東京モーターショー 2015 リポート|Toyota
CAR / FEATURES
2015年11月20日

東京モーターショー 2015 リポート|Toyota

Toyota|トヨタ

東京モーターショー 2015 リポート

さまざまな角度からクルマの楽しさを提案

東京モーターショーにおける広大なトヨタブースは、話題を集める新型「プリウス」をはじめ、コンパクトスポーツのコンセプトモデル「FR-S」や、メカニズムを見える化した「KIKAI」など、自動車をさまざまな方角から楽しむ提案をおこなっている。現地をおとずれた小川フミオ氏によるリポート。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

WOW(ワオ)が必要

相変わらず、という言葉を使っていいかどうか、そっけないブースだったのがトヨタ自動車。しかし広い面積を占めた展示スペースには、自動車のさまざまな可能性を追求した新型車やコンセプトカーが並べられた。4代目になる新型「プリウス」が展示の中心になったのは事実だが、ほかにも、小型スポーツカーのコンセプトや、なかには、概念的に今後の自動車のあり方を模索したモデルもあり、じっくり見る価値があるブースになっている。

新型プリウスについては別項で詳しいのでここでの詳細は避けるが、ひとことで言うと、劇的というより、順当な進化。リチウムイオン電池を搭載するモデルの設定。着座位置など重心高見直しによる操縦性向上。乗り心地の改善。さまざまな項目があげられている。スタイリングは「MIRAI」を思わせる要素が(とくにリアに)散見されるが、実車は写真の印象よりオリジナリティが高い。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius

記者発表の場で、高らかに謳いあげられたキーワードは「WOW(ワオ)」。うれしい驚きを表す米国の感嘆詞を使い、「クルマにはワオが必要です」と豊田章男社長は語った。会場に置かれたトヨタ車にはすべてワオがあるように心がけているとした。そのあと、マイアミ・マーリンズで活躍するイチロー選手が登壇。「運転はうまくありません。でもクルマは好きです」と笑顔で語った。

トヨタ自動車にとって、いま(投資家に?)周知したいのは「トヨタ ニュー グローバル アーキテクチャー(TNGA)」だ。これは概念だという。大部分は、4代目プリウスにも使われる新開発のプラットフォームを意味するが、さらに、クルマづくりの方針や、仕事の進め方までふくまれるという。

性能アップにくわえて、効率性(収益性)の向上が目指されている。会場では豊田社長とイチロー氏とのやりとりのなかで、バッティングフォームがアナロジーとして取り上げられた。「フォームを変えることで必ずしも打率が上がるかわからないが、勇気をもってチャレンジしたい」とは豊田社長の言葉である。

ぬくぬくした場所にいるほうが楽だろうけれどあたらしいことにチャレンジしないと未来はない、と豊田社長。燃料電池車の未来は、MIRAIだけでないと、ショーモデルの「FCVプラス」の画像を前に語った。その一方で、自動車好きに大いに注目されたクルマがあった。

Toyota FCV Plus|トヨタ FCV プラス

Toyota FCV Plus

Toyota|トヨタ

東京モーターショー 2015 リポート

さまざまな角度からクルマの楽しさを提案 (2)

小型スポーツカー、クルマの見える化、そしてロボット

トヨタ自動車のブースで、「これはいつ出るんですか」と質問がさかんに発せられていたのが、黄色いスポーツカー「S-FR」だ。ヴィッツとほぼ同寸というコンパクトな2+2で、エンジンはフロントに、マニュアル変速機を介して後輪を駆動するという、オーソドクスなレイアウトを特徴としている。

「これから免許を取るひとたちに、クルマは楽しいとわかってもらいたいと思いました」。このクルマを開発した担当者はかつてそう語ってくれた。トヨタ86の弟分であるような「S-FR」。プロファイルは1960年代の名デザイン、ランチア「フルビア ザガート」を思わせたりして、ルックス的にも好ましい。自動運転技術がどんどん広がっていく時代にセールス的な逆風は強いかもしれないが、自動車が元来もっている楽しさを追求したコンセプト。なんとか製品化してもらいたいものだ。

Toyota S-FR|トヨタ S-FR

Toyota S-FR

Toyota KIKAI|トヨタ キカイ

Toyota KIKAI

いっぽうで「KIKAI」は、別の意味で、クルマ好きの興味を惹くコンセプトモデルだ。キャビン以外はすべてむき出し。通常はモノコック構造の車体とインナーパネルとアウターパネルとで隠されている、エンジンやサスペンションをあえて見せるデザインが特徴だ。

「ふだん隠されているものや見えないものに対する不安が現代はあります。クオリティコーヒーへの嗜好や工場萌えといった若いひとのブームも、自分たちの生活を成り立たせているものを、この目で見たいという気持ちのあらわれでは。自動車もブラックボックス化に逆らって、あえてすべてが見えるデザインを提案しました」。デザイン担当者のどことなく哲学的な説明が腑に落ちるのである。

高度な技術をソフトな装いで覆うのは、現代的な傾向。トヨタ自動車は、ロボット開発にも力を入れているが、それを人間型にしたのが「キロボ」だ。東京大学や高橋智隆氏の「ロボガレージ」と共同開発したものである。

さきに「こうのとり4号」に搭載されて国際宇宙ステーションへと運ばれたことがニュースになった。今回の東京モーターショーではその小型版「キロボミニ」が登場。

Toyota Kirobo mini|トヨタ キロボ ミニ

Toyota Kirobo mini

「キロボミニ」は手の平に載るサイズで、人間との言葉によるやりとりを通して、“人間的”なコミュニケーションスキルを上達させていくところに特徴をもつ、人型コンピューターである。これが将来、クルマに一緒に搭載されることも想定されているとか。スマートフォンをクレードルにつけるがごとく、キロボミニがダッシュボードに座り(組み込まれ)、会話によって操作できる自動運転のデバイス化することも考えられる。

あたらしい技術はいろいろなかたちでやってくる。それがわかるトヨタ自動車の展示である。

           
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