MOVIE|いま改めて「食」を問う『モンサントの不自然な食べもの』
MOVIE|農業大国フランスで150万人の意識を変えたドキュメンタリー
いま改めて「食」を問う『モンサントの不自然な食べもの』
ジャーナリストであり、ドキュメンタリー映像作家のマリー=モニク・ロバンがメガホンを取った『モンサントの不自然な食べもの』が、9月1日(土)より渋谷アップリンクほか全国で順次公開される。
Text by IWANAGA Morito
遺伝子組み換え食品をめぐるグローバル企業の実態
わたしたちに身近な食品、豆腐や納豆、ポテトチップスなどのラベルにかならずある 「遺伝子組み換えでない」という表記。では、遺伝子を組み換えた作物=「不自然な食べもの」とはなにか。そして、それはどこからやってくるのだろうか。
アメリカに本社を構えるアグロバイオ(農業関連生命工学)企業「モンサント社」。世界の遺伝子組み換え食品市場の90%を誇るグローバル企業の、クリーンなイメージに隠された裏の姿をカメラは追う。遺伝子組み換え作物から、過去に発売された枯葉剤、農薬、PCB、牛成長ホルモン。一世紀にわたるモンサント社のヴェールに包まれた歴史を、貴重な証言や機密文書によって検証していく。
自然界の遺伝的多様性や食の安全、環境への影響、農業に携わる人びとの暮らしを意に介さないモンサント社のビジネス。本作は、生物の根幹である「タネ」を支配し、利益ばかりを追求する現在の「食」の経済構造に強い疑問を投げかける。劇中で語られる「世界の食料支配、それはどんな爆弾より脅威である」のひと言。世界の食物市場を独占しようとするモンサントの本当の狙いとは――。
監督のマリー=モニク・ロバンは、これまでにも臓器売買などのテーマを扱った作品で数かずの賞を受賞。本作でも、2008年度のドイツ環境メディア賞とレイチェル・カーソン賞を受賞した。現在は、3.11以降の福島で取材をつづけているほか、アグロエコロジー(有機農業)を中心に継続的な社会をテーマにした、世界のオルタナティブ農家を追った作品を制作している。
経済のグローバル化にゆれる食の安全
農業、食の安全、医療、あらゆる分野で影響があるとされるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、 急速に進む経済のグローバル化。劇中に登場する各国の深刻な状況は、経済のグローバル化が進んだ明日の日本の姿かもしれない。危惧されるのは、不自然な食べもの(遺伝子組み換え作物)が環境、人体に与える影響は、まだ誰にもわからないということ。毎日の食べものは生き方を選ぶことであり、知ることで守れる未来がある。42カ国で公開されGM(遺伝子組み換え)政策に大きな影響を与えた、「食」ひいては「いのち」をめぐる世界の構造を暴く、いま見るべきドキュメンタリー。この機会に、食卓から世界のことを考えてみてはいかがだろうか。
『モンサントの不自然な食べもの』
監督|マリー=モニク・ロバン
原題|Le monde selon Monsanto
2008年/フランス、カナダ、ドイツ/108分
カナダ国立映画制作庁・アルテフランス共同制作
9月1日(土) 渋谷アップリンクほかで全国公開
http://www.uplink.co.jp/monsanto