藤原美智子の「色」ものがたり第6回 11月 いま、必要なのはグレィッシュ感!?
BEAUTY / THE EXPERTS
2015年5月11日

藤原美智子の「色」ものがたり第6回 11月 いま、必要なのはグレィッシュ感!?

2008.11  「いま、必要なのはグレィッシュ感!?」

ヘアメイクアップアーティストととして活躍される藤原美智子さんに、「色」にまつわるエピソードを語っていただく連載。
シックスセンスのうち、“視覚”はどれだけのドラマを日々紡ぎ出しているのだろうか──目に映る彩を心で感じ、味わうことで、そこにいみじくもドラマが生まれる。
こんかいのテーマは「グレィッシュ」。春夏コレクションから政治にまで思いが及んで……。

文=藤原美智子Photo by Jamandfix

ファッションは世の中の“気分”を色濃く反映するもの

'09春夏コレクションで心魅かれる色がある。それはピンクやパープル、イエロー、ペパーミント、あるいはグレーなどに透明感のある明るいグレーをミックスしたような色、グレィッシュがかったペールトーンである。

そんな優しく柔らかな色合いに魅かれるのはなぜだろう? 理由をあえて挙げるとしたら、政治・経済の先行きの見えない不安感を優しい色合いで包み込んでもらいたいという心の表れだろうか。それとも、ただ単にいままでのビビッド好きな私の好みが変化しただけだろうか。いずれにしろ、ファッションというものは世の中の“気分”を色濃く反映するものだから、私だけの変化ではないはず。

ところで話は変わるが、以前、日本人を指して「YES,NOのハッキリしない国民」などと、他国からさんざん批判されていた時期があったことは周知のとおり(いまも言われているのだが)。そのとき、私は「いいじゃない! YESの良さもNOの良さもわかるからこそ、ハッキリ言えないこともあるの! 中間の良さというのを知らないのかしら!(プンプン)」などと一人、憤慨していたものだ。
もちろん、ハッキリしないことによって問題が発生する確率は高くなるし、そうした国民性の日本にさえ「白黒はっきりしろ!」なんていうフレーズが存在する。そして白と黒の中間色であるグレーは、“グレーゾーン”などと悪い意味で使われることが多い。良い意味で捉えると“どちらも理解できる”であるが、悪い意味ではどちらも選び取れない“どっちつかず”ということだ。物事には良い面と悪い面は表裏一体である、ということをもっとも表しているのがグレーなのかもしれない。

そんなグレーのイメージとグレィッシュな色合いとの違いはなにかと考えてみたのだが、それは透明感の有無ということではないだろうか。透明感があれば元の色をニュアンスのある素敵な色に変えてくれる。でも、それがなければただ覆い隠してしまうだけ。そう思うといま、政治にも人にも必要なのは、この透明性のように思う。
双方の良い部分を引き出して1+1を2以上に変化できる透明性がいまこそ必要なのであり、「俺が、オレが」と声高に主張して1+1が1にしかならない“不透明”をしている場合ではないはず。最近、テレビから流れる政治のニュースを見ていると、つくづくとそう思うのだ。……そうか、ファッションのグレィッシュな色合いに心惹かれたのには、そういう理由があったのかもしれない!?

           
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