Smart fortwo|スマート・フォーツー|第18回 (後編)|「Smart  makes  you  smart」
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2015年3月19日

Smart fortwo|スマート・フォーツー|第18回 (後編)|「Smart makes you smart」

第18回 スマート・フォーツー(後編)

「Smart makes you smart」

新型になり格段によくなったという「スマート」。ただカワイイだけではない、変わっているだけではない、本当の魅力はどこにあるのか? 2台のスマート(旧型)を乗り継いだオーナーが語る。

文=下野康史Photo by Smart

“ミニ・ポルシェ911”と思うほど

「フォーツーカブリオ」。センターコンソールにあるスイッチで
屋根を自動開閉。左右のルーフフレームを手動で取りはずせば、
ご覧のとおりフルオープンに。

“ミニ・ポルシェ911”と思うほど

初代「スマート・フォーツー」の最大の弱点だった変速機。マニュアルトランスミッションをベースにクラッチ操作を機械が行う「ソフタッチ」は、2代目に乗ってみると格段に進化して、いまや普通のオートマチックと大差ない。
ターボキックがせせこましかった先代のエンジンも、自然吸気大排気量化によって、扱いやすくなった。
サスペンションは相変わらず硬めだが、乗り心地はだいぶカドが取れて、荒れた路面でも直接的にガツンとくるショックはなくなった。

初代スマート乗りがいちばんうらやましいのは操縦性である。フロントタイヤの踏ん張り感が掴みにくく、後輪だけで走っているような感じが強かった先代と比べると、新型スマートの操縦感覚はすっかりまともになった。

山道を飛ばせば、ちょっとした“ミニ・ポルシェ911”だ、と思うほど、コンパクトなRR(リアエンジン、リア駆動)車として、積極的にハンドリングを楽しめる。標準仕様でこれかよと考えると、旧型スマートの上級モデル「ブラバス」のオーナーとしては非常にくやしい。

都市における「ワン・マイラー」の台頭

ひとことで言うと、ニュー・スマートは商品性がグッと上がった。学生の習作的な生硬さや、ほとんど“ヘン”に近いほどの強い個性は薄れたが、そのかわり、いまやだれにでもエクスキューズなしに薦められる都市型マイクロカーになった。
こういうクルマはまずなにより理解者が増えて、路上にもっと増殖しなければ、意味がないし、続かない。
パリでもミラノでもない、自分の国のことを考えてみよう。いま、日本の都市部では「ワン・マイラー」とでも呼ぶべき新勢力が台頭している。

都市における「ワン・マイラー」の台頭

コの字型の強固な「トリディオンセーフティセル」に守られた
キャビン。さらにボディをサンドイッチ構造にすることにより
衝突時の乗員へのインパクト低減をはかるなど、とかく小さい
場合に不利になる衝突安全性には十分な配慮がなされる。

マイカーのエンジンをかけても、それこそ1マイル(1.6km)くらいしか走らない。遠出はせず、高速道路にも乗らず、したがって、恥ずかしいくらい走行距離が伸びない。

だが、日常の買い物や家族の送り迎えなど、生活道具としてクルマは欠かせなくなっている。要するに、昔流行った“ラッタッター”のスクーターのようにクルマと付き合う自動車ユーザーだ。ウチのヨメさんがまさにそんなワン・マイラーである。お隣の奥さんもそうだ。エコがどーたら言う前に、日本でもスマートで済む、スマートでこと足りる自動車の使い方が着実に広がっていると思うのである。

左|エアコン噴出し口の上に生えるレブカウンターとコックピットクロックはオプション装備。
右|シート間に生えるシフトノブ。マニュアルモードでは前後させることでギアを変える。

人間が頭を使うようになるクルマ

新型スマートを借りてきたとき、ウチのスマートの前に止めたら、車庫を10cmほど余らせてシャッターが閉められた。スマートに慣れると、とにかくどんなクルマも無駄にデッカイ。
とはいえ、2人しか乗れないし、2人乗ると、大きな荷物は積めない。なるほどグランドツーリングには甚だ不便なクルマである。だが、不便なクルマに乗っていると、人間が頭を使うようになる。不便さを克服するために、ちょっとは知恵を絞るようになる。実際、スマートと暮らしていると、そういうことがけっこうおもしろくなる。“Smart makes you smart”である。

都市における「ワン・マイラー」の台頭

車両概要|スマート・フォーツークーペ
フォーツーカブリオ

スイスに本拠を置く世界最大の時計製造グループ、スウォッチ グループと、ドイツの自動車大手ダイムラー・ベンツ(当時)が手を組み、1997年のフランクフルト・モーターショーでデビューさせた、2人乗りのシティ・コミューター。当初は「シティクーペ」と名乗り、4人乗り「フォーフォー」が加わるとポジションを明確にするため「フォーツー」(for two)と改名された。
全長2.5メートルという最近の自動車ではありえないような短いボディに2座を設け、リアに599cc 3気筒ターボを載せ後輪を駆動させ、ファニーなモノフォルムの衣を被せた、ユニークなパッケージングの持ち主。都市における交通問題、駐車スペース、環境問題といった諸問題に真摯に取り組んだ意欲作として、ヨーロッパを中心に普及が進んだ。

2007年にフルモデルチェンジされ2代目に進化。改良の眼目は歩行者保護性能、衝突保護性能、乗り心地の向上である。18cm長くなるなど大型化し、またエンジンも排気量が増し、三菱自動車による自然吸気999cc(71ps、9.4kgm)にかえられた。トランスミッションは6段から1段減って5段となったマニュアルモード付きオートマチックトランスミッション「ソフタッチ」。
ボディバリエーションは、先代同様に屋根あり「フォーツークーペ」とオープン「フォーツーカブリオ」の2種類。前者は176万円、後者は205万円という、2人乗りにしては高めのプライスタグをつける。
http://www.smart-j.com/

           
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