Ferrari 458 Italia|刺激的な走りを実現する2シーターベルリネッタ
Ferrari 458 Italia|フェラーリ 458 イタリア
刺激的な走りを実現する2シーターベルリネッタ(1)
2010年5月29日から30日の2日間にわたって富士スピードウェイでおこなわれた、フェラーリ・ジャパン主催「フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2010」において、あらたなV8ミッドシップエンジンの2シーターベルリネッタ「フェラーリ 458 イタリア」が日本初披露された。
写真=望月浩彦、フェラーリ・ジャパン
ピニンファリーナによる究極のデザイン
すべてのフェラーリは、エアロダイナミクスを考えぬき、スタイリングの美しさを追求した妥協のないデザインアプローチによりつくられている。今回の458 イタリアはおなじみのピニンファリーナによるデザイン。コンパクトで空力特性にすぐれたラインを特徴とている。
ノーズ部分には、フロントグリルとサイドエアインテークを兼用する単一の開口部を設け、冷却ラジエーターと新形状のフラットアンダーボディへと空気が流れるよう設計されている。また、ノーズ部分には小型空力弾性ウイングレットも装備。ダウンフォースを発生されるとともに、速度の上昇におうじて変形することで、ラジエーターインテークの開口面積を縮小し、空気抵抗を減少させている。
感動のパフォーマンス
リアミッドにマウントされるのはドライサンプ式の90°V8 4,499ccエンジン。新開発のこのエンジンは、ロードカーとしては世界初のレブリミット9,000rpmを誇り、12.5:1の高圧縮比と570HPの最高出力を実現している。また、1リッターあたり127HPの出力は自然吸気エンジンとしての基準を塗り替える圧倒的なパワーを発揮する。
最大トルクも540Nm/6,000rpmと強力で、その8割を3,250rpmから発生することで全回転域での鋭いピックアップを可能にした。1リッターあたりのトルクも120Nmと、同等の排気量をもつモデルのなかで過去最高を誇る。
エグゾースト・システムは、フェラーリV8のユーザーが慣れ親しんできた刺激的なサウンドを奏でるように設計さすると同時に静粛性もかなえている。また、プレ触媒コンバーターも廃止され、重量を削減するとともに背圧を低減し、厳しい基準のユーロ5およびLEV2排出ガス規制をクリアしている。
Ferrari 458 Italia|フェラーリ 458 イタリア
刺激的な走りを実現する2シーターベルリネッタ(2)
F1デュアルクラッチ・ギアボックスを採用
458 イタリアの重要な新機構のひとつが、迅速かつスムーズなシフトチェンジを実現する7速F1デュアルクラッチ・ギアボックスだ。これは2本の独立した入力シャフトを使用し、あらかじめ選択された奇数ギアおよび偶数ギアを個別に制御する技術。変速に要する時間は皆無で駆動輪へのエンジントルク伝達が途切れることがない。また、電気制御デファレンシャルもギアボックスに一体化され、コンパクトかつ軽量なユニットとなっている。
シャシーも新規開発されたものが採用されている。従来のアルミニウムにくわえ、新合金を使用するとともに、航空産業向けに開発された高剛性アルミ成型材なども取り入れられている。サスペンションは、これまでにないあたらしいダブルウィッシュボーン。ホイール軸と平行のアームと、それより長いリア側のアームで構成されるL型のロアウィッシュボーンが特徴で、縦方向のフレキシビリティに大きく貢献している。これにより路面の凹凸を吸収する能力が向上し、サスペンションノイズも低減されている。また、優れたハンドリングをもたらすことにもひと役買っている。
ブレーキはブレンボ製カーボンセラミック・ブレーキが装備される。フロントに6ポット・アルミ製キャリパー(398×223×36mmローター)、リアに4ポット・アルミ製キャリパー(360×233×32mmローター)が備わる。
レースの世界を想起させるドライバー視点のインテリア
ダッシュボードはレザー張りになっており、左右のサテライトポッドと使用頻度の低いスイッチ類が収められた単一のフレームとして機能するアルミインサートの上にメーターパネルが配置されている。独特の形状をもつ吹き出し口は、数年前まで使用されていたF1マシンのエグゾースト・アウトレットのデザインを模したものだ。
また、主要なスイッチ類の位置をはじめから見直し、真にドライバーのためのコクピットをかたちにした。使用頻度の高いスイッチ類がすべて直接ステアリングホイールに配置されるいっぽう、頻度の低いスイッチはダッシュボードの両サイドに拡張された左右のサテライトポッドに取り付けられている。こうしたレイアウトは安全面を重視し、ドライバーが運転に完全に集中できるように考えられたもの。こうした妥協のないアプローチは、フェラーリのもつF1のノウハウから直接フィードバックされたものだといえる。
Ferrari 458 Italia|フェラーリ 458 イタリア
ボディ|全長4,527×全幅1,937×全高1,213mm
ホイールベース|2,650mm
車両総重量|1,485kg
エンジン|4,499cc V8 90°
最高出力|425kW(570HP)/9,000rpm
最大トルク|540Nm(398lbs/ft)/6,000rpm
トランスミッション|F1デュアルクラッチ・トランスミッション 7速
サスペンション形式|前後ともにダブルウィッシュボーン
タイヤサイズ|255/35 20"X8.5"(フロント)、295/35 20" x10.5"(リア)
価格|2830万円
フェラーリ・ジャパン
Tel.03-6890-6200
BRAND HISTORY
“カヴァリーノ・ランパンテ”、日本では“跳ね馬”と称されるエンブレムに胸躍らせるファンは少なくない。サーキットではその激しい走りに観衆は熱狂し、ストリートでは端麗なシルエットと甲高いサウンドで人々を魅了するクルマ、それがFERRARI(フェラーリ)だ。F1、市販車のいずれにおいても、スピードを極めるこのブランドは、創業者であるエンツォ・フェラーリの情熱がいまなお強く息づいている。
1898年にイタリアのモデナで生まれたエンツォは、10歳のときボローニャで見たレースに感激し、いつしか自分もレーシングドライバーになろうと思うようになる。一途な思いは着々と実現へ向かい、1920年、エンツォはついにアルファ・ロメオのテストドライバーとなった。そして、同じ年のタルガ・フローリオではアルファのドライバーとして参戦、見事2位の記録を残している。
しかし、やがてエンツォの興味はレーシング・チームを運営することへと移り、1929年にスクーデリア・フェラーリを立ち上げて、アルファのレース活動を引き受けることに。その手腕を発揮するにもかかわらず、1939年にはアルファとの関係は解消され、第二次大戦後の1947年、自前のV12エンジンを積む「フェラーリ125」を引っさげてレース活動を再開。ここからスポーツカーブランドとしてのフェラーリが歩みはじめた。
その後、フェラーリはフィアット傘下に入り、現在はフィアットグループの会長を兼任する社長のルカ・モンテゼーモロのもとで、ブランドの魅力を高め続けている。ラインアップは、V12エンジンを積む「599」と「612スカリエッティ」、V8のミドシップスポーツ「F430」「F430スパイダー」、そして、スポーティさを極めた「430スクーデリア」の5モデルである。