Truefitt and Hill|トゥルフィット&ヒル|モニターレポート|干場義雅(ILM『オーシャンズ』副編集長兼クリエイティブディレクター)_Vol.2
トゥルフィット&ヒル モニターレポート
干場義雅(ILM『オーシャンズ』副編集長兼クリエイティブディレクター)_Vol.2
理想の男、理想の香りとは?
第一回目のモニターレポートでは「香りの纏(まと)い方」についてふれました。においを落とし、香りを纏う。これが香りを纏うときの基本姿勢で、纏う香りは、なるべくおなじ銘柄でそろえるべき。シャンプー、コンディショナー、フレグランス、アフターシェーブローション、アフターシェーブバーム、シェービングクリーム、そしてソープ、ヘアトニックにいたるまで……。トゥルフィット&ヒルなら、すべての香りの方向性が一貫してエレガントだから、香りがばらけなくていい。なかでも「クラブマン」という香りが、高貴で、華やかで、優雅で、いちばんのお気に入り! という話しをしました。また、香りだけ良いものをつけていてもダメだし、装いだけ上品でもエレガントにはなれない。エレガントとは、すべてにおいてハーモニーが大切で、最後に「香りと装いのハーモニー」のスタイルの例をあげました。
写真・スタイリング・文=干場義雅
干場流、「素敵なオジサマ」論
と、ここまでが前回のお話し。ということで、今回は自分がなりたい「理想の男。そして、そんな男がつけているであろう理想の香り」についてふれてみたいと思います。
まずは、僕の理想の男について。僕が理想とする男は、最終的に年齢を重ねたときに、自分らしく素敵であることがいちばんの目標となります。わかりやすく言うなら「素敵なオジサマ」になりたい、ということでしょうか。博識で、本物を知っていて、歴史に詳しく、知識と葉巻はひけらかさないで、人の話を聞けて、人を楽しませることができて、本が好きで、つねに優しくて、穏やかで、決して人前で声をあらげず、ときに豪快で、クラシックなスーツスタイルがよく似合って、カシミアのニットも似合って、ネイビーブレザーやポロコート、パナマハットやラビットハットが似合って、細い杖が似合って、威厳があって、美味しいものを知っていて、お酒も強く、酔い方もスマートで、美への造詣も深く、クラシック音楽を愛し、手紙が書けて、大自然を愛し、自慢をせず、正しく美しい言葉を話して、T.P.Oをわきまえていて、冬はスキー、秋は山登り、春はお花見、夏はヨットと余暇を楽しめて、いちばん大切な人を愛せて、つねにレディファーストで、子供や動物が好きで、誰からも愛されて……。
と、あげればきりがないのですが、こんな「素敵なオジサマ」こそが、僕の理想の男なのです。『モノ・マガジン』、『エスクァイア日本版』、『LEON』、『オーシャンズ』など、メンズファッション誌の編集という職業柄、多くの「素敵なオジサマ」に会う機会に恵まれてきました。
たとえば、いままで出会った人のなかであげてみると、タイ・ユア・タイのオーナー、フランコ・ミヌッチさん。ロロ・ピアーナの当主、セルジオ・ロロ・ピアーナさん、元ブリオーニの当主、ウンベルト・アンジェローニさんなど。このトゥルフィット&ヒルを日本に入れた張本人、山野エミールさんも、まさにそんな「素敵なオジサマ」の日本代表であります。会ったことはないのですが、『DRESSING THE MAN』という写真集を見ていて、ジャンニ・アニエッリさん(写真上)もまちがいなく「素敵なオジサマ」のイタリア代表だったのだろうと思います。
理想の香りと、ついに出会う!
