2015 ミラノサローネ 最新リポート|Viccarbe
Viccarbe|ヴィッカルベ
ミラノサローネ国際家具見本市 2015
ヴァレンシアの太陽のもとで生まれ、育まれたアイデンティティ
1年のうち300日も太陽が降り注ぐという地中海に面した素晴らしい街、ヴァレンシア。ここで生まれ、ここで育った「Viccarbe(ヴィッカルベ)」は、軽やかな風が通り抜けるような、シンプルで洗練された作品で知られる。新作にも貫かれたそのフィロソフィーは、創業者兼CEOでデザイナーでもあるビクター・カラスコ氏と、世界で活躍するデザイナーとのフランクな対話から生まれた創造の賜物だ。
Photographs by Daniele DAINELLIText by KATSURA Kumi
未来を見据えて今日を生きるデザイン
たくさんのブースの中から、ひときわ明るく輝くブースが現れた。ヴァレンシアの「太陽の中でデザインされた」というフレーズに、その明るさの理由が示されている。
私たち、地球に住まう生命は、太陽の光から生まれた。さらにその光は、私たちを囲む自然、そして身の回りにあるモノを照らし出し、さまざまな違いを感じさせる。ヴィッカルベのコレクションは、1年に300日以上太陽が降り注ぐ地中海の街、ヴァレンシアでデザインされ、実現される。地中海に注ぐ甘く穏やかな太陽がつくる繊細な色の変化を映し出した、明るい色調とあたたかみのある素材感こそ、ヴィッカルベのアイデンティティといえよう。
新作をはじめ各コレクションは、カラーやモデルのコンビネーションが多様に展開されている。機能性と合わせて、明るい色調からエレガント、ニュートラルなものまで選択することが可能となり、空間との調和をつくりながら視覚的なリラックス感を生み出すことができる。
これらのコレクションを生み出したヴィッカルベのワークスタイルも、まさに“ヴァレンシア的”といえる。陽気で愛嬌のある地中海的な振る舞いやコミュニケーションを通して、ヴィッカルベというブランドのもつ精神性が製品に反映されていくのだ。
「僕たちの仕事の進め方は、ヴァレンシアのライフスタイルそのもの。だから食事の時間をともにし、真摯に話しながら仕事をする。ビジネスは、人がつくるものだと信じている」とCEOのビクター・カラスコ氏は語る。
今年度は、ジャン・マリー・マッソー氏、ピエロ・リッソーニ氏、ビクター・カラスコ氏の手がけるコレクションに新しいバリエーションがくわわったほか、日本の若手デザイナー、田渕智也氏によるアームチェア「NAGI(ナギ)」が発表されたのも嬉しいニュースだ。
日本人デザイナー田渕智也の新作も登場
「NAGI」は、昨年のミラノサローネ期間中に田渕智也氏が提案したアイデアのひとつがカラスコ氏の目に留まったのをきっかけに開発がはじまり、今年のミラノサローネで新作発表にいたったという。
「“ロビーやリラックスエリアで使うことができる椅子が欲しい”という具体的なリクエストからアイデアを練りはじめた。キーワードとなったのは“ハイバック・ロッキングチェア”。ふたつの機能を併せもった椅子は意外性がありおもしろいということで開発がスタートし、当初のアイデアよりも背もたれがグッと高くなり、最終的に頭をすっぽりと包む形状に発展した。スピード感をもって製品が洗練されていくヴィッカルベとの対話が刺激的だった」と田渕氏は語る。
世界各国の著名デザイナーとの対話を通じて、異なる文化の影響を受けながら、世界に対するさまざまな感覚やビジョンを、地中海の風をまとった製品に置き換えて、「ヴィッカルベ」という見えない糸で繋がった、独自性の高いコレクションをつぎつぎと展開していく姿勢は、未来を見据えて今日を生きるデザインスタイルといえるだろう。
エ インテリアズ
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