フォルクスワーゲン パサート オールトラックに試乗|Volkswagen
Volkswagen Passat Alltrack|フォルクスワーゲン パサート オールトラック
ついに国内販売開始
フォルクスワーゲン パサート オールトラックに試乗
第42回東京モーターショーでワールドプレミアを果たした、フォルクスワーゲン「パサート オールトラック」が、2012年6月21日より日本発売を開始した。フルタイム4WDシステムに、「ゴルフGTI」とおなじ211psの2リッターエンジンを組み合わせているのが特徴だ。レザーシート標準装備など、高級感も増して、価格は494万円だ。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko
パサートよりパワフル ヴァリアントよりエコ
「パサート オールトラック」導入の背景について輸入元のフォルクスワーゲン グループ ジャパンでは「先代に設定されていた『パサート ヴァリアント R36』がわが国ではパサート販売の3割を占めていたことから、市場で待たれていたモデル」と話している。
そのため、「高性能エンジンをはじめ、高められた車高やホイールエクステンションといった外観など」特別感を盛り込んだそうだ。
これまでの1.4リッターターボエンジン搭載のパサートシリーズよりパワフル、かつ、従来の大排気量エンジン搭載モデル(R36など)より環境適合性にすぐれる、と謳われる。さっそく試乗すると、適度にパワフルで適度に快適。上質感もある仕上がりだった。
Volkswagen Passat Alltrack|フォルクスワーゲン パサート オールトラック
ついに国内販売開始
フォルクスワーゲン パサート オールトラックに試乗(2)
車高を高め、アンダーガードを装着
「パサート オールトラック」の外観上の特徴は、ベースモデルともいうべきワゴンの「パサート ヴァリアント」より装飾パーツであるガーニッシュ類が増えていて、かつ車高が30mm高められていることがまずあげられる。
セミグロスのクロームパーツは、デザイン上のアクセントになっていて、独自のキャラクターがかたちづくられている。アウディの「オールロードクワトロ」のように、ある種のスポーティさを感じさせるクロスオーバー的な魅力がある。
もちろんバンパーのアンダーガードはたんなる飾りではない。4WD化にともない、オフロードでの走破性も高められている。アプローチアングルが13.5度から16.0度に、デパーチャーアングルが11.9度から13.6度に、ランプブレークオーバーアングルは9.5度から12.8度に。クロスカントリー4WDのような走破性は望めないが、雪が降る地方やスノースポーツに出かけたときは、意外に役立つかもしれない。前後バンパーのアンダーガードは、機能上の裏付けがあるデザインなのだ。
パサート オールトラックに採用された4WDシステムは、「4MOTION(4モーション)」と呼ばれるフォルクスワーゲン独自のもの。通常の走行では、前輪90%、後輪10%の動力配分を基本とするシステムだ。路面状況によっては、最大後輪に100%動力を伝達する。
今回はオンロードのみの試乗だったが、幸か不幸か激しい雨に見舞われた。そこでのパサート オールトラックの挙動はドライバーに安心感を与えてくれた。高速では直進性のよさを見せた。動力配分についてリアルタイムでの情報は伝わらないが、アウディでの経験からすれば、横風の強いときなど最大限の恩恵をもらせてくれるはずだ。
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フォルクスワーゲン パサート オールトラックに試乗(3)
その動きニュートラル
ゴルフGTIと共通の、1,984cc 4気筒DOHC+インタークーラー付きターボエンジンは、211psの最高出力と280Nmの最大トルクを発生する。本国にはこれにくわえてガソリンエンジンで1.8リッター、ディーゼルエンジンでは2リッターターボ(ことなる2つの出力をもつ)が用意されている。
日本向けに、もっともパワフルなバージョンが用意されるのは、500万円になんなんとするパサート オールトラックならではの独自のスタンスを確立する目的もあるはずだ。
実際に走らせると、エンジンはたしかに力強い。ゴルフGTIほど弾けるかんじがないのは1,400kgのGTIより270kg重い車重のせいだろうか。回転が上がるにつれて、徐々にトルクを積み重ねていくかんじだ。本当に活発に走らせたいとおもったら、マニュアルシフトを使って、3,000rpmから上をキープするといい。
やや不満が残るのは、このシフトスケジュールだ。燃費対策だろう。6段デュアルクラッチ変速機のシフトアップのタイミングが速いのだ。先述したように、エンジンの「おいしい」回転に入るというところで、上のギアに移行してしまう。加速による気持ちよさをもう少し味わいたい気分だ。
ハンドルのパワーアシスト量は多めで、操舵感は軽い。「ザ・ビートル」でもおなじように感じたが、これが最新のフォルクスワーゲン車のテイストかもしれない。中立ふきんでは多少あいまいさがあるが、切り込むとしっかりと車体が反応する。サスペンションはダンパーの容量が1.4リッターエンジンのパサートよりも増えているので、しっかり感がある。