そんな「素敵なオジサマ」たちは、かならずといっていいほど、良い香りが漂ってるんですよね。決して、加齢臭なんて漂っていない。そこで、トゥルフィット&ヒルのなかで、そんな理想の男、「素敵なオジサマ」がつけているであろう理想の香りを探してみたところ……、見つけたんです、理想の香りを! 名前は「グラフトン」。香りを嗅いだ瞬間に「これだ! 僕が目指す最終到達地点の香りは」と思いました。とにかく、清潔感があって、落ち着いていて、深みがあって、圧倒的なジェントルマンらしさを感じる香りなのです。レモンやラベンダー、グリーンノートといったフレッシュなトップノートから、やがてサンダルウッド、ムスクをベースに、ウッディに変化していく。まるで、新芽が開くときのようなフレッシュで落ち着いた香りなのです。「グラフトン」という名前も、英国軍艦のグラフトンから、その名が付けられているのだとか。いまの僕の年齢では、簡単に手を出せないほど重厚な香りなのですが、酸いも甘いもすべてわかった本物の男、つまり「素敵なオジサマ」にしか絶対に似合わないのです。
「グラフトン」に似合うスタイルとは
香りを嗅げば嗅ぐほど、過去のジェントルマンたちの正当な装い、王道のクラシックでエレガントなスタイルも見えてきました。というわけで、今回も、この「グラフトン」に似合うスタイルをふたつ考えてみました。
ひとつめはブレザースタイル。英国軍艦のグラフトンから名前がきているので、ダブルのブレザーしかないだろう! と思いました。数年前に、チャールズ皇太子が着ている写真を見て仕立てたものです。特徴は、なんといってもボタンの数。写真ではわかりませんが、じつは8ボタンなので、そこはかとなく軍服のニュアンスが漂っています。合わせたのは、ミディアムグレーのフランネルパンツ。胸には、ナポリに行った際、マリアーノ・ルビナッチさんにすすめていただいたペイズリーのシルクのチーフを入れてみました。パフドスタイルで入れることで、胸元に柔らかさを出しています。
ふたつめは、グレンチェックのスーツスタイル。こちらは比較的最近仕立てたものです。「グラフトン」のフレグランスとソープに合わせて、黒のニットタイ、自分のイニシャル入りの白麻のチーフ、シルバーの楕円のカフリンクスを添えてみました。この一着は自分でもかなり気に入っていて、昨年のミラノコレクションでは、かなり海外のジャーナリストたちからスナップされました(笑)。余談ですが、ヨーロッパへの海外出張のたびに、自分のスタイルの参考にしているのが、「素敵なオジサマ」のスタイルです。略して「ステオジ」スタイル。爺(じじい)のクラシックだから「ジジクラ」なんていう呼び方もしているときもありました(笑)。
道を歩いていて「素敵なオジサマ」を見かけると、ついスナップをしてしまうんですね。色の合わせ方から、柄の合わせ方、髪型、立ち居振る舞い、香りまで、「ステオジ」スタイルはじつに深みがあって勉強になるのです。クラシックスタイルにハマってしまったあまり、流行り廃(すた)りの激しい若い人のスタイルからは、残念ながらなんにも感じなくなってしまったんですね。
とにもかくにも「素敵なオジサマ」のスタイルこそが、深みがあって、クラシックの勉強になるのです。もっというなら僕のスタイルの根元なのであります。現在、編集している『オーシャンズ』という雑誌の到達地点も、きっと「素敵なオジサマ」になることなのだと思います。話しによると、父が小学生だったころ、どんなに暑い夏の参観日でも、祖父は真っ白な麻のスーツに身をつつみ、つまみのパナマハットをかぶり、かならず着物に身をつつんだ祖母の手をとって、ゆっくりと現れたのだとか。いつかは僕も「素敵なオジサマ」になりたいものです。このトゥルフィット&ヒルの「グラフトン」との出会いで、余計にそう感じました。「素敵なオジサマ」をめざす方がいらっしゃいましたら、ぜひトゥルフィット&ヒルの「グラフトン」の香りを試してみてはいかがでしょうか? きっと僕が言っていることがわかっていただけると思います。
最後に、このトゥルフィット&ヒルのモニターレポートの機会を与えてくださったこと、本当に感謝しております。山野エミールさんをはじめ、トゥルフィット&ヒル担当の山野ニーナさん、野島公貴さん、そしてオウプナーズ編集部のみなさん、本当にありがとうございました。あらためて御礼申しあげます。
干場義雅(HOSHIBA Yoshimasa)
1973年東京生まれ。三代続くテーラーを営む父を持ち、早くからメンズファッションに傾倒。BEAMSで販売経験後、編集者になり『MA-1』、『モノマガジン』、『エスクァイア日本版』などの雑誌でファッション担当に。2001年、初代編集長、岸田一郎さんに声をかけられ、『LEON』創刊のファッションディレクターとして参画。「モテるオヤジ」「ちょい不良(ワル)」など、同誌のテイストを確立し、一大ブームを作り出す立て役者に。TBSの番組『ジャスト』の亭主改造計画にも岸田さんと出演。2005年より、男性誌『オーシャンズ』の副編集長 兼 クリエイティブディレクターに。『エスクァイア(台湾版)』、『ローリングストーン(スペイン版)』、『ムッシュ(フランス版)』などの海外誌から、自ら編集したページを買われることも。2007年の『ディパーチャー(アメリカ版)』では、人物取材を受ける。引き算をしたシンプルなスタイルが好きで、スタイルの師と尊敬するのは、セルジオ・ロロピアーナさん、フランコ・ミヌッチさん。この6月21日よりはじまるフジテレビの番組『にじいろジーン』のパパ改造計画にも出演。「世界で通用するスタイル」が信条で、海外取材のたびに各国のジャーナリストから写真を撮られたり、取材されることもしばしば。ページを作るのはもちろん、洋服を作ったり、リメイクするのも得意。一貫した哲学は、ライフスタイルや考え方、趣味趣向性を踏まえた上で、人を格好良くすること。
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公式サイト│http://www.oceans-ilm.com/