アルファ4Cデザイナー、マッコリーニ氏インタビュー|Alfa Romeo
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2015年1月13日

アルファ4Cデザイナー、マッコリーニ氏インタビュー|Alfa Romeo

Alfa Romeo|アルファロメオ

根っからのアルフィスタ

アルファ4Cデザイナー、マッコリーニ氏インタビュー

さきごろ発表されたピュア スポーツカー、アルファロメオ「4C」。日本でのお披露目に合わせて、イタリアからエクステリア担当のチーフデザイナーが来日した。ため息が出るような美しいボディはどうやって作られたか。インタビューを通じてあきらかにしよう。

Interview & Text by OGAWA FumioPhotographs by ABE Masaya

4Cのデザイナーは生まれついてのアルフィスタ

──最初に、ご自身の人生とアルファロメオとのかかわりについて、教えてください。

マッコリーニ氏 私はデザイナーとしてアルファロメオひと筋できています。そもそも私とアルファロメオの個人的なつながりは、父です。アルファロメオの大ファン、いわゆるアルフィスタだったんですよ。初代の「ジュリエッタ」「ジュリア」、そして「GTV」と乗り継いでいました。ミラノ人の父からは、やはりミラノのメーカーであったアルファロメオの魅力をさんざん吹き込まれていましたから。私もアルファロメオ以外はクルマでないと思うようになるわけです。

──細かいことを訊きますが、GTVとは、1960年代に発表された「1750GTV」? ベルトーネがスタイリングを手がけた美しいクーペですか。

マッコリーニ氏 父が持っていたのは、ジウジアーロ・デザインの「アルフェッタ GTV」です。私は運転免許を取得する前から、父の運転のとき助手席に座って、ハンドルを切るまねやギアチェンジをするまねをして、自分が操縦する気分を味わうのが好きでした。アルファロメオっていうのは、そういう気持ちにさせるクルマなんです。

Alfetta GTV 2.0(1976-1980)

──ミラノ人にとってアルファロメオは、たとえばBMWやポルシェより上に位置する存在なのでしょうか。

マッコリーニ氏 たしかに、ALFAとは“アノニマ ロンバルダ ファブリカ アウトモビリ(ミラノのあるロンバルディア地方の自動車製造会社)”の頭文字ですから、アルフィスタにとって、特別な存在です。心に一番近い存在、ってわかりますか? あるひとたちにとって、アルファロメオはダントツなんです。いまは、アルファロメオがたんなるイメージや思い入れを超えて、誰もがすばらしいと認めるクルマづくりをする時代が来ていると思います。それが4Cなのです。

Alfa Romeo|アルファロメオ

根っからのアルフィスタ

アルファ4Cデザイナー、マッコリーニ氏インタビュー (2)

3つのキーワードを念頭に眺めてほしい

──4Cはアルファロメオ・ファンのみならず、クルマ好きならみな興味を惹かれるスタイルですね。

マッコリーニ氏 このクルマの最大の役割は、アルファロメオのフラッグシップであることです。過去のアルファロメオと現在のアルファロメオの要素をとりこみながら、未来を見せていく。それが私の仕事でした。過去のモデルとの関連が話題に出ますが、私は昔のコピーを作ろうとは思っていません。

──どこに注目してほしいか、少し解説していただけますか。
マッコリーニ氏 3つのキーワードで注目してほしいと思っています。「プロポーション」「エレガンス」「トリートメント」です。プロポーションとは車輪とボディのバランスや、全長と全幅と全高のバランスのことです。エレガンスはおわかりですね。トリートメントは、面やラインの作り方や、ディテールの仕上げです。

もうひとつ、スタイリングを作り上げていくとき意識したのは、見る角度によって印象を変えていこうということでした。車体の周囲を回って眺めていただくとわかると思うのですが、官能的な部分、パワフルな部分、ダイナミックな部分と、しっかり主張が伝わることを意識しました。

Alfa Romeo 4C

Alfa Romeo 4C

──インテリアも個性がありますね。
マッコリーニ氏 インテリアでは、3つの要素を強調しています。ダッシュボード、フロア、シートです。ダッシュボードはスポーティに、かつハイテクなイメージを強く盛り込みました。カーボンファイバーを使ったフロアも同様にハイテクです。

いっぽうでレザー張りのシートはクラフツマンシップを感じさせています。これを私たちはスーパーミックステクノロジーと呼んでいます。フェラーリやランボルギーニは少々いきすぎていると思うし、いっぽう市場では競合関係になるであろうロータス「エリーゼ」はカーボンファイバーは使っていないし、室内はかなりタイトですね。4Cには快適性もあります。

Alfa Romeo|アルファロメオ

根っからのアルフィスタ

アルファ4Cデザイナー、マッコリーニ氏インタビュー (3)

過去の名車から感じる、アルファの“心”

──最近は多くの自動車メーカーが、Google+などを使い、過去のモデルをさかんに登場させ、ヘリティッジを強調しています。クラシックカーのラリーやコンクールデレガンスにも熱心ですね。デザイナーの立場として、4Cでは同様のことを意識しましたか?

マッコリーニ氏 過去のイメージを意識的に盛り込むということですか? たしかにその重要性は認めます。たとえば、4Cではグリルの作り込みに腐心しました。たとえば、スクデット(アルファロメオの楯型グリルのこと)の先端がバンパーを突き破るスタイル。これは「GTV」や「166」といったモデルのモチーフを継承したものです。エネルギーを強く感じさせると同時に、ユニークなアルファロメオならではのスタイルの表現になりますから。

──過去のモデルはつねに研究対象ですか。

マッコリーニ氏 デザイナー志望の学生たちを前にして、アルファロメオのスタイルを語るときがあります。その場合、多くの歴史的モデルの画像を見せるようにしています。スタイルを流用するのが大事といいたいのではありません。アルファロメオがなぜ私たちを魅了してきたのか。それを考える機会になればと思ってのことです。いってみれば、アルファロメオの“心”を感じることが、未来の名作を生み出す下地になると信じています。

Alfa Romeo 4C

──4Cはそんな“心”を感じさせますね。

マッコリーニ氏 でもここだけの話、デザインは大変だったのですよ。2010年9月にスケッチを描いて、それがいいねということになったら、翌11年3月のジュネーブショーにプロトタイプを出したのですから。すごく早いペースです。そして13年には量産車の発表、です。さらに今年14年にスパイダーバージョンのプロトタイプを製作。15年には発売予定です。ノンストップ プロジェクトでした。

──いきおいを感じさせますね。

マッコリーニ氏 あまりに作業が多くて、もういちどおなじことができるか、自信はありませんが。気に入ってもらえたら、とても幸福です。

フィアット クライスラー グループ アルファ ロメオ エクステリアチーフデザイナー
Alessandro Maccolini|アレッサンドロ・マッコリーニ
1997年にアルファ ロメオ チェントロスティーレ(デザインセンター)で「147」のエクステリアを手掛ける。その後、「156スポーツワゴン」「8Cコンペティツィオーネ コンセプト」「159」「ミト」「ジュリエッタ」と、数おおくのアルファロメオのエクステリアデザイナーやチーフデザイナーをつとめる。「4C」では、2011年に発表された「4Cコンセプト」から市販モデルの「4C」、今年3月のジュネーブモーターショーで発表された「4Cスパイダー」までエクステリアデザイナー、エクステリアチーフデザイナーとして携わる。

           
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