Smart fortwo|スマート・フォーツー|第17回 (前編)|「都市のクルマ、スマート」
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2015年4月14日

Smart fortwo|スマート・フォーツー|第17回 (前編)|「都市のクルマ、スマート」

第17回 スマート・フォーツー(前編)

「都市のクルマ、スマート」

大都会のなかでうごめく小さな移動体──全長3メートル以下、軽自動車よりはるかにコンパクトな2人乗り「スマート」の最新2代目が、日本の道でも姿をあらわしはじめた。
「都市のクルマ」という新しいジャンルを開拓する、メルセデス・ベンツの意欲作のニューモデルはいかに?

文=下野康史Photo by Smart

“カボチャ顔”は街の景色の一部に

仕事でヨーロッパに行くと、そのたびにスマートが増えていて、うれしくなる。とくにイタリアとフランスが目立つ。ミラノやパリなどは、“ハロウィンのカボチャ顔”がすっかり街の景色の一部になっている。

海外ニュースで現地からの中継が流れると、背景に映っていたり、走りすぎたりすることも多い。たったいまも、中国のチベット政策に反対する自由主義勢力に反対する中国人(ややこしい)のデモがパリで行われているというニュースが流れた。五星紅旗を振りかざした在仏中国人が乗っていたのが、黒い「スマート・フォーツーカブリオ」だった。使われ方としてはうれしくないが。

ちなみにスマートは当初、スウォッチとダイムラー・ベンツ(当時)の合弁会社MCCが手がけていたが、現在はダイムラーAGが展開する事業のひとつで、生産工場はドイツ国境に近いフランス国内にある。

ヨーロッパではすっかりおなじみになったウルトラ・コンパクトカー「スマート」。2代目の新型は、いよいよ世界最大の自動車マーケット、アメリカで展開がスタート。原油高、温暖化といった今日直面する問題に切り込む“賢い方法”となるだろうか。

パーカビリティのために

ヨーロッパの大都市で目立つスマートも、人口の少ない地方へ行くと、途端に少なくなる。スペインやポルトガルの田舎道を走っていて、30分ぶりにすれ違ったクルマが韓国のヒュンダイであることは最近めずらしくないが、それがスマートである確率は低い。

高級車か大衆車か、実用車かスポーツカーか、セダンかクーペか、FFかRRか、なんてこと以前に、スマートは「都市のクルマ」なのである。初代モデルが発売される前のオリジナル名も、「スマート・シティ・クーペ」だった。2人乗りと割り切って、全長2.5mの短躯を実現したのは、第一にはヨーロッパの過密な大都市におけるパーカビリティ(駐車容易性)のためである。

曲線を多用した初代よりおとなしいが、ドアトリムやダッシュボードを覆うシート地、インストルメントパネルの造形など、十分に個性的なインテリア。シートベルト一体型の座席につくと、前方に広がるスペースが意外と広いことに驚くだろう。

新型はおもしろくない!?

そのスマートが2代目に移行した。興味のない人には、どこが変わったのかまったくわからないかもしれないが、まずボディが大きくなった。旧型に比べると、18cmも長くなり、幅は5cm広がった。

中身で変わったのは、リアマウントされるパワーユニットである。メルセデスが開発した698cc 3気筒SOHCターボにかえて、今度は三菱自工製の999cc 3気筒DOHCが搭載される。アクセルとブレーキのみの2ペダル・セミ・オートマチックも、ザックス製6段から、ゲトラク製5段に刷新された。ボディやエンジン排気量の拡大も、ギアボックスの変更も、これから本格的にはじまる対米輸出を見据えてのことだろう。

2720mmのボディ全長は、軽自動車の最大枠より70cm近く短い。依然、度をはずれて小さいクルマには違いないが、超のつくコンパクトさに惚れて初代スマートを2台乗り継いでいるぼくとしては、今回の大型化はおもしろくない。さらに、乗ってみると、ますますおもしろくなかった。旧型の欠点がほとんどすべて解消されていたからだ。

           
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