ランボルギーニによる雪氷上のドライビングトレーニング (後編)|Lamborghini
CAR / IMPRESSION
2015年2月23日

ランボルギーニによる雪氷上のドライビングトレーニング (後編)|Lamborghini

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ

ランボルギーニが開催する雪氷上でのドライビングトレーニング「ウィンター アカデミア」。「アヴェンタドール」、「ウラカン」が“教習車”の豪気なスクールに参加した大谷達也氏がレポートする。後編では、さらにテクニックを磨く奥義の伝授が待っていた。

前編「ランボルギーニによる雪氷上のドライビングトレーニング」はこちら

Text by OTANI Tatsuya

ウィンタードライビングの醍醐味

今回走行したコースは、タイトコーナーを主体とした長めのサーキットがひとつと、これに組み合わされる形で設けられたスキッドパッドが2ヵ所。さらに、パイロンを使ってジムカーナ的な走りを体験できるスペースが2ヵ所用意されていた。

基本的には、受講生が助手席に座ってインストラクターのデモ走行を体験した後、インストラクターと受講生が入れ替わり、受講生のドライビングに対して助手席に腰掛けたインストラクターがアドバイスをおこなうという形でアカデミアは進行していった。

最初におこなったのはサーキットの慣熟走行。私を担当してくれることになった“ケイ”インストラクターに続いてステアリングを握ってみたが、いくら4年前に内モンゴル(このときの“教習車”はガヤルドのみ)で体験したとはいえ、車種も路面状況もことなるので最初からあまり大胆なことはできない。しかも、「アンダーステアを出したくない」という考えが頭に染み込んでいるから、どうしても大舵角をあたえることができない。

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

すると助手席のケイが「この部分は雪上だから、もっと大きくステアリングを切っても大丈夫」とアドバイスしてくれた。この言葉に勇気づけられて少しずつステアリングを切り増すと、なるほど、雪上路であればおもいがけないほどフロントタイヤがグリップし、ノーズがイン側を向く方向にクルマ全体が回り始める。いわゆるヨーが立ち上がるというヤツだ。このヨーを立ち上げることさえできれば、あとはスロットルを大胆に踏み込むだけでウラカンはあっけなくテールアウトの姿勢を示すのである。

私はウラカンでポールリカールのショートコースを走ったことがあるが、そのときはどうしてもできなかったオーバーステアが、ここではいとも簡単にできてしまった。これこそウィンタードライビングの醍醐味というものだろう。


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ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ (2)

雪上のウラカンは驚きの扱いやすさ

もっとも、雪上でのウラカンは驚くほど扱い易い。プログラムの前半ではESPをオンにしたまま走行したが、このままでもかなりのスリップアングル(つまり大きく横を向いた状態)まで許してくれるほか、ドライバーが操作するカウンターステアと干渉を起こすこともなく、しばらくオーバーステアを保つとスムーズにリアのグリップを回復してくれる。

雪上ないし氷上での走行まで視野に入れたとおもわれるこのESPのチューニングは極めて巧妙で高く評価できるものだ。

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

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また、当然のことながら4WDであることもコントロール性を高めている。4WDは、なにも滑りやすい路面でも確実に前進できることばかりがメリットではない。前輪駆動とおなじように、クルマを前に引っ張ることによって、クルマがテールアウトになるのを防ぐ、いわばスタビリティを高める効果があるのだ。

しかも、雪上ではこの「フロントでスタビリティを高める」と「リアでテールアウトに持ち込む」というふたつの作用が絶妙にバランスし、「安定したオーバーステア」という、よくできた4WDスポーツモデルでしか体験できないハンドリングを実現していたのである。


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ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ (3)

8の字ターンでのドリフト

続くカリキュラムは、パイロンを4本並べ、ここで8の字を描くように走行することでオーバーステアとアンダーステアを体験するというもの。ターンする直前まできたらステアリングを大きく(120度くらい?)切り、そこでスロットルを一度“ファン!”と吹かすとテールが外側に流れはじめるので、素早くカウンターステアを当て、クルマの向きが180度変わったところでドリフトを収める練習をするのだ。

これも最初のうちはスロットルを踏み込む加減がわからず、じゅうぶんテールスライドを起こせなかったり、反対に回りすぎてしまうこともあったが、ターンする場所によって路面のμが異なっていることを把握できれば、それにあわせて踏み込み量を調整することできれいなスピンターンを決められるようになる。

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また、ステアリングを切るタイミングとスロットルを踏み込むタイミングをいろいろと変えると、おなじ操作量であってもオーバーになることもあればアンダーになることに気づくことも、このカリキュラムの大切な役割といえるだろう。

