CES 2017 リポート 前編|Consumer Electronics Show 2017
CEO 2017 前編
ラスベガスは、もう「自動運転車」がデフォルト
毎年1月に北米ラスベガスで開催されるコンシューマ エレクトロニクス ショー(CES)。コンシュマー エレクトロニクス分野では世界最大の見本市である同ショーにおいて、主役を務めるのはもちろん家電である。しかし、自動運転やコネクタビリティなど、最先端の電子技術がキーとなっている自動車業界においても昨今は重要なショーとなっており、各社がこぞって最新技術を披露している。今年のCESではどんなキーテクノロジーが紹介されたのか。さっそくリポートをお送りする。
Photographs Akio Lorenzo OYA / BOSE AutomotiveText by Akio Lorenzo OYA
今年のキーワードは「人工知能(AI)」「ビッグデータ」、そして「自動運転」
世界最大級の家電エレクトロニクスショー「CES2017」が、米国ラスベガスで2017年1月4日から8日まで催された。
今年50周年の節目を迎えたCESにおける最大の話題は、自動車メーカーの積極的な出展だった。とくに日本ブランドはトヨタ、日産、そしてホンダが出揃った。とくにトヨタとホンダは世界初公開のコンセプトカーを持ち込んで、華やかなブースを繰り広げた。自動車ブランドの主会場となった北パビリオンは、ちょっとしたモーターショー状態になっていたといっても過言ではない。
会場を見回してキーワードを挙げるなら「人工知能(AI)」「ビッグデータ」、そしてここ数年のテーマである「自動運転」だろう。
筆者が拠点とするヨーロッパをみると、フランスでは2016年に販売された乗用車の4分の1がオートマチック(AT)車になったところだ(CCFA調べ)。イタリアにいたっては、近年ようやく15パーセントに達したところである(2013年UNRAE調べ)。背景には、「燃費がよくない」「運転が楽しめない」「高い割にリセールバリューが低い」といった旧来のATへの考えた方がいまでも根強くあるためだ。
そのため、毎回ヨーロッパから大西洋を越えてラスベガスに向かうのは、夢の国・天竺に向かった西遊記の三蔵法師のような心境になる筆者である。
CEO 2017 前編
ラスベガスは、もう「自動運転車」がデフォルト (2)
国産3メーカーのブースに注目
閑話休題。実際のブースを見てみよう。展示された車両はほとんどがEVや自動運転をベース、または想定している。そう、CESでクルマといえば、それらがもうデフォルトなのだ。
トヨタのコンセプトカー「Concept愛i」は30年先の自動車を予測したものだ。AIを通じて自分のクルマに名前をつけるところからはじまり、徐々にクルマとパートナー関係を築くというものだ。
クルマと対話しながら、ユーザーの嗜好をビッグデータとして蓄積。思い出の曲を覚えていて、シチュエーションごとに自動再生したり、本人の感情に合わせて走行ルートを自動的に設定したり、といったことをこなす。
ホンダの「NeuVコンセプト」もソフトバンク系企業「cocoro SB」が開発したAI「感情エンジン」を用いて、ユーザーの嗜好を学習・蓄積してゆく。
きらびやかな初公開コンセプトカーこそ用意しなかったものの、地道な研究をプレゼンテーションしたのは日産である。2015年にパートナーシップを組んだNASA(米航空宇宙局)との成果発表ともいえるものだ。
「SAM(Seamless Autonomous Mobility)」と呼ばれるそれは、自動運転車が事故現場や工事現場に遭遇したさい、クルマが司令センターに通報。するとセンターのコンピューターは信号機を無視、警察官の手信号に従うことをクルマにフィードバックする。そのデータはクラウドに蓄積され、エリア内の他車両に伝えられると同時に、そのクルマ自体も類似ケースに遭遇したさいの解決法を覚えるというものである。
いっぽう、昨2016年にエキセントリックなコンセプトカー「FF Zero1」を公開して話題をさらったファラデイ フューチャーは、自動運転機能を備えたプロトタイプEV「FF91」を展示した。
デザインはFF Zero1同様、かつてBMW「i8」のデザイン責任者を務めたリチャード・キムによるものだ。テスラを公式なライバルとしており、テスラ「モデルS」より速い0-60mph加速など、さまざまな優位性を会場でも誇示していた。
参考までに、ファラデイ・フューチャーは中国のLeEcho社が支援する米国企業。FF91はネヴァダ北部の工場で2018年から生産開始予定だ。ただし、対サプライヤーに対する未払い問題などがくすぶるなか、その行方はけっして楽観視できない。
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ラスベガスは、もう「自動運転車」がデフォルト (3)
シート用サスペンションシステムを公開したBose
自動車本体以外でも興味深いものがあった。たとえばカーオーディオでも知られるBOSEだ。今回同社が特設会場で公開したのは、「Bose Ride」と名付けられたシート用サスペンションシステムである。
研究のスタートは1980年代初頭、創業者アマーG.ボーズ博士が開始した自動車サスペンションに遡る。それを足がかりに2010年、まずはトラック用として、北米で商品化されたのがBose Rideだ。路面から伝わる上下動をセンサーで検知。それを100万分の1秒単位で電磁アクチュエーターに伝達することにより、振動を軽減するものであった。
今回発表されたのはその改良型で、上下動に加え横揺れにも対応する2軸方式としたものである。ボーズとしては乗用車用にいかに小型化できるかといった課題を解決しながら、クルマの乗り心地が求められる自動運転時代にふさわしいシステムとして自動車メーカーに採用を働きかけてゆく。
クルマの電動化・自動運転化が進むと、パーツ点数が減ると同時に、従来の操縦の楽しみも変容してゆくに違いない。エンスージアストによっては、機械式時計がクオーツにとって代わられるかのような一抹の寂しさを感じていたことだろう。
しかし、このBose Rideのようなアイディアが自動車パーツの世界に新たな世界を切り開くかもしれないと考えると、どこかわくわくするではないか。