連載|藤原美智子|布ぞうりは優しくて、身体に効く!
布ぞうりで足指の感覚を蘇らせる計画、実行中!
「布ぞうりは優しくて、身体に効く!」
先月と先々月2回つづけてマイブームを紹介してきたが、また今月も「ハマってしまった!」シリーズとなってしまった。そのモノとの出会いは、ごく最近なのだが「これは、いい!」といま、実感しているところである。
文・写真=藤原美智子
「藤原さんは布ぞうりを履くといいよ」というアドバイス
それは布ぞうり。そう、足の親指と人差し指のあいだに鼻緒がついている、昔からある日本の履物、アレです。そして、着物に合わせる正統派のいわゆる草履ではなく、布製で家の中でスリッパ代わりに履く庶民的なタイプのほうのぞうり。私が愛用しているのは、代官山にある『無垢里』という店で購入したものだ。
これを購入するにいたったのにはワケがある。お世話になっている整体の先生から、「藤原さんは足の指の感覚が鈍っているし、土踏まずがちゃんと使えてない状態だから、布ぞうりを履くといいよ」というアドバイスをいただいたからだ。そして、可愛いぞうりを売っているという先生のお薦めの店で購入したというわけである。
さて、私の足の指のどこがいけないかというと、こういうことだそう。足の指、とくに左足の人差し指が縮こまっていて、いわゆる“浮き足”になっている。そして外側に重心がかかっているので、土踏まずも上手に使えていない。つまり、足裏全体が地面にちゃんと接地できていない状態らしいのだ。足がそうした状態だと身体の重心が後ろにいくので、倒れないために膝を曲げてバランスをとろうとする。すると骨盤は自然と後ろにいくので背骨は丸まり、そして首は前に突き出る──。これでは、まるでオラウータンではないか! それがいまの私の状態らしいのだ、トホホである。
私が布ぞうりに二の足を踏んでいた理由
それにしてもホントに身体というのは、すべてが繋がっているものだ。どこかが悪くなると、バランスをとろうとしてほかの個所も次から次へと連鎖的に悪くなっていく。機械のように、その部分だけが悪くなって、その部分だけを取り変えられるのだったら、どんなに楽だろう。でも、人間はそうやってバランスをとる能力があるからこそ立っていられるのだし、進化したのだろう。そんな姿勢を治すためには、身体の重心がキチンと中心に乗れるようにならないといけないし、そうでなければ、いくら治療を受けても根本からは治らないという。一生懸命に頑張っている身体のためにも何とかしなくては! と思ったものの、“解決策のひとつが布ぞうりを履くこと”と、随分以前に聞いていたのだが、じつは、二の足を踏んでいたのだ。
なぜなら、私は家では普通に洋服を着ているわけなのだが、それにぞうりを合わせるのって、どうなんだろうと躊躇していたのだ。
最近、若い女性のあいだでは、浴衣を洋服感覚でコーディネイトするのが普通のようになっているのだが、それは私には理解できない着方。やはり“和は和風に”、“洋は洋風に”正統に着るのが一番美しいと思っている。それとおなじように、洋服にぞうりをコーディネイトすることに懸念をいだいていたのだ。
それなのに先日、先生に「あれっ。バランスが随分、いい感じになってきたね」と褒められたら、懸念していたこともコロッと忘れた。「よーし、ぞうりを履いて、もっとよくなるぞー」と、その帰りに早速、お薦めのぞうりを売っているお店に立ち寄り購入したというわけである。私の性格は“猿も褒めると木に登る”タイプなのである。
布ぞうりを履いて、思わぬ副産物の効果も!
さて今回、私は布ぞうりというものを初めて体験したのだが、これがビックリ! なんていうか、初めてお会いしたひとというよりも旧知の仲というか、幼馴染というか、そんな感じで最初からしっとりと足に馴染むのだ。
スリッパは履き込むまでは、スリッパに足を合わせるという感じだが、布ぞうりは向こうから寄り添ってきてくれるという感じだ。「なんて、優しいんだろう」と履いた瞬間、気持ちがホッコリした。日本人の美徳に、“ひとを思いやる気持ち”というものがあるが、それを具現化すると、こんな感じではないだろうか。
そうした気持ちよさだけではなく、布ぞうりを履いてから「歩いているときって、こんなにも足裏はしなやかに動くものなんだー」と、忘れていた感覚が蘇ってきた。まず、かかとが地面に着地して、土踏まずのアーチの部分が徐々に着いていき、指先のほうに体重が移動するという動きが繊細に感じられるようになってきたのだ。スリッパは底が硬いので、そうした足裏の動きを感じるのは難しい。かかとの次が指の腹という感じでパッタン、パッタンというような感じの歩き方になってしまう。
また、親指と人差し指で鼻緒をつかんで布ぞうりを履くことで、足の内側を意識できるようになってきた。いままでは、ホントに外側だけで歩いていたんだなーということがよくわかる。少しでも良くなると、以前の悪い状態というのがわかるようになるものである。逆にいうと、良くならないと悪い状態であることに気がつくのは難しい。つまり、気がつけるようになることが、まずは大切ということだ。
こんなふうに“布ぞうりで足指の感覚を蘇らせる計画”は順調な滑り出しをした。が、これからの課題はある。寒い季節になったら、どうするかということだ。夏のあいだは素足でいいが、寒くなったら素足では履けない。ということは5本指の靴下とかを履かないと、ぞうりは履けないということだ。またまた「ん~、ファッション的にどうなの?」と思案していたのだが、それを先生にいうと「大丈夫。足の指の感覚が蘇ってきたら冷え症も治るから、靴下を履かなくてもよくなるよ」とのこと。「えっ、冷え症まで治っちゃうの! それだったら、頑張る!」と、靴下を履かなくても冷えを感じない“足”を目指して、いま、私は意識的に布ぞうりを履いているところである。
無垢里
http://www.geocities.jp/mukuri_d/