Porsche 911 Story─3代目964型
Porsche 911|ポルシェ911
Porsche 911 Story──3代目964型
第3の変革
ポルシェ 911の歴史を振り返る『Porsche 911 Story』。第3回目の今回は、1989年に発表された3代目にあたる911。ファンのあいだでは、ポルシェ社内のコードネームをそのまま使い「964」と呼ばれる。911はつねに911なので、こうして識別する必要があるのだ。
Text by OGAWA Fumio
あざやかな印象をのこす911
1963年の登場から現在にいたるまで、911には3つの大きな変革があった。ひとつはターボの登場、もうひとつはエンジンの水冷化、そしてもうひとつが4輪駆動版の追加だ。3番目の変革は、964で起こった。
フェンダーのふくらみが強調されたスタイリングイメージは、先代の930から継承しているものの、964はバンパーがボディ同色となり、それだけでも大きく変わった印象が強い。 ボディカラーも、当時の流行を反映して、あざやかなものが多かったことも、このクルマの印象を鮮烈なものにしている。
空冷6気筒のエンジンは、3.6リッター。先代930の3リッターからいきなり排気量が大きくなって話題を呼んだ。最高出力も930の180psから250psへと大幅に上がった。
ボディ寸法は930より少しコンパクトになったものの、安全基準の大幅な見直しで車体をモノコック構造とするなどしたため、重量は150kg以上増加。さらに厳しくなるであろう安全基準を満たすには車体の大型化は避けられないとみたポルシェでは、このモデルでいわば先手を打って、排気量をいっきに拡大したのだった。
4輪駆動の登場
サスペンションの大幅な見直しも、発表時に大きな話題になった。これまでのトーションバースプリングという独自のシステムを廃し、一般的なコイルスプリングを採用したからだ。
これによってサスペンション設計の自由度は高まり、多様化する市場の要求に応え、さまざまなバリエーションを展開することが容易になった。そのうちのひとつが、カレラ4と名付けられたフルタイム4輪駆動版だ。1989年のデビューは、まずこのモデルだったことが、ポルシェの大胆な変革をいやでも感じさせ、衝撃的だった。
豊富なモデルバリエーション
カレラ4に対して、カレラ2と名付けられた後輪駆動モデルは1年遅れて1990年に発表された。フルタイム4WDシステムは、悪天候下や高速での走行安定性に寄与したものの、そこまでの性能を必要とせず、むしろ少しでも車体の軽い、従来からのポルシェ911のキャラクターを志向するファンに歓迎されたモデルだった。
さらにモデルバリエーションが増えたのも964の特徴だ。1991年にはターボが登場、やがて1993年に排気量を3.3リッターから3.6リッターへと拡大して、360psを発生したターボ3.6が追加された。さらに、RSとよばれる装備を簡略化して軽量化をはかると同時に、最高出力を260psに高めた高性能版は、いまでも人気が高い。
いっぽう、カブリオレ、タルガ、さらに、低いウィンドシールドにフルオープンのボディという独特なデザインが人気をよんだスピードスターなど、ユーザーは自分の好みに合わせて、911を選ぶことができた。これもポルシェが変わらず人気を保っている、大きな理由になっている。