Truefitt and Hill|トゥルフィット&ヒル|モニターレポート|吉田眞紀(M.Y.LABELクリエイティブディレクター)_Vol.1
トゥルフィット&ヒル モニターレポート
吉田眞紀(M.Y.LABELクリエイティブディレクター)_Vol.1
ひとつの香りで身だしなみを整える贅たく
男子というのは父親の背中を見て成長するもの。家に帰り着くまでは、どんなときも決してネクタイをゆるめない、そんな父親のもとで育った吉田眞紀さんにとって、シェービングブラシを使ったウェットシェービングは子供のころからなじみがあったという。M.Y.LABELのクリエイティブディレクターとしてシンプルで長く使えるカフリンクスやタイバー、リングを手がける吉田さんに、トゥルフィット&ヒルが提案するトラディショナル・ウェットシェービングを体験していただいた。
Text by OPENERS
はじめての刃物、懐かしい感覚
──シェービングブラシを使ったウェットシェービングというと、理髪店での顔剃りをイメージされる方が多いと思うのですが、やはり吉田さんもそうでしょうか?
私は父親がウェットシェービングを実践していたので、その印象が大きいですね。大正生まれの厳格な人間で、自宅に帰り着いて靴を脱ぐまではネクタイは絶対に緩めない、そんな人でした。いまから思うと、父親が考える紳士像は英国で経験がもとになっていたのだと思います。朝食はトーストと目玉焼き、そしてミルクティーと決まっていていましたし、朝はシェービングブラシを使ったウェットシェービングが日課でした。そして週末はもっぱら庭の手入れをしていましたね。
──その影響で吉田さんご自身もウェットシェービングをなさっているのですね
いえいえ、僕はそれほどヒゲが濃くないほうだし、ウェットシェービングといっても入浴時に浴室でT字シェーバーで剃るだけ。シェービングブラシまで使っていませんでした。でも子どものころは、大人の男が使っている道具にあこがれますよね。僕らの世代はそうだと思うのですが、そもそも子ども用のおもちゃは限られていて、大人のものをおもちゃにして遊んだものです。自宅の洗面台にはいつも決まった位置にブラシ、レザー、シェービングソープがあって、それを使って父親が毎朝ヒゲを剃る姿を見て、興味をもったんでしょうね。親父の目を盗んで手にとってみたり、見よう見まねで泡立てて剃るふりをしたことはいまでもよく覚えていますよ。
──たしかにレザーやシェービングブラシはモノとしても男ごころをくすぐるものがありますよね
そうですね。父親が使っていたのは安全カミソリではなく、両刃のカミソリだった思うのですが、あきらかに海外のものでハンドル部分にローレットが切ってあって、むき出しの刃がついている。はじめて刃物を手にし、すごく緊張したことを覚えています。大人の男の世界に一歩足を踏み入れた感覚をね。今回テストさせていただいて、そんな懐かしい感覚が蘇ってきましたよ。
──それにしてもお父さんがブラシを使ったウェットシェービングを実践しておられたとは、男としてうらやましい環境ですね
なのでシェービングクリームをブラシで泡立てるのはお手のものです。ブランクはありましたがキャリアがちがいますからね。それにシェービングブラシはすごく軟らかいイメージがあるのですが、実際に肌に当ててみると少しチクチクすることや、父親が使っていたシェービングソープやオーデコロンの懐かしい香りも思い出しました。
香料が苦手だった理由とは
──実際にシェービングブラシを使ったトラディショナルなウェットシェービングを実践してみて、いかがでしたか?
まず香りですね。今回は4つある香りのなかから、柑橘系の「ウェストインディアンライム」を選ばせていただいたのですが、バス&シャワージェル、ソープ、シェービングクリーム、アフターシェーブバーム、オーデコロンとすべてが自分の好きな香りで統一されるわけです。実際に使ってみると、これってすごく贅たくなことだなって実感しました。
──ここまで揃えることができるのはトゥルフィット&ヒルならではだと思います
そうですよね。じつはね、もともと僕は香料というものがすごく苦手なんです。というものシャンプーにしても整髪料にしても、メーカー側はそれぞれ好き勝手な香りをつくっているじゃないですか。なのでユーザーは何種類かのものを組み合わせて使うことを強いられてしまう。結果として香りと香りが混ざってしまうのが僕はたまらなくいやなんですよ。今回のお話をいただいた当初は正直どうかなと思っていたんです。
──たしかに、無香料にこだわらなければ、知らず知らずにうちに香りを混ぜて使っているケースがほとんどですね
はじめて使うのであれば、澄んだ空気のなかで使ってみたくなったんです。余計なにおいに邪魔されず、本来の香りを知るためにね。ちょうど八ヶ岳に避暑に行く予定があったので、かの地で開封して使ってみました。しかも浴室は浴室の匂いがあるので、人工的な香りがないウッドデッキでフレグランスを試し、ヒゲも剃ってみたんです。
──それでいかがでした?
結論からいうと、すごく楽しかったです。これまでは香りを混ぜることを強いられてきたわけですが、トゥルフィット&ヒルなら身だしなみをかたちづくる作業の最初から最後までをひとつの香りでまとめることができるわけですから。
──シェービングブラシを使ってのウェットシェービングは面倒に感じませんでしたか?
いえいえ、もともと毎日T字シェーバーでヒゲを剃ってましたからね。普段から無香料天然成分のシャンプーを愛用していまして、これ一本で洗顔やシェービングもOKというものなので、それを使って髭も浴室で剃っていたのです。でも、あらためてシェービングブラシを使ってクリームを泡立ててみると、やはり気もちいいですよ。
──本格的なウェットシェービングをすると、朝の気分まで変わってきますよね
まず刃物を扱っているという緊張感がいいですね。電気カミソリだと緊張もせずになんとなく剃れてしまうのでしょうけど、安全カミソリとはいえ刃物を扱っているという緊張感がともなう。なのでシェービングをしているうちにだんだんと「きょうも行くぞ!」って気もちになる。これが魅力だと思います。
──たしかにブラッシングして、レザーで丁寧に髭を剃るには集中力が要されます。ゆえに気もちまで引き締まりますよね。次回はフレグランスについてお聞かせください。