー、ジェームス・ホープ氏をデザインのトップに据え、今回の北京でもスタイリッシュなセダンと小股の切れ上がったクロスオーバーをディスプレイした。

奇瑞 Concept Beta

Quoros 3 hatchback

その奇瑞が出資する上海発のプレミアムブランド「クオロス」もしかりだ。初代BMW「MINI」を導いたデザイナー、ゲルト V.ヒルデブラント氏をデザイン担当エグゼクティヴ ダイレクターに起用。ミュンヘン、上海そしてグラーツ(オーストリア)の三極体制でデザイン開発にあたっている。

そのクオロスは昨2013年以来、ジュネーブを初披露の場にしてきた。スタッフは「欧州で高い評価を得ることが、中国のプレミアム顧客への訴求に繋がる」と、その戦略を語る。今回の北京でも、3月のジュネーブで発表した5ドア ハッチバック版を展示した。

外国人デザイナーの存在はあきらかにされていないが、北京汽車集団(BAIC)の「BJ100 コンセプト」も力作だ。筋骨隆隆のフルサイズSUVでありながら、都会的なモダーンさも漂わせている。フロントグリルにジープやハマーの影響がみられるものの、全体的には高いオリジナリティをみせる。

北汽は旧アメリカン モータースのジープをライセンス生産していたこともあり、中国メーカーのなかでもっともオフロードカーに携わってきた。そうした意味で歴史的バックボーンも充分だ。さらに驚くべきことに、このモデル、2017年に市販が予定されている。どこまでコンセプトカーのムードが保たれるか、お手並み拝見といこう。

もはやコピー車天国とは言わせない迫力。欧米の歴史的コンクール デレガンスのコンセプトカー部門に、著名カロッツェリアの作品と並んで中国車がエントリーする日もちかいかもしれない。そうした予感がした今回の北京だった。

(後篇はこちら)

           
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