続いてスキッドパッドでの定常円旋回に臨む。通常、定常円旋回では一定のドリフトアングルのまま何周もスキッドパッドを曲がれるようになるのが理想とされるが、一部に雪がかぶった氷上のスキッドパッドでこれを実現するのはなかなか難しい。正直にいえば、インストラクターでさえなかなかできなかったくらいだ。


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ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ (4)

より上級者を目指すテクニックを伝授

ただオーバーステアにするだけなら、大きめにステアリングを切ってスロットルを深く踏み込めば、先ほどの8の字コースとおなじ原理でテールはくるりと向きを変えるが、これは瞬間芸のようなもので、一定のドリフトアングルを保ったまま走り続けるのはやはり難しい。

それでも助手席のケイは、私にテールスライドの楽しさを体験させたいらしく、大きな挙動を用いたこのテールスライドのテクニックを伝授しようとしてくれたのだけれど、そこにチーフインストラクターのピーターがあらわれると、ケイにイタリア語で何事かを告げていった。

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

聞けば、ほとんど止まった状態から大舵角と深く踏み込むスロットル操作でドリフトさせるのではなく、グリップ走行の限界近くまでスピードを上げ、そこからさらに加速することで精妙なドリフトコントロールをさせるように心がけろとアドバイスされたらしい。

これを聞いて、私はウーンとうなってしまった。ケイの言っていることもピーターの言っていることもよくわかる。ただし、ケイの方針はオーバーステアをまだほとんど経験したことのないドライバーに「いままで見たことのない世界」を体験させるのに有効であるのに対し、ピーターの方針はより正確でより微妙なコントロールを習得させるという、上級者向けの内容なのである。


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ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ (5)

ランボルギーニのポテンシャルを体感

その後、ケイと私はピーターの示した方向でウラカンをコントロールしようと努めたが、実はこれ、低速でドリフトさせる安全なケイ方式とちがってそれなりの車速が必要になるため、テクニックが伴わないとリスキーなドライビングになりかねない。それでも私は、時間をかけて「ていねいなドリフト」ができるように練習を繰り返した。

顔見知りの同業者が昼くらいで満足してしまったのに、このコントロール方法を完璧にマスターすることを希望した私が「もう少し走りたい」という気持ちを引きずったままプログラムの終わりを迎えたのは、この辺の考え方のちがいに理由があったような気がしなくもない。

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア

それにしてもランボルギーニは豪気だ。いくら雪上、いくら氷上とはいえ、それなりの速度で雪の壁に突っ込めばクルマにダメージが及ぶだろう。そんな心配をおくびにもださず、ただただランボルギーニのポテンシャルを私たちに知らせようとするこのドライビングスクールは、何よりも自社製品への深い愛情と自信の証であるとおもわずにはいられなかった。ランボルギーニに、心から感謝である。

Lamborghini Aventador LP 700-4 Roadster

ランボルギーニ アヴェンタドール LP 700-4 ロードスター
ボディ|全長 4,780 × 全幅 2,030 × 全高 1,136 mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,720 / 1,700 mm
重量|1,625 kg
エンジン|6,498 cc V型12気筒
ボア×ストローク|95×76.4 mm
最高出力| 515 kW(700 ps)/8,250 rpm
最大トルク|690 Nm/5,500 rpm
トランスミッション|7段ISR(シングルクラッチ セミオートマチック)
駆動方式|MR 4WD
サスペンション 前/後|プッシュロッド・システム付きホリゾンタル・モノチューブ・ダンパー
タイヤ 前|255/35ZR19
タイヤ 後|335/30ZR20
ブレーキ 前|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク
最高速度|350 km/h
0-100km/h加速|3.0 秒
燃費(NEDC値)|16.0 ℓ/100km(およそ6.3km/ℓ)
CO2排出量|370 g/km
価格|4,793万4,720 円(税込)

Lamborghini Huracan LP 610-4|ランボルギーニ ウラカン LP 610-4
ボディ|全長 4,459 × 全幅 1,924 × 全高 1,165 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,668 / 1,620 mm
重量|1,422 kg
エンジン|5,204cc V型10気筒
ボア×ストローク|84.5 × 92.8 mm
最高出力| 449 kW(610 ps)/8,250 rpm
最大トルク|560 Nm/6.500 rpm
トランスミッション|7段LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)
駆動方式|MR 4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン
タイヤ 前|245/30R20
タイヤ 後|305/30R20
ブレーキ 前|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク
最高速度|325 km/h
0-100km加速|3.2 秒
燃費|12.5 ℓ/100 km(およそ8.0km/ℓ)
CO2排出量|290 g/km
価格|2,970 万円(税込)

ランボルギーニ カスタマーセンター
0120-988-889

           
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