東京モーターショー2017を斬る 小川フミオ篇|Tokyo Motor Show 2017
Tokyo Motor Show 2017|東京モーターショー2017
東京モーターショー2017を斬る 小川フミオ篇
2年に1度に開催される国内最大規模のショー、東京モーターショー2017が開幕した。一般公開に先立ち各社がカンファレンスを行うプレスデイを見て回ったモーターショージャーナリストの目による、今回のショーの総括。第二回は小川フミオ氏。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki & others
モーターショーはいつでも面白い
2017年の第45回東京モーターショーは面白かった。僕にとって、モーターショーはいつも面白いのだ。新聞などでは“さえなかった”という論調を目にするけれど、なんでそう感じたのだろう。
面白かった理由は、クルマのバリエーションが多く見られたからだ。いたってシンプルな理由である。とくにドイツのメーカーはがんばった。
9月のフランクフルト自動車ショーの直後で息切れが心配されたが、しっかりしたコンセプトによる展示でショーを引き締めてくれた。
展示の支配的な傾向としては予想されたとおりEVである。そのバリエーションとしてEVのスポーツカー、EVのSUV、EVのパーソナルモビリティといったものが目をひいた。
ショーカーとしてスズキの「e-SURVIVOR(イーサバイバー)」などは(現実味は乏しくても)気分を浮き立たせてくれた。本田技研の丸目がぱっちりした丸目が印象的な「スポーツEVコンセプト」も同様だ。
なかでも記憶に強く残るのは、メルセデスのブースだ。先ごろ「EQ」というEVを統括するブランドを立ち上げた同社。東京には燃料電池の「GLC F-Cell」をはじめ3台のEVを持ちこんだ。
うちスマートの「smart vision EQ fortwo」は親会社のダイムラーが提案している「CASE」という未来のスマートシティ構想における重要なプレイヤーだ。完全自動運転を提案するパーソナルモビリティである。
Tokyo Motor Show 207|東京モーターショー2017
東京モーターショー2017を斬る 小川フミオ篇 (2)
実車を見られるからこそ面白い
全体像を描いたうえで個々のモデルを提案するというコンセプトは来場者にわかりやすい。アウディも上手だ。ドライバーの介入は必要になるもののレベルが上がった「レベル3」の運転支援システムを組み込んだ新型「A8」が目玉。
横には「コンセプト エレーヌ」というEVのコンセプトモデル。ここでウディでは先頃発表した「アウディAI」という運転自動化に向けた包括的なコンセプトを喧伝。モデルラインナップを見せるのにコンセプトを統合していて分かりやすかった。
BMWはドライビングプレジャーを前面に。「コンセプト8シリーズ」と「コンセプトZ4」はクルマ好きの心をとらえるスポーティなスタイリングだ。どちらもすでに発表されているが凝った細部は実車でないとわからないものである。
もう1台驚くばかりのスーパースポーツがメルセデスAMGによる「プロジェクト ワン」だ。AMG「GT」の高性能版という言葉では生やさしい。なにしろF1用のエンジンに4基のモーターを組み合わせているのだ。
ターボチャージャーは電気駆動のため排圧でパワーが落ち込むいわゆるターボラグとは無縁。これも「EQ」なのだがちょっと特別で「EQ Power+」と呼称されている。
モーターへの回生システムはつねに最大限はたらく設定のため、いつでもマキシマムの状態で加速が得られる。総出力は1000馬力を超え、制止から時速200キロの加速に要する時間は6秒だ。
会場で出合った開発担当者によると「2019年発売をめざして現在も開発続行中」とのこと。価格は3億円近くなるといわれている(メーカー未公表)。でも限定275台はすべて売り切れだそうだ。
F1マシンのようにコーナリングで有効な巨大なフィンを持つスタイリングや、やはりF1を思わせるインテリアなど、フランクフルトショーで公開ずみとはいえ、実車でないと迫力がわからない。
Tokyo Motor Show 207|東京モーターショー2017
東京モーターショー2017を斬る 小川フミオ篇 (3)
日本車だって面白い
トヨタ自動車は次期「センチュリー」と、やはり次期モデルと思われる「クラウン コンセプト」など発表。タクシーへの提案「JPN TAXI」も面白かった。全方位的にがんばった感が強い。
ただあえて言えばだけれど、多様なモデルレンジゆえ、ショーでの立ち位置がいまひとつ定まらなかった感があるのも事実だ。モーターショーに新奇なものを期待しすぎる我われへの配慮だとしたら、申し訳ない気すらしてしまった。
シンプルにクルマの魅力はスタイルにあると表現したのは、マツダとダイハツだ。マツダの大型クーペのスタイリングコンセプト「ビジョン クーペ」と、4ドアにハッチゲートの「魁(かい)コンセプト」は大きな話題だった。
面構成の複雑さを美しさととらえ、それをライティングによって表現しようという試みだ。EVとか自動運転とは関係なく、このやり方もショーにふさわしいと評価したい。
ダイハツは「DNコンパーノ」という小型4人乗りクーペの提案が人気だったようだ。かつてイタリアのビニャーレがデザインしたオリジナル コンパーノ(1963年)はセダンとスパイダーしかなかったが、そこにクーペが追加されたと考えると楽しい。
最後の技術の面から今後も注目したいモデルについて。チューニングパーツで知られる栃木県のイケヤ・フォーミュラの「IF-02RDS」だ。独自に開発した「シームレストランスミッション」搭載モデルである。
2ペダルのシングルクラッチの軽量性と、ツインクラッチの駆動ロスの少なさのいいとこどりを目指したシステムと説明される。ドグクラッチをマニュアル変速機に組み合わせている。
軽量かつシンプルかつ扱いやすく駆動ロスがないという点で、今後の熟成に大いに期待したい。搭載した車両はべつにWEC(世界耐久選手権)マシンのようでなくてもよかったとも思う。