コーナリングも、特筆するほどのスポーティな楽しさはないが、アンダーステアが強いということもなく、ナチュラルな傾向だ。「XDS(クロス ディファレンシャル ロック)」といって、フロントのデフに装着され、中高速域でのコーナリング時に4WD特有のアンダーステア傾向を減じる働きを果たすシステムが装備されているが、終始、ハンドリングは軽く、車体の動きはニュートラルだった。姿勢変化も少なく安心感がある。
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フォルクスワーゲン パサート オールトラックに試乗(4)
ライバルから見えるオールトラックの魅力
パサート オールトラック(494万円)の市場におけるライバルを探してみよう。イメージ的に近いところでは、「ボルボ XC70 AWD SE」がおもい浮かぶ。ただしボルボは、3リッターターボで609万円と排気量も大きいし価格もだいぶ上まわる。
姉妹会社の「アウディ A4アバント2.0TFSIクワトロ」は、エンジンスペックがおなじ211psの2リッターターボエンジンを搭載したフルタイム4WD。価格が541万円と高くなってしまう。くわえて、A4アバントはオンロードに徹している。
「BMW X1 xDrive28i」もライバルになりうる。こちらは、245psを発生する2リッターターボエンジンを搭載したフルタイム4WD。495万円だ。おなじエンジンのチューンちがいによる184psの「X1 xDrive20i」(424万円)も設定されている。BMWはスポーティな操縦性能のほうに重きを置いている。そこにちがいがある。かつ、X1のスタイリングは好みが分かれるだろう。
パサート オールトラックの魅力は装備の豊富さだ。ひとつは、先に触れた「4MOTION」と組みあわされた「XDS(クロス ディファレンシャル ロック)」。
オフロード用機能としては、「OFF ROADスイッチ」、別名「ラフロード走行アシスト機能」が設けられている。スイッチひとつで、ABSの作動タイミングの調整、アクセルペダルの特性変更、ギアのシフトスケジュールの最適化、さらに電子制御のディファレンシャルロックによってホイールの空転を防止するなどの働きをする。
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フォルクスワーゲン パサート オールトラックに試乗(5)
パサートならではのすぐれたパッケージング
安全装備の面でもパサート オールトラックは充実している。「ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)」は、フロント部分に内蔵したレーダーを用い、先行車両を識別して自動的に加減速するシステムだ。
プリクラッシュブレーキシステムは上記ACCのとおなじレーダーを用いて、時速30km以下であれば前方の障害物への衝突を、自動ブレーキで回避するもの。これにくわえて、長時間運転しているときなど、ドライバーの疲労度をハンドル操作から推しはかり、警告灯によって休息をうながす「ドライバー疲労検知システム」も採用されている。
インテリアは、専用のナパレザーによるスポーツシートがおごられている。横ウネが昔のイタリアのスポーツカーを連想させる好ましいデザインであり、座り心地も良好。くわえて、合成樹脂ならではの緻密な整合性を活かしたダッシュボードと、それに色を添えるウッドパネルなど、無理のない範囲で上手に上質感を演出したインテリアも、このクルマならではのものだ。
「パサート」というブランドは、燃費がよくパッケージングにすぐれた、つくりのよいドイツ車を、適度な価格(324万円)で提供するのをバリューとしてきた。そこに150万円上乗せして、パサートのバリューをさらに拡大しようというのがパサート オールトラックだ。ほとんどフルオプション装備の状態だから、意外とバーゲンプライスともいえる。
Volkswagen Passat Alltrack|フォルクスワーゲン パサート オールトラック
ボディサイズ|全長4,785×全幅1,820×全高1,560mm
ホイールベース|2,710mm
トレッド幅 前/後|1,555/1,535mm
最低地上高|160mm
車両重量|1,670kg
最小回転半径|5.3m
エンジン|1,984cc直列4気筒DOHCインタークーラー付きターボ
最高出力|155kW(211ps)/5,300-6,200rpm
最大トルク|280Nm(28.6kgm)/1,700-5,200rpm
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク/ディスク
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット(スタビライザー付)/4リンク(スタビライザー付)
タイヤサイズ|225/45 R18
燃費|11.6km/ℓ(JC08モード)
CO2排出量|200g/km(JC08モード走行燃費値換算)
価格|494万円