イラストレーターとパリの五月(2)=フィンランドとハワイの話
「イラストレーターとパリの五月」(2)
九重加奈子さんにフィンランドとハワイの話を聞く
interview&text by SUZUKI Fumihiko
ハワイの絵は、ハワイ的
フィンランドで有名な画家っていますか?ロッタちゃんがその辺だったような……
「ロッタちゃんは隣のスウェーデンですね。ムーミンがフィンランドです。ムーミンの原画の美術館があって。あの人はムーミンを描く前に政治新聞の風刺漫画なんかをやっていたらしいんです。それがすごくよかったです。」
― 冬の間はみんな何をしているんですか。
「クロスカントリースキーとか、あとは……映画いったり、友達のうちにいったり。」
― スキー、やりましたか。
「やりました。海も全部凍っちゃうので、海の上でも出来るんです。毎週いってましたね。」
― そんなにいつも雪が降っているんですか。
「はい。でも寒すぎてあんまり積もらないんです。飛ばされちゃって。少し暖かくなると積もるんです。」
― 夏はどうなんですか。
「夏は、夜中まで明るいんですね。パリよりも。その時は一日で二日分くらい遊べるんです。一応、25度くらいまでにはなるし。」
― フィンランドには2年いたんですよね。
「そしてハワイに一年半。」
― フィンランドからハワイってまた随分と違いますね。
「ハワイ大好きです。」
― 僕も旅行で行ったことがあるんですけれど、あそこじゃあ働く気がしなさそうですね。
「それが困ったところで、あんまり長居をすると……マンゴーは落ちてるし、外で寝ても寒くないから死なないし。」
― ハワイはどこだったんですか。
「オアフ島です。パリにも海があればなぁって思うんですけれど。フィンランドからハワイだったので天気がいいと外に出なきゃっていう刷り込みがあって、毎日外に出ていたんですけれど、あるとき気がつきました。ハワイは毎日天気がいいんですよね。」
― 本当に常夏なんですか。
「地元の人は泳ぎに行かなくなるような時期なんかもあるんですけれど、でも、泳ごうと思えばいつでも泳げますよ。」
― 観光客が一杯なんじゃないですか。
「確かにいっぱいなんですけれど、限られた場所だけなので、誰もいないようなビーチがあちこちにありますよ。山も綺麗なんです。ハイキングしたり。泳いでいる横にアザラシがいるようなビーチもあるんですよ。」
― サメが出たりは?
「出ますよ。近くに島があって、泳いでいけるかやってみたことがあるんですけれど、一緒にいた人が途中で引き返そうっていって、後で聞いたら、そこがサメの巣だったんですよ。」
― その間、お仕事は。
「全然する気がしなかったです。多少は日本からの仕事を請けたりしたんですけれど。」
― でも描くことは続けていたんですよね。
「ええ。ホームページも作ったし。それが画期的だったんです。絵をいちいち持ち歩かないでも、名刺を人に渡すだけで見てもらえるので機会も増えるし、それにその頃、ホームページを使って売り込みをするっていうスタイルがまだ始まったばかりだったんです。だから、反響は結構あって、色々仕事がもらえたりしたんです。」
― ハワイにいるときに描いている絵はやっぱりハワイ的になるんですか。
「そうですね。明るくなって。描いているときに挿す光も違うし。」
― イタリアの絵画なんかも明るいですもんね。
「ルーブルでもイタリア絵画とフランス絵画の境目に行くと、びっくりするほど違いますよね。ああやってならべてあるのも面白い。」
話を聞いていると、加奈子さんはイラストや言葉遣いから受ける物静かな印象をやや裏切って、なかなか活動的な人物のようだ。
※九重加奈子さんのホームページ
http://www.geocities.com/kanakoinhawaii/