藤原美智子|7月エッセイ「走ることの辛さとよろこび」
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年5月12日

藤原美智子|7月エッセイ「走ることの辛さとよろこび」

2009.07  「走ることの辛さとよろこび」

「藤原さん、いまいちばん興味あることはなんですか?」
ヘアメイクアップアーティストとして活躍される藤原美智子さんに、ストレートに問いかけて答えていただくマンスリーエッセイ。
連載2年目を迎えて、7月のテーマは「ランニング」。愛用のランニングシューズと秘密兵器、本邦初公開──。

文=藤原美智子Photo by Jamandfix

走るための筋肉がまったくといっていいほどない私の身体

走りはじめて気がついたこと。それは、“私は全然、走れないひとだったんだ”ということである。

初日に走れた距離は30メートルほどだった。自分では「こんなものかな」と思っていたのだが、それをひとに言うと「えっ、それだけ!?」と心底ビックリされるので、よっぽどヒドイのだろう。でも、しょうがない。10年間ほど、意識的に筋肉を鍛えるような運動は避けてきたのだから。それは前回、記したように身体に歪みがあったからである。

何年前だったろうか、ダンベル体操が流行ったのは。流行に敏感(弱いとも言える)な私は早速、1キロの重さのダンベルを購入して、本を見ながらせっせと筋肉づくりに励んでみた。すぐに、うっすらと筋肉はついてきたのだが、それと同時に左肩に痛みが走るようになった。そのときに気がついたのだ。歪んだ身体のまま鍛えてしまっては、より歪ませて固めてしまうことになる、と。

それ以来、とりあえず歪みが軽減するまで鍛えることはいっさい避け、柔らかな身体だけを目指してきた。その結果が、走るための筋肉がまったくといっていいほどない身体になったというわけである。

肌のハリ、色ツヤや透明感がもどってきた!

走ることに関して、そんなチョー低レベルからの出発だったが、というか、だったからこそ走るたびにおもしろいほど距離はのびていった。昨日はこの電柱までしか走れなかったのに、今日はこの角まで走れたという具合で、それこそ蟻の行進ほどの進歩ではあるが、その、なんと楽しいこと! 大人になってから、自分の進歩をこんなにもハッキリと体験したことなんてあっただろうか。いま、マラソンはブーム(ということは、私はまた流行りに乗ってしまったということだ)となっているが、そんなことを味わえることも大きな要因になっているのだろう。

が、しかし、なんと辛いこと! 走り出した瞬間から、もう辛くなるし止めたくなる。身体は重いし、すぐに心臓がバクバクして苦しくなるし、あちこちの筋肉が痛くなる。走っていて気持ちいい、なんていう日は永遠にやってこないかも、といつも走るたびに思うのだ。それでも、つづけられているのは“距離”や“昨日よりも今日の進歩”という達成感や充実感がモチベーションを保ってくれているからにほかならない。

それだけではない。じつは、走ることは美容に効く! ことがわかったからだ。走りはじめて1ヵ月ほど経ったころだろうか。お風呂に入っていて気がついたのだが、なんと、肌がお湯を弾くようになったのだ! 筋肉がついてきたからこそ、お湯を弾くようなハリが肌にでてきたのである。そんな自分の肌に思わず「お~!」と感動しながら、「そうかー。肌のハリというのは、要は中身が詰まっているからこそなんだな」と、あらためて思い知ったというわけだ。さらに、新陳代謝が良くなったせいか色ツヤや透明感もでてきた。走ることは辛さと苦しさの引き換えに、よろこびと美を得られるということなのだ。

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藤原さんの毎日ランニングを支えるもの

adiSTAR(アディダス)
アディダスショップで私の走るときのクセを機械で調べてもらい、それを補ってくれるシューズを選んでもらいました。
「シューズ選びは大事!」というけれど、なにを選んだらいいのか迷うラン初心者にはとてもありがたくて心強いシステムですよね!

POLARスポーツ心拍計 RS200
心拍数やタイム、走行距離、ラップなどを計測できる機器。ほかにもストップウォッチやアラーム、データー保存、燃焼したカロリーまで計れるけれど、機械に弱い私が主に利用しているのは距離とラップ。でも、これを購入してから走行距離が一目瞭然にわかるので、どこでも自由に走れるようになったし、正確なラップタイムもわかるようになってモチベーションがグンと上がりました。

ウィークポイント克服のために、さらに一念発起!

ところで、そのころには4キロほど走れるようになったのだが、同時にべつの問題が起きてきた。ジョギング後、異常に眠くなること、炭水化物を異常に欲するようになり体重が増加してきたこと。そして、私のウィークポイントである左骨盤と右足首に痛みが生じるようになってきたのである。

異常な眠さは誰もが体験することらしく2~3ヵ月過ぎれば収まるし、炭水化物を欲するのは身体が走るためのエネルギーを欲する自然なこととわかり一安心したのだが、問題は私の2大ウィークポイント(まだほかにもいろいろあるのだが)の“左骨盤と右足首”である。

かかりつけの整体の先生にも、その箇所が心配だと懸念されていたし、関節の弱さをカバーできるように筋肉をつけたほうが良いとアドバイスは受けていた。でも、走っていれば自然に筋肉はつくだろうとたかをくくっていたのだ。が、痛くては走れないし、でも走らないと筋肉はつかないし……。

これでは今回のRUN取材の最終目的である8月のニューヨーク・シティ・ハーフマラソンはおろか、その前にレースに馴れるためにとスケジュールに組みこまれた6月の10キロマラソンにも間に合わない……と、思いあぐねていたときに、あることが閃いた。それはジムに通って筋肉を鍛える、ということである。ハッキリ言って、ジムに通ってまで筋肉を鍛えることに全然興味もなかったし、そんなひとの気が知れないと思っていた私である。でも、こうなったら背に腹は変えられない。

「よーし、鍛えるぞー!」と、私は勇んでジムに入会することに決めた。それは走りはじめてから4ヵ月後のことだった――。次回につづく!

           
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