あらためて訪れるシトロエンDSの世界|Citroen
Citroen DS line|シトロエン DSライン
あらためて訪れる
シトロエンDSラインの世界
シトロエンの伝統を、これ以上ないほどにシンボライズしたクルマ──シトロエンがそう定義するのが、DSラインと呼ばれる3台だ。個性的なスタイリングと、すぐれた操縦性で評価が高い「DS3」、「DS4」、「DS5」をつづけて試乗し、クルマの楽しさとはなにか、を考えてみた。
Text by OGAWA Fumio
Live Photographs by ARAKAWA Masayuki
Back to Back - DSライン再訪
DS3は2ドアのコンパクトなハッチバックで、DS4は余裕あるサイズの4ドアハッチバック、そしてDS5はさらにロングルーフの4ドアハッチバック。ややニッチ(すきま)よりだが、マーケティング的に3台は棲み分けができている。
さらに今回のニュースは、2012年4月に発売された、美しい内装と特別色の外装を特徴とする「DS3 Sport Chic Ultra Prestige」と呼ばれるモデルと、9月の6段トルコン式オートマチック変速機搭載の「DS4 Chic 6AT」の追加にある。
「常識にとらわれない。過去へのオマージュでもない」とシトロエンが謳うDSラインに属する3台をバック・トゥ・バック(次々に乗ること)で試乗したところ、それぞれが個性を備え、独自の立ち位置を持つことを再認識させられた。
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シトロエンDSラインの世界(2)
まずはウルトラプレステージのDS3 Sport Chicを試す
DS3は、全長4mを切る2ドアボディをもったコンパクトハッチバック。ルーフの存在感と、太いBピラーのデザインを活かし、ルーフとボディの別色塗り分けや、ルーフに模様を入れるなど、遊び感覚を採り入れられるのも特徴としている。
エンジンは1.6リッター4気筒で、ノンターボとターボの2種類。前者は最高出力120ps、後者は156ps。出力がことなることにくわえ、ノンターボエンジンには4段オートマチックが、ターボエンジンには6段マニュアルが組みあわせられる。
今回試乗したのは、「DS3 Sport Chic Ultra Prestige」(299万円)。156psユニットに6段MTの組みあわせを持つ。もうひとつの特徴は、ルーフやミラーやフロントグリルといった外装の一部と、時計のバンドのようなパターンに特別なカラーリングのシートといった内装の一部が特別仕様であること。
乗った印象は、見かけ以上の楽しさがある。
ステアリングのフィールは、メルセデス車をおもわせるしっとりしたもので、中立ふきんから切り込むときに多少の重さ(イナーシャ)を感じさせつつ、ライントレース性は的確で、かつ、ロールは比較的抑えめ。
シフトフィールもよく、2,000rpmから上でエンジンのトルクバンドを使って走るとじつに気持ちよい。
気持ちよいだけでなく、しっとり感もある。DS3はややキワモノ的なスタイリングで、若者向けのクルマだと、たかをくくって乗らないと、もったいないとおもう。ダッシュボードのデザインがもうすこしオトナっぽくなりさえすれば、50すぎても楽しめるクルマだ。
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シトロエンDSラインの世界(3)
DS4は濃密だ
トルコン式の6段ATがあらたに搭載されたDS4 CHIC(310万円から)。
クーペを模したようなウィンドウグラフィックスからは、DS3ほどではないものの、ややキワモノ的な印象も受けるが、じつはたいへんまっとうなクルマである。
1.6リッターターボエンジンの最高出力は162ps。低回転域からトルクがたっぷり出るいっぽう、2,000rpmから上ではエンジンがよくまわり、ぐいぐいと力強い加速を味わえる。デュアルクラッチでなくても、よくできたトルコン式ATは十分という証左だ。
ハンドルは立体的な形状をしたリムに、しっとりと手になじむ上質な感触の革が巻いてある。細身なところも(個人的な好みかもしれないが)たいへん気持ちよい。少し難をいえば断面形状が、手の平にあたるところにややエッジがたっているので、握り方によっては手が疲れるかもしれない。
サスペンションはよく動き、乗り心地はしっとりしている。車内騒音も比較的低いレベルだし、オプションで用意されるレザーシートは「ツートンレザー」(335万円)、さらに今回乗った「クラブレザー」(347万円)と、バリエーションが揃う。これがなかなか魅力的で、おとなっぽいシャレっ気のあるクルマになっている。
アバンギャルドを標榜するDSのラインナップにあっては、もっとも地味に感じるモデルだが、実際の内容は濃い。
おすすめできるモデルだ。
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シトロエンDSラインの世界(4)
DS5はもっともキワモノ?
