会長命令で作られたエコカー

フォルクスワーゲンが長年開発をつづけてきた通称「3リッターカー」。何世代ものコンセプトカーを経て、ジュネーブでついに市販型が「XL1」として発表された。

3リッターカーは、フォルクスワーゲン元会長にして、ポルシェ創始者、フェルディナント・ポルシェの孫でもあり、現在もポルシェの大株主でもあるフェルディナンド・ピエヒ元フォルクスワーゲン グループ会長が「究極のエコカーをつくれ」と命じてはじまったプロジェクトで、100km走行に必要な燃料を3リッター以内に抑えるというのが名前の由来。

エアロダイナミクスと軽量化という運動性能向上の王道を突き進むかたちで開発が進められ、数年前のコンセプトカーでは前面投影面積を減らすためにドライバーを含む2名分のシートがタンデムに配置されたりもしたが、今回登場した市販バージョンでは、通常の2シーター同様、シートは左右に並べられている（それでもスペース確保のために助手席が少し後ろにずらされている）。

パワートレーンは、直列2気筒のディーゼルエンジン（最高出力48ps）、電気モーター（同20kW）、7段デュアルクラッチトランスミッション、リチウムイオン バッテリー（容量5.5kWh）を搭載するプラグインハイブリッドで、Cd値わずか0.189のエアロダイナミクスボディの効果もあって、燃費は111.1km/ℓと、3リッターカーどころか、0.9リッターカーを実現。ボディはカーボンモノコック製で、車重は795kg。日本の軽自動車と比較しても軽い部類に入る。

EVモードで最大50km走行することが可能。最高速は160km/h（リミッター作動）、0-100km/h加速は12.7秒、100km/h巡航に必要な出力はわずか8.4psだという。全長3,888mm、全幅1,665mm、全高1,153mmと、コンパクトかつ細長い。「ポロよりも短く、ボクスターよりも（重心が）低い」との説明の通り、エコと同時にドライビングファンも追求している。

日本導入は未定。カーボンモノコックと聞くと、買いやすい価格にはなりそうもないが、市販されれば、48ps＋αしかないスポーツカーとして、注目を集めるはずだ。