連載・藤原美智子|2010年7月エッセイ「ガーデニングから教わることはたくさんある」
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年1月28日

連載・藤原美智子|2010年7月エッセイ「ガーデニングから教わることはたくさんある」

「ガーデニングから教わることはたくさんある」

ガーデニング雑誌『BISES』(ビズ出版)の協力を得て、我が家のウィークエンドハウスの本格的な庭造りを施工してから(詳細は4月22日公開の連載「庭づくりの一歩は、イメージづくりから」にて)、はや4ヵ月。作製してもらった庭の入り口の扉やアーチにバラやクレマティスが絡まり、敷かれたレンガの小路もいい感じになじんできて、植え込まれた100本を超す花の苗や木もだいぶ成長してきた。

写真と文=藤原美智子

どんどんと成長していく植物たちのおもしろいこと、感心すること

そんな庭のようすが連載3回目として、『BISES 盛夏号 VOL67号』に掲載されている。施工前のようすも載っているのだが、見比べると我ながら「へぇー、こんなに変わったんだー」と、その変身には驚かされる。人間というのは目の前の風景に馴れると、以前の姿というのはすぐに忘れるものだとつくづくと思う。それに、“考えて→行動したら→現実が変わる”という真理(大げさ、かな!?)をわかりやすく見せられているようで感慨深いものがある(これも大げさか!?)。

ほかにも感じ入っていることがある。それは植物の生命力の凄さである。「こんなに小さくて、よわよわしい苗で育つのかな?」と心配していた苗が、今では1メートルを超すまでに育っている。コロンとした球の根でしかなかったもの(つまり球根)から、ニュキニョキと葉が出てきたと思ったら、いまでは立派に花を咲かせている。ホントに、見る都度にどんどんと成長していく植物たちのおもしろいこと、感心すること。ガーデニングの最大の楽しさは、この変化していくようすを眺めていられることではないだろか。それに手をかけてあげるほど、きれいに花を咲かせたり長く咲きつづけたりして応えてくれるのもうれしい。たとえば、咲き終わった花がらをひとつひとつ摘んだり、増えすぎたハーブ類は間引いてほかの植物が日陰にならないように気を配ったり、あるいはサビ病にかかってしまった我が家のバラの木は小まめに観察して再発したらすぐにその部分を切り落とす……etc。世話をしていると、アッという間に時間が過ぎてしまうし、「もうちょっと、もうちょっと」とキリがない。

もちろん、すべての苗が順調に育つわけではない。場所や土に合なかったのかどうか成長しないまま枯れてしまった苗もあるし、成長過程でちょっと油断をした隙に水枯れしてしまったものもある。でも、なんといっても一番大変なのは芝生に生える雑草の草むしりだ。とくに裏庭は以前、雑草が覆い茂っていた土地だったので、まぁー、ビッシリと元気よく育ってくれること! 夏のあいだは、午前中ズーッと汗をダラダラかきながら一生懸命すべて抜いたとしても、昼過ぎにはもうポツポツと生えはじめるのだからガッカリしてしまう。そして、根から取るために右手首を捻(ひね)るようにして雑草を抜くのだが、2~3時間も作業すると“捻り”の後遺症で右の手首はもとより首筋まで痛みが出てしまう始末だ。かかりつけの整体の先生には「なにも、こんなになるほど頑張らなくても……」と呆れられてしまう。夏の期間は雑草との戦いがガーデニングの主な作業といえるだろう。


庭の最終目標は「夢のような庭」!

じつは、今回の造園計画の最初の狙いは、この裏庭の芝生の面積を少なくして草むしりの苦労を軽減することにあった。そのためにレンガの小路や花壇をつくることを思いついたのだ。そして少々雑草が生えていても、それが味になるような庭というのが最終目標だったのである。そう思い立って庭づくりをはじめたのだが、結果、その目標を超えてウットリと(自画自賛!)その風景に浸ることができる庭となった。草むしりを軽減するためにという発想がウットリ庭をつくらせたのだから、まさにいま流行りのピンチをチャンスに変えた好例といえるのではなかろうか!?

そんなこんなで、いまのところはなんとか『BISES』の連載でつくってもらった庭を維持している状態である。が、庭は生きもの。日々、姿を変えている。それぞれの開花期は異なるし、一年草の花は枯れていく。そして、あたらしい草花を植え足していったらまた庭のようすは変わっていくだろう。「これで完璧!」という状態が一瞬あったとしても、それがズーッとつづくわけではない。ましてや、手をかけなければ庭はすぐに荒れていくだろう。愛情をかけつづけることがガーデニングには必要という当たり前のことが、実際に体験してはじめて気づいたことである。

そんなガーデニング初心者の私が参考にしている本が2冊ある。そのひとつは『ガーデニングってやつは』(田島みるく著・PHP)。ガーデニングの基本的で細かいこと(それこそが大事なことなのだ)がマンガで説明されていて、とてもわかりやすいしおもしろい。この私でも「なるほど、なるほど」と簡単に理解できて、とても重宝している。もう一冊は我が家の庭をプロデュースしてくれた、ガーデナーでありイラストレーターでもある大野八生さんからいただいた『園芸図鑑』(さとうち藍著・福音館書店)。これは子どもから大人まで楽しんで読めるガーデニング本であり、捉えかたによっては哲学書のようともいえる。ガーデニングと人生で大事なことはおなじなんだなーと思わせてくれる本なのである。

さていま、庭の最終目標は茂木健一郎氏がなにかの本に書いていた一文だが、「夢のような庭」である。こんな言葉がピッタリの庭をつくれたらどんなにいいだろう、とそれこそ夢見ている。また、そんな庭をつくれるようなひとになりたい、というのもいまの私の目標である。

           
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