連載|藤原美智子|美しい箒で、日本の道具のすばらしさを再発見!
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年1月23日

連載|藤原美智子|美しい箒で、日本の道具のすばらしさを再発見!

以前から頭を悩ましていた問題がついに解決!

「美しい箒で、日本の道具のすばらしさを再発見!」(1)

最近、昔ながらの日本の箒(ほうき)を愛用している。きっかけは先日、十年ぶりに自宅を引っ越したこと。あたらしい住居の床がすべてフローリングだったからである。

文・写真=藤原美智子

思案すること十数年。やっと解決方法をみつけた!

いやいや、それが直接のきっかけではあるが、以前から頭を悩ましていた問題を解決するために箒にしたのである。その問題とは飼い犬のこと。いまの愛犬は2代目だが、2匹とも掃除機をかけているあいだじゅう吠えるし、ホースを噛もうとするのだ。それを避けるために、ほかの部屋に犬を隔離してから掃除機をかけ、そこがすんだらまたちがう部屋に追い込んで……、という面倒な思いをしながら、いつも掃除機をかけている。それなら朝、犬が寝ているあいだにすればいいかというと、それでは掃除機の音で犬が目を覚ましてしまい結局、吠えてしまうことになる。

「どうしたら……」と思案すること十数年。やっと解決方法をみつけることができた。今回の引っ越しの準備をしていたある日、和ものの食器や籠(かご)などを売っているお店で箒を見た瞬間、「そうだ! 今度の部屋はフローリングだから、箒でもいいかも!」と閃(ひらめ)いたのだ。これなら音を気にすることなく犬が寝ているあいだに掃除ができるから、吠えと噛み噛み攻撃を避けることができる!

さっそく、どんな箒がいいか調べて購入してみた。思えば、箒を使うのは小学生ぶりぐらいだろうか。なんだか、とても新鮮だ。それに掃くときの感触の優しいこと! 箒が自然の草からできているせいか床に優しく当たるし、使う人間の手にもその優しさが伝わってくる。スーッスーッとなめらかにゴミが掃き集められるのが、なんだか楽しいし清々しい気分になる。それに当たり前かもしれないが、巾木の桟(さん)のほこりも普通に掃けちゃうことにも感激した。掃除機の場合は口の小さなホースに変える手間が要るが、箒ならその手間は要らないのだ(!)

それに掃き集めたごみはちりとりに取って捨てるので、掃除機のようにフィルターのなかのゴミを捨てるときの、ちょっと面倒臭くて気持ちがいいわけでもない工程(最新のものは手を汚さずにポンと捨てられるらしいが)を踏まなくてもいいのがよい。当然、故障もなければ、電気を使わないからエコになる。

なんで、なんで、こんないい道具を忘れていたんだろう。掃除機は便利なものだけど、箒だってこんなにも便利なのに……。なんとなく、いつからか、掃除は掃除機でするものと思い込んでいた。その思い込みが、こうしたよいモノに意識を向けさせなくなっていたのだろう。

優秀で見目麗しい箒を使わない手はない!

「美しい箒で、日本の道具のすばらしさを再発見!」(2)

 

掃除も手仕事なのだから、手の感覚に合うことが大事

さて、私が愛用しているのは江戸箒の老舗「白木屋中村傳兵衛商店」で購入した、シュロというヤシ科の樹木の幹に生えた繊維でつくられているタイプのもの。もちろん、お店には昔ながらの草でつくられている江戸箒もあったのだが、いろいろと試させてもらった結果、これに決めたのである。ここの店ではじめて知ったのはおなじ箒でも畳に合うもの、フローリングや絨毯に合うものなどがあるということだ。たしかに、メイクブラシも目と頬では使うブラシはちがうし、テクニックに合わせてブラシを変えるのだから、目的や条件によって合う箒がちがうというのも当然のことなのだろう。

それにしても、なんと箒の姿形の美しいこと!! 無駄のない凛とした美しさでありながらも、つくる職人の温かさや余裕も感じられる美しさだ。そうした匠の技のすばらしさに目移りしてしまい、どれもこれも欲しくなってしまうので、お店のおかみさんに助言をしてもらうことに。床がフローリングであること、犬の毛が掃きやすいという条件に合うものを何本か選んでもらい、そのなかから決めることにした。でも「最終的には、手の感覚に合うものを選ぶといいですよ」というお店のおかみさんの言葉に思わず、なるほどーと唸ってしまった。掃除も手仕事なのだから、手の感覚に合うことが大事なのだ。目的に合うものという前提のほかは、感覚に馴染むものを選ぶというのはメイクブラシとおなじなのだ。その言葉に妙に納得した私は、自分にとって軽すぎず重すぎず、柔らかすぎず硬すぎ、そして手にすんなりと馴染む一本を選んだというわけである。これは掃除機選びにはないことである。性能がどうであるかが選ぶ基準だし、手の感覚に合うかなんて考えたこともないのだから。もちろん、その性能がよいと判断して選びとるのも、結局は感覚に合うということになるかもしれないが。

さて、箒の相棒であるちりとりも、ここで扱っている和紙に柿渋を塗った職人の手づくりのものを購入した。これもまた、箒と同様に姿形が美しい。日々の掃除を、こんな美しい道具でできるなんてうれしい! とワクワクして購入したのだが、もちろんいま、その恩恵を受けながら掃除を楽しんでいる。

ほかにも、このお店では服やテーブル用のブラシ、そしてはたきを購入した。服用のブラシは生地を傷めず、でもキチンとほこりやゴミ、犬の毛も簡単に取ることができる。いままでガムテープを使って無駄に消費していたが、それをしなくてもいいのがよい。テーブル用はチャッチャッと掃けて気持ちがいい。はたきなんてそれこそ見るのも触るのも子ども以来かもしれない。でも、これがあればカーテンやランプシェードのほこりも簡単に気楽に落とせることに気づいて購入した。ほかにも「あれもいい、これがあったら便利」というブラシがたくさんあったが、そこをグッとこらえてこの美しい3本を選びとったというわけである。

それにしても箒に限らず、ほかにもエコにつながる昔ながらの道具ってたくさんあるのではないだろうか。こんな時代だからこそ、それをもう一度点検しなしてみるのも一案かもしれない。それになにより優秀だし見目麗しいんですもの、使わない手はない!

           
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