藤原美智子6月エッセイ「身体の歪みを正して得られたこと」
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年5月12日

藤原美智子6月エッセイ「身体の歪みを正して得られたこと」

2009.06  「身体の歪みを正して得られたこと」

「藤原さん、いまいちばん興味あることはなんですか?」
ヘアメイクアップアーティストとして活躍される藤原美智子さんに、ストレートに問いかけて答えていただくマンスリーエッセイ。
連載2年目を迎えて、6月のテーマは「ストレッチ」。ストレッチから得たこと、感じたこと、あなたのキレイのご参考に──。

文=藤原美智子Photo by Jamandfix

やっと普通並みになってきた身体で、なにかしてみたい!

今年の元旦から走りはじめた。

きっかけは昨年末、ある編集部から「今年8月のニューヨークシティハーフマラソンに出てみませんか」という取材依頼があったからだが、ちょうど、そのころ「この“この身体”を使って何かしてみたいなー」と、ぼんやりと考えていたので、即座に「やります!」と引き受けたという次第である。

誤解なきよう“この身体”という意味を説明すると、残念ながら鍛えられた身体という意味ではない。
首が回らず、背中や肩も鉄板のように硬く歪んでしまった(台湾のマッサージのおばさんもビックリ級!)身体を治すために10年間、整体やマッサージに通ったり毎日ストレッチをしたりして、やっと普通並みになってきた身体ということである。

ストレッチをはじめたころは夜、3時間ぐらいもしていただろうか。ここが痛い、あっちが硬いと泣きながらストレッチしていたら眠る時間がなくなってしまった、というほど没頭してやっていた。なにしろ、子どものころから異常に硬い身体だったうえに、さらに捩(よじ)って曲げるという姿勢を強いられるヘア・メイクの仕事をしてきて筋金入り(!)の複雑な身体になってしまったのだ。
どのマッサージや整体の先生にも「うーん、一筋縄ではいかない身体だ」と呆れられるし、「歪みを上手く利用してきましたねー」と感心(?)もされてしまう。そんな身体ゆえ、“なんかいいかなー”と自分で思えるようになるまで10年もかかってしまったというわけである。

毎日のストレッチをつづけていて、意外な効果とは?

ところで、よく「どうして飽きないでストレッチを毎日つづけられるの」と感心されるのだが、なんのことはない。しないと息苦しさを感じてきて、身体が“ストレッチをしてくれ~”と訴えてくるからだ。
それに自分が日々、成長していくのがハッキリとわかったからというのも大きなポイントだ。なにしろ、昨日よりも1ミリ前屈できた、1ミリ開脚できたなどと、やればやるほどちがいがハッキリと身体にあらわれるのだもの。生まれつき身体の柔らかなひとからしてみれば、「どこが?」と首を傾げるほどの低レベルだと思うが、私にとってはそんなミリ単位のことでも画期的なことであり、その進歩がうれしかったし楽しかったのだ。もちろん、今日はやりたくないなーという日もあったが、“やらないと元に戻ってしまうかも”という恐怖心も持続できた大きな要因になっていたと思う。

そんなふうに身体の歪みと硬さ克服大作戦(!)をして、4年も過ぎたころだろうか。予想もしていなかった効果に気がついた。それは、“心が軽くなる”ということである。
「最近、身体が柔らかくなってきたかも~。あれっ? そういえば最近、気持ちも楽……!? 」と。身体が硬さから解放され、自由さや軽やかさを感じはじめたら、なんと心まで軽やかさを感じはじめたのだ。よく“身体と心は繋がっている”というようなことを本で読んだりひとから聞いたりしていたが、理屈ではなく、そのとき、はじめて腑に落ちたように心と身体で“こういうことか!”と納得できたのだ。

身体を正すことでついてきた、もうひとつのうれしいおまけ

長いあいだ、私は自分の性格をストイックだと思っていたのだが、それは身体の状態も強く影響していたのかもしれない(今でも、ストイックも(・)好きではあるが)。なにしろ硬く歪んでいるのだから、たとえば、“立つ”という行為ですら一生懸命に立たなければいけないのだからストィックにならざるを得なかったのだ。
でも、身体が自由になると無駄な力を入れなくても立てる。それを身体で感じたときのうれしかったこと! と、同時に子どものころから硬かったからこそ、この喜びを感じられるのだし大事さにも気が付けるのだ。それは幸せなことなのかもしれない、などと思えたことも得たことのひとつ。

そして身体を正すことで、もうひとつうれしいおまけがついてきた。それは、無駄な肉が取れてきたこと。身体は歪んでいる部分を守ろうとして、不必要な肉をつける。そこを正してやると、血液やリンパの流れも良くなるから贅肉も取れるというわけだ。それに当然、首や肩の血行やリンパの流れが良くなると、顔の肌艶も良くなるし顔つきもスッキリとする。だから、そんな推移を体験してきた私の美容の持論は、肌になにをつけるかよりもダイエットに励むよりも、まずは身体の歪みや硬さを正すことこそが基本でありもっとも大事なこと、なのである。

そうした10年間を送ってきて、やっと次の段階が見えてきたのが昨年の年末であり、そんなときに出会うこととなったのがマラソンである。さてさて、どうなることやら――。次回につづく!

           
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