永富千晴|SAKURA × 永富千晴対談(前編)「ウェブ世代の化粧品選び」
Beauty
2015年1月30日

永富千晴|SAKURA × 永富千晴対談(前編)「ウェブ世代の化粧品選び」

モデル・ビューティジャーナリストのSAKURAさんをお迎えして

SAKURA × 永富千晴対談 (前編) 「ウェブ世代の化粧品選び」

ウェブマガジン「オウプナーズ」の読者の皆さまはじめまして。美容ジャーナリストの永富千晴です。今回からはじまる連載「永富千晴のビューティ・クローズアップ」では、いま私が気になっている美容界の達人をゲストに迎えて、そのひとの“美のヒント”を読み解いていきます。第1回のゲストは、モデルでビューティジャーナリストのSAKURAさん。いつもパワフルで好奇心に満ちた彼女にクローズアップ!

文=オウプナーズ
写真=原恵美子

美容をめぐるふたりのスタンスのちがいとは?

「美容ジャーナリスト」という肩書きが美容業界に浸透しはじめたのが十数年前。モデルという観点から「最先端美容」「トレンドファッション」など、洗練を極めた美の本質を独自の視点で提唱しつづけている第一人者がSAKURAさんです。現在は、甲南女子大学で「トレンド学」の講師として活躍するなど、次世代の育成に向けても活動域を広げていらっしゃいます。

今回は、SAKURAさんの美しさの秘密を探る、という観点ではなく、「いま、美容ジャーナリストとして、しなくてはならないこと」「美容トレンドの課題点」などを中心にうかがいつつ、「いま注目しているスキンケアについて」を後編でお届けしたいと思います。

永富 SAKURAさんはモデル・ビューティジャーナリストという肩書きですが、どういうスタンスで美容をとらえていますか?

SAKURA 私の美容に対するスタンスは、トレンドとビューティをうまく繋いで発信するのが得意だと思っています。化粧品はつねにベースにあり、スキンケアやメイクアップアイテムの分析にも真面目に取り組んでいます(笑)。ホテルスパなどの、ラグジュアリーライフスタイルも好きで追求しています。チープでもナチュラルでもラグジュアリーでも、生活を豊かに楽しくしてくれるコスメが好きです! 永富さんのスタンスは?

永富 そうですね。私の肩書きは、美容ジャーナリストで、会員制コミュニティ「club C」の主宰です。美容に対するスタンスはリアルビューティかなぁ……と。いわゆるトレンド情報と現実のあいだにある差の部分を解釈して、トレンド側に引っ張っていく役目というか。kai(貝印)のビューティツールブランド「kobako」などもふくめて企画やマーケティングの仕事も大きい部分を占めていて、実際の使用者に近いジャーナリストだと思っています。

SAKURA ビューティ研究所club Cの活動にはとても興味があります。

永富 ありがとうございます。私の場合は、club Cでのデータに基づいて、事実性や資料性などをベースに発信していくジャーナリストですね。SAKURAさんとはおなじフィールドにいるんですが、モデル歴が長いSAKURAさんはファッショントレンドにも強いし、ラグジュアリーもすごく似合って、かっこいい。“日本の美容ジャーナリストは、かっこいいんです!”と世界のひとに向かって自慢したくなる感じ。女性の憧れですよね。甲南女子大学の講師もされていて、いくつになっても好奇心も旺盛だし。

SAKURA 永富さんはご自身でリアルビューティといっているほど、身近なところとメディアをつなげていく存在ですよね。企画のアイデアもいっぱいあって、先に進む力ももっている。自然体で、素直に伝えていけるのがいいなと思います。club Cもスタートしてからどんどん変わってきているでしょ?

永富 そうですね。もう6年になるんですが、美容に関心の高い30代の女性のメディア活用法の変化はすごいですね。

SAKURA 永富さんはウェブへの取り組みも早かったし、おもしろいチャレンジをしていると思いますよ。

永富 SAKURAさんだってブログもふくめてすごい本数を掲載されていますよね?

SAKURA いまデータ入稿が11本あります(笑)。それにオウプナーズでも5月から新連載をスタートさせました。インナービューティ、アウトサイドビューティなど広がりをみせるビューティ事情を、衣食住をふくめて、あたらしいものやおもしろいことを取り上げていきたいと思っています。


SAKURA × 永富千晴対談(前編-2) 「ウェブ世代の化粧品選び」

インターネットの普及で、化粧品の情報収集から買い方まで変わってきている

永富 11本も!? 毎日締切ですね(笑)。

SAKURA ほんとにそう(笑)。甲南女子大学で講義がある日は、新幹線のなかでずっと原稿を書いています(笑)。

永富 甲南女子は何年目ですか?