もっとも「キワモノ」度が高いのが、シリーズ中もっともボディサイズが大きいDS5。DS3の全長が3,965mmであるのにたいして、DS5は4,535mmもある。エンジンは156psの1.6リッターターボで、6段ATが組みあわされる。
DS5の最大の特徴はロングルーフをもつ迫力あるプロポーションと、Aピラーに設けられたクロームのガーニッシュだ。中国市場でのクリニック(消費者を集めて意見を聞いてそれを商品開発の参考にするマーケティングの手法)をおこなったといい、とくにフロントの機能とは無関係のガーニッシュはその結果かもしれないが、それには目をつぶるとして、全体としてはとても高級感がある。
ドアの閉まる音ひとつとっても、DS3やDS4よりひとクラス上のクルマという印象だ。走りだせば2,725mmというシリーズ中もっとも長いホイールベースの恩恵もあるだろうし、1.4トン程度の車重の影響もあるだろう、乗り心地は快適で、しっとり感がある。
外観から想像するより上質感の高いクルマである。室内のコントロール類のクオリティも高く、居心地がいい、という表現がぴったりだ。やや気になるのはヘッドコンソールで、こんなにスイッチを並べる必要があるのだろうか、と疑問におもうほど、デザイン過剰である。さらに張り出しが大きく、ヘッドルームに干渉する。これだけは画竜点睛を欠くという印象が強い。
余裕あるサイズのハッチバックというのは、意外にないもので、完全に実用主義ではないが、独自のニッチ(すきま)市場に向けて開発されたDS5は、意外に便利だとおもうひとも少なくないかもしれない。
Citroen DS3 Sport Chic Ultra Prestige|シトロエン DS3 スポーツシック ウルトラプレステージ
ボディサイズ|全長3,965×全幅1,715×全高1,455 mm
ホイールベース|2,455 mm
トレッド 前/後|1,465 / 1,455 mm
重量|1,190 kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 115kW(156ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240Nm(24.5kgm)/ 1,400-3,500 rpm
トランスミッション|6段マニュアル
駆動方式|FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / トーションビーム
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ|205/55R17
燃費(JC08モード)|14.1 km/ℓ
価格|299万円
Citroen DS4 Chic 6AT|シトロエン DS4 シック 6AT
ボディサイズ|全長4,275×全幅1,810×全高1,535 mm
ホイールベース|2,610 mm
トレッド 前/後|1,530 / 1,525 mm
重量|1,380 kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 120kW(162ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240Nm(24.5kgm)/ 1,400 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / トーションビーム
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ|215/55R17
燃費(JC08モード)|11.3 km/ℓ
価格|310万円
Citroen DS5 Chic|シトロエン DS5 シック
ボディサイズ|全長4,535×全幅1,870×全高1,510 mm
ホイールベース|2,725 mm
トレッド 前/後|1,580 / 1,605 mm
重量|1,550 kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力|115kw(156ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240Nm(24.5kgm)/1,400-3,500 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
駆動方式|前輪駆動
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / トーションビーム
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ|225/50 R17
燃費(JC08モード)|11.3 km/ℓ
価格|400万円(写真のモデルは+45万円のクラブレザーシート付)