ランボルギーニによる雪氷上のドライビングトレーニング (前編)|Lamborghini
Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア
ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ
ミッドシップ4WDモデルを精力的に手がけるランボルギーニは、雪氷上でのドライビングトレーニング「ウィンター アカデミア」を定期的に開催している。アヴェンタドール、ウラカンをおもいっきり雪のなかで走らせることのできるこのトレーニングに、大谷達也氏が参加した。今回はその前編をお届けする。
Text by OTANI Tatsuya
スーパーカーと氷雪のミスマッチなトレーニング
ミッドシップ スーパースポーツカーと雪上ないし氷上走行。これほどチグハグな組み合わせは滅多にないだろう。
舗装路で強大なグリップを生み出す超ワイドなリアタイヤは雪や氷の上ではまったく役に立たず、自慢の大パワーは路面に伝えられることなくただタイヤを空転させるばかり。それに、スーパースポーツカーは最低地上高が極端に低いからチンスポイラーで雪をかくラッセル車(古い?)になりかねないし、そもそも不動産が簡単に買えるくらいの価格がするクルマでそんな無謀な挑戦をする輩がいるとはおもえない。いってみれば水と油、月とスッポンのようなものである。
この、まったく不釣り合いとしかいいようのない組み合わせに企業を挙げて取り組んでいるブランドがある。それが、あのランボルギーニだ。
よりによって、スーパースポーツカーのなかでもとりわけ過激で、オフロード走行のことなんてまったく考えていないようにおもえるランボルギーニが、その名も「ウィンター アカデミア」と称して雪上ないし氷上でのドライビングトレーニングを定期的におこなっていることは知る人ぞ知る事実。
もっとも、私はいまから4年前に中国の内モンゴルでおこなわれたランボルギーニ ウィンター アカデミアに参加していたので、この奇想天外な組み合わせが意外にも相性がいいことを実体験として知っていた。
Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア
ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ(2)
ミッドシップ4WDを手がけるランボルギーニならでは
相性のよさの理由の大半は、現在のランボルギーニがミッドシップ4WDモデルを精力的に手がけるほとんど唯一のスーパースポーツカーブランドであることによっている。だから、たとえ雪上や氷上でも強大なトルクを効率的に路面に伝えることができる。
これがなければ、ただもどかしいばかりで、スロットル操作とハンドリングのデリケートな関係を知ることはほとんど不可能となるはずだ。
もうひとつ、ランボルギーニにとって幸運だったのが、彼らの製品にライン装着されるタイヤの多くがピレリ製であることによる。
ご存知のとおり、ピレリはスーパースポーツカーにも装着可能な「ウィンター ソットゼロ」というタイヤをラインナップしている。このタイヤ自身は、氷上性能に主眼を置いた日本向けスタッドレスタイヤとことなり、それらよりもう少し高いスピードレンジを得意とするウィンタータイヤだが、ランボルギーニの4WDと組み合わせれば雪道をこともなげに走れるし、氷の上だってなんとか前に進める。
このタイヤがなかったら、おそらくランボルギーニ ウィンター アカデミアは成立しなかったとおもえるほど重要な役割を果たしているのだ。
Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア
ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ (3)
氷上と雪上の大きなちがいとは
だいぶ前置きが長くなってしまったが、本題に入る前にもう一点だけつけくわえておきたい。ここまで私は「雪上ならびに氷上」とふたつを区別して話を進めてきた。冬によく遭遇するこのふたつの路面こそ、じつは月とスッポン、天と地ほどのちがいがあることを深く理解しておいたほうがいい。
たとえば、ウィンタータイヤを装着した4WDモデルであれば、よほどの急坂や深い新雪でない限り、雪上でもほとんどフールプルーフに走れるはずだ。
けれども、氷上ではそうはいかない。ステアリングはよほど丁寧に操作しない限りアンダーステアになるばかりでクルマの向きを変えることはかなわず、ブレーキだってほとんどないも同然。たとえ4WDでもエンジンパワーを路面に伝えられず、前に進むことさえ覚束なくなるのが氷というものなのだ。
ちなみに、今回ウィンター アカデミアの会場となった女神湖は、湖面に張った氷の上を走る氷上路走行が主体となるコースとして知られる。平坦で引き締まった雪上路を走るのとは、まったくワケがちがう。こうしたロケーションを選んだあたりにも、ウィンター性能に関するランボルギーニの自信がにじみ出ているといえる。
それでは、私が受講したウィンター アカデミアについて紹介することにしよう。
Lamborghini Winter Accademia|ランボルギーニ ウィンター アカデミア
ランボルギーニで雪氷走行テクニックをまなぶ (4)
1日に︎わずか16名の少人数制
試乗車は最新の「ウラカン LP610-4」とフラッグシップモデルである「アヴェンタドール LP700-4」の2車種。どちらも4WDであること、ピレリ ウィンターソットゼロ3を装着していることはいうまでもない。
今回はアヴェンタドール1台、ウラカン3台の計4台がコース上に並べられていたが、実際にはさらに数台のウラカンがバックアップとして用意されていたようだ。主催者側は口に出してそう言うことはなかったけれど、「せっかくのチャンスなのだから、手加減せずにおもいきって走って欲しい」という彼らの願いがにじみ出ているような、充実の体制である。
今回は、イタリア本国からチーフインストラクターとしてピーター・ミューラー氏が来日していたほか、檜井保孝氏、ケイ・コッツォリーノ氏、番場 彬氏、坂本祐也氏の4人がインストラクターとしてピーターをサポートした。そして、各インストラクターがリーダーとなって4つのチームを形成し、そこに各4人の受講生が配属された。
つまり、1日に受講できるのは最大でもたった16名。今回はわれわれメディア関係者だけでなく、日本やアジア各国の顧客が参加できる日程も組まれており、全部で6日間にわたって開催されたそうだが、かりにそのすべての枠が埋まったとしても96名にしかならない。
さらに、今シーズンのウィンター アカデミアは、今回の女神湖を含め全世界でたった3ヶ所でしか実施されないという。つまり、今年ウィンター アカデミアに参加できるのは、世界中で300人にも満たないのである。
ご参考までに申し上げると、一般の参加料は40万円ほど。これで、ランボルギーニを雪上ないし氷上でおもいっきり走らせ、一流インストラクターからアドバイスが得られるとなれば、かなりお得な価格設定といえるのではないか。
なお、受講生は4人ひと組で1台のランボルギーニを走らせるので待ち時間はそれなりにあるが、それを1日続けるのだからさすがに走り甲斐がある。なにしろ、おなじイベントに参加した顔見知りの同業者などは、昼まで走ったところで「もう満足」と口にするくらい、充実した内容だったのである。