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SAKURAさん

SAKURA 4年目に入りました。私の講義はいわゆるトレンド学。ビューティ論・ファッション論・ファッションモデル論と3つのカテゴリーに分け、前期15回を担当します。トレンドやブランドには背景や歴史があります。「なぜいまこのトレンドなのか?」を伝えるには、過去から現在の情報、そして未来の予測を伝えることが、ファッションやビューティには必要だと考えます。物事の本質を見抜けるような女性になってほしいという願いがあります。楽しくなるようなアイデアを毎回必死に考え、自分にしかできない“エンタメ講義“を目指してがんばっています!(笑)

永富 紐解く作業だけでも、膨大そうですね。しかも、SAKURAさんが講師として教壇に立つとなると、華やかであってもほしいし。迅速に下調べするときなど、インターネットも活用されてますか?

SAKURA そうですね。たとえばファッションの変遷などを調べていくと、音楽とファッションが密接に関係していくことに気がついたり。ウェブは、スピーディに効率的に作業するのに活用していて、情報収集もある程度できると思いますが、ウェブと書物を並行して利用しています。私、ジャーナリストという肩書きをつけてから探求心が目覚めたんですよ(笑)。

永富 好奇心が強くて、フィールドの広いSAKURAさんにしかできない授業ですよね。SAKURAさんじゃなければ、トレンド学にエンターテイメント性をもたせられないと思います。

SAKURA 永富さんから見て、30代の美容に興味のある女性って、雑誌とウェブなどをどう使い分けていると思いますか?

永富 ウェブを活用する比率は格段に上がっていますね。美容情報収集の仕方はもちろん、化粧品の買い方も変わってきていて、ネット通販はずいぶん活用しています。

SAKURA そうですよね。インターネットが普及して、一般消費者の大手・有名ブランドに対する位置づけは確実に変わってきているし、化粧品に新規参入してくる企業も増えているし、ウェブに限らず、テレビCMとかテレビ通販とか、メディアの活用に広がりがでています。


SAKURA × 永富千晴対談(前編-3) 「ウェブ世代の化粧品選び」

美容のプロたちが参考にするような信頼性の高い情報の発信

永富 読む、選ぶ、買うが本当に変わってきていますよね。SAKURAさんは、ウェブと化粧品情報の関係性ってどう感じていらっしゃいますか?

SAKURA 一般ユーザーでは、化粧品=クチコミというのが浸透していますよね。じつはプロが参考にできるサイトやページは、雑誌社のサイト以外はまだまだ少ないです。ファッションでは、13歳の人気ブロガーのTAVI(タヴィ)ちゃんなどが注目されたり、影響力のある著名なジャーナリストなど、いわゆるインフルエンサー(オピニオンリーダー)がいて、海外では数年前からパーソナルなバリューに目が向いてきています。これからは、美容もプロがお墨付きを与えるような信頼性の高いサイト、プロが参考にするような情報が絶対に必要。一般ユーザーは、そういうサイトを参考にすることで、そこから本来のクチコミが広がっていく……、そういうのって理想的ですし、自分自身もかかわっていきたい思います。

永富 なるほど。たとえばclub Cをスタートさせた6年前に比べると、コスメの商品そのものが良くなってきていて、女性の感度も年々上がってきています。街を歩いていても、キレイな子、おしゃれなひとが本当に増えていますよね。私は、「商品はあとからついてくる」と思うほうなので、商品そのものよりも、それを使った満足感とか幸福感などがどう変化してきているのか、に目を向けています。そういう意味でも、club Cの会員さんが書いているブログなどはよく拝見しています。

SAKURA でも、ネットがこれだけ普及して、雑誌などの紙媒体も本当に危機感をもっていると思いますが、クリエーションのパワーをかけたくても思うようにかけられないというのが現状のようですよね?

永富 そうですね。掲載されて商品が売れたかどうか? の結果だけに重点をおく企業が多くなってきていると思います。いいものは買ってほしい、という気持ちは経済を回すためにも必要なことですが、ブランドの世界観や、ブランドのファンを増やしてリピーターにつなげるというアプローチが逆に目立ちにくくなってしまっていて、使用者の方にとって本当は知ってほしい、感じてほしい情報が埋もれてしまっているのではないか、と。SAKURAさんはどう思われますか?

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永富千晴さん

SAKURA たしかに以前に比べると化粧品やビューティ関連の企業のメディアに対する力のかけかたが本当に変化しています。私たちもふくめて、クリエイティビティを仕掛けていかないといけないし、雑誌もウェブも活性化していくことを考えないと。

永富 SAKURAさんのいう「プロ」という視点では、消費者が「そのひとのスタイルが好き」と思ってもらえるぐらいの心に響く文章や企画が提供できるかということですよね。

SAKURA そうですね。お互い頑張りたいですね。じつは私、この2年ぐらいちょっとブランドから離れ、手ごろでかわいいファッションを本気で楽しんでいました(笑)。でも、今年はまたしっかりしたつくりのブランドの服が、自然と着たくなってきていています。今日もモスキーノのブラウスを着たり、久々にジュエリーを身につけたくなったり。安くていいものもたくさんあるけど、ブランドの時代は必ずもどってくると思います。ここがトレンドの発信基地ですからね。

永富 そういうムードを私たちが発信することも大切な仕事のひとつですね。

           
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